異世界から帰還した美少女勇者パーティが現代日本のダンジョンで無双&配信でも無双する話
『おめでとうございます!あなたのスキル、帰還者の条件を達成しました!今から、あなたを元の世界へ帰還させます!』
遂に終わったか⋯⋯。
私、西條凛音は、五年前のある日、突如として異世界の勇者として召喚された。数々の出会いと別れを繰り返し、私は今日、魔王をこの手で討ち滅ぼした。
それと同時に、脳内にファンファーレが鳴り響き、私の体は青く発光し始める。
「アリサ、サーシャ、セリナ。本当に、私の故郷に着いてくるの?多分、もうこっちには帰って来られないよ」
「今さらリンネの居ない世界なんか、生きてたって仕方ないでしょ」
「そうですよ!私たちは、死ぬまで一緒に戦うと誓った仲じゃないですか!」
「そうそう!リンネには、ちゃーんと私たちのこと、責任取ってもらわないといけないしね!」
「みんな⋯⋯」
私と手を繋いでいたアリサ、サーシャ、セリナの勇者パーティ仲間たちも、私と同様に青い光で包まれていく。五年間共に死線を潜り抜けてきた仲間であり友であり⋯⋯恋人であり⋯⋯。とにかく、彼女たちと離れ離れになるのは私も辛かったので、こうして着いてきてくれて、嬉しい限りだ。
私は勝利の吉報を書いた手紙を連絡用の使い魔に預け、帰還者のスキルを発動させた。
◆
西暦2000年。スキルという超能力を持つ人間が現れた。それと同時に、世界各地にダンジョンというモンスターが蔓延る巨大な塔が発生した。
スキルは、18歳になったタイミングで発現する。私のスキル、帰還者も類に漏れずだ。
私のスキル、帰還者は、スキル習得と同時に能力が強制発動する。能力は、勇者召喚を行っている世界のどこかで勇者として召喚され、その目的が果たされれば、能力発動タイミングの元の世界に戻って来れる、という能力だ。控えめに行ってクソ能力すぎる。
とまぁ、このスキルにより、私は18歳になったタイミングで異世界に勇者として召喚され、そして帰ってきたという訳だ。
「おー!これがリンネの世界!本当に異世界だ!!」
「な、何もかも、私たちの世界とは違うみたい⋯⋯!」
「ほらリンネ!早速街を案内しなさいよ!」
「は、はい」
勇者パーティとして共に旅をしたアリサ、サーシャ、セリナが私の部屋でぎゃいぎゃい騒いでいる。今は西暦2024年の5月5日。私が18歳になった日の朝9時頃だ。5年ぶりの日本製ふかふかベッドでの睡眠をもっと楽しみたかったが、異世界に興味津々なお姫様たちが居ては仕方ない。
私は、クローゼットにあった服から適当に何着か見繕い、彼女達の身なりを日本現代風にチェンジする。
「ん⋯⋯リンネの服、キツいわね⋯⋯」
「流石、5年間一切成長しないお胸を持つリンネの服だね!」
「そ、それは勇者の加護で不老だったんだから仕方ないでしょ!」
「そもそもアリサさんは、私たちの中でダントツの巨乳じゃないですか」
「仕方ないわね。とりあえずこっちの世界で私達用の服も買いましょ」
「すみません⋯⋯まだお金無いです⋯⋯」
スキル、帰還者は転移先の異世界で得た力を引き継いで、元の世界に戻ってくるスキルだ。私の場合、向こうの世界のルールがRPG的なレベル制だったため、レベルやら魔法やら必殺技なんかを引き継いでいる。当然、所有物も引き継いでいて、向こうの世界では億万長者といえるほどの金も持っているのだが、それはあくまで異世界の通貨だ。日本では使えないし、日本円に変換することも出来ない。ただの金の塊である。
金の売買は結構面倒な事が多いし、突然別の世界からもたらされる大量の金貨となると、それ相応の対応が求められて非常に時間がかかる。
つまり、異世界では億万長者だった私も、一般高校生のお小遣い程度しか、お金を持っていないのだ。悲しいことに。
両親の仕事柄、一人で住んでいるアパートを四人で出る。18歳になった者かつスキルが発現した者は、役所に行ってスキル所有手続きを行う義務がある。ついでに、探索者登録も済ませるとしよう。
◆
「はい。手続き完了です。戦闘系スキル:身体強化でスキル登録いたしますね」
「ありがとうございます。探索者手続きもお願いします」
「た、探索者ですか⋯⋯?」
スキルや探索者系統の手続きをする役所は、普通の役所と異なり日曜日も空いていて助かる。
私は、スキルの登録手続きを恙無く終えた。ステータス偽装の魔法を使い、私のスキルを帰還者ではなく、身体強化として登録を行った。帰還者は、世界に一人しか所持者がいない、レアリティSのスキル——ユニークスキル——であり、その能力がバレると間違いなく面倒になるはずだ。だから、レアリティDで順当に強い身体強化で登録しておく方が手っ取り早い。
ついでに探索者手続きもしてしまおう。私たちの能力柄、探索者として稼ぐのが一番手っ取り早いだろうから。
探索者は、世界各地に聳え立つ塔——ダンジョン——を攻略する者を指す。
弁護士や会計士のように探索士でない——国家資格を必要としない——理由は、探索者の管理を国ではなく国連が行っているからだ。世界|探索者《Investigator》|機関《Organization》、通称WIOが管理する探索者は、世界中のスキル所有者が就く事が出来る。探索者はダンジョン内でモンスターを討伐する許可が与えられ、その中での武器・防具の携帯を許可されている。もちろん、窃盗や殺人など、ダンジョン外でも明らかな行為は罪に問われるが、銃刀法違反などの一部法律は、ダンジョン内では効力を発揮しない。
ダンジョンにはモンスターも出るし、ダンジョン外よりも暴力に溢れ、命の危険が身近すぎる。故に、あまり女性の探索者は居ない。だから、目の前の女性も驚いているのだろう。
それでも、女性はしっかり手続きをしてくれた。役所でスキル登録の手続きが必要なため、大抵の役所がWIOへの探索者登録手続き業務を請け負っており、おかげでスムーズに手続きが完了した。素晴らしい限りだ。オンラインで手続き出来たら完璧なんだけど、スキル鑑定はオフラインでしか出来ないので仕方ない。
「こちら、探索者証になります。説明は必要ですか?」
「大丈夫です」
「かしこまりました。それでは、手続き以上となります。お疲れ様でした」
最低ランクである9級の探索者証を受け取った私は、それを財布に閉まった。世界共通のランク制度として、選ばれたのはシンプルなアラビア数字だった。ランクは9から1まであり、数字が小さくなるほどランクが高くなる。
顔付き身分証として探索者証を使う層が一定数いるので、9級の探索者は結構多い。実際に探索者として働いている人で最も母数が多いのは7級だ。7級までは自動小銃で余裕を持って倒せるくらいのモンスターを倒すだけで行けるからだ。6級くらいから緩やかに人が減っていき、3級以降は、職業探索者の0.1%にも満たない。1級ともなれば、各国に数人いる程度である。
その後、異世界娘3人の分の探索者登録を手伝う。帰還者の能力で、召喚先から一緒に着いてきた3人は、どういう訳か日本国籍を持っていた。それぞれ西條有紗、西條紗々、西條芹那だ。全員、西條家の養子ということになっている。めちゃくちゃご都合主義な能力だが、まぁ良しとしよう。
ついでに、スキル登録も済んでいる事になっていた。アリサは私と同じ身体強化。サーシャはレアリティCの加護。セリナはレアリティDの加速だ。なお、スキルのレアリティは希少性を示すもので、能力の強さを示すものではない。気持ち、サーシャのスキルがちょっとレアなだけで、全員戦闘を行うには申し分ないスキルだ。実際にはもっと強いけど。
そのため探索者登録はパパっと終わることができた。これで全員、晴れて9級探索者である。
◆
私たちは、役所の最寄り駅に併設されたショッピングモールに入った。なお、家を出てから今の今まで、沢山の視線を浴びている。それはアリサ、サーシャ、セリナの異世界三人娘のビジュアルが良すぎることが原因だろう。現実離れした見目の良さに加え、地球のどの国籍にも無い、形容しがたい世界的なビジュアルを備えた彼女たちの姿は、見る者の目を奪ってしまうのだ。
ショッピングモールで、簡単に日本円の感覚を彼女たちに叩き込む。日用品の値段、化粧品の値段、服の値段など。そのどれもが異世界基準では破格の値段であることに、彼女たちは驚く。
たとえば、異世界ではしっかりした作りの服は3ヶ月分の食費くらいは平気でする。日本円にすると10万円くらいか。だが、日本では数千円で買える。そういった感じで驚いているのだ。
「本当に別の世界なんですね⋯⋯こんなドレスみたいな服が、眠る羊亭の日替わり定食10回分で買えるなんて⋯⋯」
「今はお金無いから、この服買うのもやっとだけどね⋯⋯」
次に武器屋や防具屋を見に行く。ダンジョン発生以降、ダンジョンの調査と内部のモンスター狩りを行う『探索者』用として、日本にも武器屋やら防具屋なんかが出来たのだ。私は産まれた時からダンジョンが当たり前にあったので、そこまで物珍しい感じはしないけど、大人の人は未だに物珍しそうに武器屋を見る人もいる。
「この鉄の棒?みたいなのはなんですか?」
「それは銃だね。結構強いし、一番ポピュラーな武器じゃないかな」
武器屋には、剣や銃などの武器が飾られている。だいたいどこの武器屋でも、一番売れているのは自動小銃だ。取り扱いやすいし、火力も高い。銃弾が消耗品なのと、相性の良いスキル持ちが少ないので、強いモンスター相手には効きづらいのが玉に瑕である。
武器は工場で大量生産出来るものはそこそこ安い。もちろん服よりは高いが、一つ一つ鍛冶師によって手造りされていた異世界産よりは安い。
たとえば日本の武器メーカー大手のロングソードは1本5万円で買うことが出来る。2万円くらいのモデルもあるにはあるが、安すぎると怖いのでみんな5万円くらいのやつを買う。
自動小銃は販売できるモデルが限られているのもあるが、だいたい15万円〜30万円くらいだ。ただ銃弾が30発マガジンで5000円くらいはするので、バカみたいに撃っていると大赤字になる。厳しい世の中だ。
ちなみに勇者パーティのロールでいうと、私は勇者なのに魔法使いだ。アリサは、大盾とロングソードを使った近接アタッカー兼タンク。サーシャは補助魔法特化の魔法使いで、バッファー兼デバッファー兼ヒーラーである。セリナは二本のダガーナイフを持つ斥候役であり、守るより避ける方が適している相手の時は、アリサと交代して回避タンクを受け持つこともあった。
必然的に、アリサは盾とロングソード、鎧など。セリナはダガーナイフや軽そうな装備などを見ている。魔法の無いこの世界では、魔法使いの武器である杖や魔導書なんかは売っていない。せいぜいローブっぽいものが売ってるくらいだが、防具というより防寒具程度の力しか持たない。そのため、サーシャは武器屋防具屋では暇をしてしまうのが約束されていた。
ま、何を買うにもまずはお金が必要だ。一旦家に帰り身支度を済ませ、早速ダンジョン探索へと洒落こもう。
◆
「はぇー、ここがダンジョンかぁ」
「迷宮と似ていますけど⋯⋯なんかこう、根本的な何かが違う感じがします」
「ふーん。私も初めて来たからよく分からないけど、そうなんだ」
「みんな、日本での勇者パーティ初陣よ。気を引き締めなさい」
異世界でのお馴染み装備を身に着けた私たちは、早速家の最寄りダンジョンに入った。
このダンジョンの1階層には、ビッグワームという大きな芋虫みたいなモンスターが出てくる。こいつらはキモいだけで、動きは遅いし殺傷能力は低いし、外皮は柔らかいし特殊能力も持たない。ほぼ、大きいだけの芋虫だ。異世界転移前ならキモさに震えたかもしれないが、異世界は根源的に不快感を抱く魔物という怪物が跳梁跋扈していた世界である。魔物と比べたら、モンスターは可愛いものだ。逆に罪悪感を抱くまである。
「じゃあ試しにやってみよう。まずは全力で叩き潰してみようか」
「分かりました!それでは⋯⋯『全能力超向上』『全能力超低下』!」
「はぁぁぁ!!」
「そりゃっ!!」
「『雷龍爆撃』!」
サーシャの最大バフをかけてもらい、ビッグワームに最大デバフをかけ、私たちは各々の最強技を繰り出す。近接職と異なり、魔法は詠唱を必要とするのが小っ恥ずかしい。
アリサとセリナによって、ビッグワームは木っ端微塵になるほどのダメージを負った。その上で、私の最上級魔法を受けた。ビッグワームは、当たり前のように消し炭すら残らず消えていった。
分かっていたことだが、あまりにも過剰戦力。なんならダンジョンごと崩れるんじゃないかと思わんばかりの衝撃であった。危ない危ない。
どれだけ手加減してもこの辺のモンスターは相手にならない。サクサク倒して行こう。
そうして1階層、2階層、3階層⋯⋯と上がって行ったところで、サーシャが声を上げる。
「わ、なんですかあれ?使い魔さん?」
「あー、あれは配信用のAIドローンカメラだね。⋯⋯!あれは使えるよ!」
「どうしたの急に」
「あれは高いけど、あれ導入すれば⋯⋯い、いける⋯⋯!」
なんて事だ。この手があったじゃないか。
ダンジョン配信。それは老若男女に愛される素敵なコンテンツだ。
書いて字のごとく、探索者がダンジョンでの様子をAIドローンカメラに撮らせ、それを専用のプラットフォームで配信して、投げ銭と呼ばれる機能で稼ぐ、といったビジネスモデルである。
中々のレッドオーシャンで、一般男性であれば配信の収益がマトモな額に行くのは至難の業だ。しかし、目の前にいる絶世の美少女×3!かつ、めちゃくちゃ強いと来た。こんなもん、売れないわけがない!
AIドローンカメラは高性能で、だいたい100万円はする。その為にも、さっさとモンスターを狩りまくるとしよう。
10階層まで登り、オークという豚人間みたいなモンスターが出てきた。適正ランクは6等級。この辺りから、売り物にもなるし多少歯応えが出てきた。
「サーシャは回復に専念して!セリナは周囲の警戒を怠らないで!『雷枷』!」
「良くやったわ!喰らいなさい、豚人間!」
雷の足枷をオークに履かせて、身動きが取れなくなったところを、アリサが一刀両断。相変わらず、惚れ惚れするような剣技だ。
一人でも余裕で倒せる相手だが、魔王戦の翌日であることと、万が一に備えて集団行動は欠かさない。オークの死体を魔法袋——簡単に言うと四次元ポ〇ット——に詰め、オークを次々と狩っていく。だいたい1体で30万円はするオークを、サクサクと5体撃破する。単純計算、150万円くらいだ。私は、これからの稼ぎ方について思案しながらダンジョンを後にした。
◆
「見えてる⋯⋯?おーい」
『3000円:リンネちゃまキタコレ!』
『リンネ最強!リンネ最強!リンネ最強!』
『3000円:今日も黒髪ロングが美しいです』
『——このコメントは削除されました——』
『1000円:我ら、フルール騎士団!悪しきコメントは、悪即斬!』
「見えてるみたいだねー。あ、投げ銭ありがとー!それじゃ今日も始めるよ!フルールチャンネルのリーダー!リンネとー?」
「アリサと」
「サーシャと!」
「セリナだよー!」
「私たち、フルールです!」
『3000円:アリサ様キター!!!今日も氷のような視線、ありがとうございます!!』
『3000円:マイスイートエンジェル、サーシャたんんんん!好き好き大好き!やっぱ好きー!』
『3000円:セリナちゃん今日も元気をありがとう!!救われてます!!』
私たちのチャンネル、フルールはチャンネル開設3日でチャンネル登録者数20万人を突破。今もライブ配信の同時接続数は3万人を記録している。凄い人気だ。
アリサ、サーシャ、セレナの人気に肖ろうと思っていた私だったが、思ったより初回で私も人気があったので、私も生配信にレギュラー登場することになった。どうして⋯⋯。
収益化が簡単な探索者専用の動画配信プラットフォームのおかげで、もう私たちのライブ配信には投げ銭が飛び交っている。
既に投げ銭が200万円を突破した。お金って、ある所にはあるんだなぁ⋯⋯。
収益については、計算も面倒なので丸々4等分することにした。投げ銭は5割は運営元に持っていかれるので、半分の100万円を4等分だ。3日で1人25万円の収益。悪くない。
「今日はダンジョンの13階層にチャレンジします!」
「13階層は、5級探索者向けの階層になるらしいよ」
「そろそろ歯応えのある敵が現れてほしいわね」
「オークとかトロールとか、大きいだけで弱すぎたもんね〜」
『フルール強すぎワロタ』
『探索者証発行してから1週間も経ってないのにこんな強いの何事???』
『アリサ様の斬撃の前では、どんなモンスターも紙屑同然なのだ!』
『でもマジで何者なんだ?この子たち』
このダンジョンは結構分かりやすい作りをしており、ダンジョントラップもそこまで悪質な物は無く、3階層ごとに適正ランクが上がっていく、初踏破には持ってこいなダンジョンだ。
そんなわけで、私たちはサクサク13階層までやってきた。多分この調子だと頂上の30階層まで苦戦すらしないと思うが、ダンジョンがだだっ広いので、良くて1日1階層くらいのペースで進んでいる。低階層は1階層の広さもそこまで大きくなかったが、10階層辺りからかなり大きくなってきた。そのうち、1階層を1日で踏破するのは難しくなる気がする。
13階層に入ると、オーガが居た。要するに大きな鬼である。
そういえばダンジョンのモンスターって、基本的には創作物に出てくるようなモンスターが出てくるんだよな。異世界の魔物は、まさしく得体の知れない怪物って感じだったけど⋯⋯。
まぁ考えていても仕方ない。今日も配信用の戦い方で行こう。
「皆さん、行きますよ!加護!」
「サーシャありがとう!身体強化!」
「行くわよリンネ。合わせなさい!身体強化!」
「撹乱は任せて!加速!」
それっぽい光が私たちを包み、セリナが誰よりも早くオーガに突っ込む。私は槍を、アリサは大盾とロングソードを構え、オーガに駆け出す。
オーガは腰に携えた巨大な石の剣を振り降ろすが、セリナはそれを軽々しく避けると、二本のダガーナイフでオーガの肉体を切り裂く。ダガーナイフのため致命傷には至らないが、オーガは肉体のあちこちから出血していた。怒りの止まらぬオーガは、セリナの方に石剣を投げる。
しかし、それはアリサの大盾が許さない。剣を盾で弾き飛ばしたアリサは、怯むことなくそのままオーガに突進する。アリサのロングソードは、セリナと違い、強く重たい一撃を放つ。脛の辺りを斬られたオーガは、堪らず膝をついた。
「リンネ!今よ!」
「うん!喰らえぇぇぇぇぇ!!」
で、最後は私。手の届く距離まで降りてきたオーガの眼球目掛け、手持ちの槍を突き刺す。この槍は少々特殊な呪われた槍であり、狙った箇所を必ず貫く力を持つ。当然、オーガの眼球を貫いた槍は、そのままオーガの脳も貫いた。
一応死ななかったら困るので、カメラに乗らない声量で魔法を発動。貫いた槍から電撃を放ち、オーガの頭部を内部から完全に破壊する。
耐えきれなかったオーガは、槍を抜くとそのまま崩れ落ちた。
「皆さんお疲れ様でした!」
「サーシャありがとう!今日も最高のバフだったよ!」
「セリナの剣技は相変わらず見惚れる速さね。流石だわ」
「速さは私のアイデンティティだからね!アリサとリンネのパワーいっぱいの一撃もめちゃくちゃカッコイイよ!」
オーガ討伐の喜びを四人で分かち合う。カメラが無ければ、全員一人で何体でも倒せるくらいの力量差があるが、目立ちすぎずお金も稼ぐならこのくらいで良いはずだ。既に初日からオークを5体倒した時点で若干目立っているが⋯⋯。
コメント欄は、5級モンスターのオーガを、四人の少女が瞬く間に倒したことで盛り上がっていた。
『1000円:すげええええええ!!!』
『え?オーガって雑魚なの?』
『アホか。オーガまで行けば、ライフルで武装した軍人が30人は必要になるレベルだぞ。あれくらい余裕持って倒すなら、50人は要るな』
『マジ⋯⋯?フルール最強なのでは⋯⋯?』
『リンネ最強!リンネ最強!リンネ最強!』
『アリサ最強!アリサ最強!アリサ最強!』
『様を付けろよデコ助野郎!!』
ちょっと目立ちすぎてるかも。いや、けどこれくらいならギリ許されるか?分かんないや。
「みんな、私たちの戦い見てくれた?」
『10000円:もちろんです!!』
『5000円:同じパーティで戦いたい⋯⋯』
『今日も圧勝で凄すぎる!!』
『50000円:大ファンです!メンバーの関係を教えてください!!』
『たしかに』
「皆ありがと〜!配信の最後に、投げ銭してくれた皆の名前読み上げるね!で、えーっと私たちの関係⋯⋯かぁ⋯⋯」
我ながら現金だと思うが、50000円の投げ銭はめちゃくちゃ目立つのも相まって、内容を読んでしまった。後で守銭奴とか叩かれないと良いけど⋯⋯。
私も矛盾してるなぁとは思うんだよ?目立ちたくないのに配信でチヤホヤされて稼ぐの。でも仕方ないじゃん。私にも人並みの承認欲求があるんだから。
おっと、話が逸れた。私たちの関係をなんと言おうか迷っていたところで、サッとアリサとサーシャが割って入る。
「そんなの決まってるじゃない」
「家族です!」
おお、なんて素晴らしい回答。まさにそうだ。実際今は、戸籍上は皆で姉妹だし。私は二人の意見に便乗した。
「友達でも仲間でもあるけど、たしかに家族って表現が一番かな!」
「ふーん、あんな事する家族⋯⋯ねぇ」
セリナがニヤリと笑う。こ、こいつ⋯⋯!余計なことを⋯⋯!
『え?』
『は?』
『くわしく』
『5000円:セリナちゃん、もっと詳しい話を!』
『1000円:あんな事って何!!!!???』
ほら!コメント欄が阿鼻叫喚になったじゃん!セリナを睨むと、それを楽しむように悪い笑顔をしていた。悪い子だ⋯⋯!
「はい!じゃあ配信はここまで!!」
『えっ!?』
『さっきの話は!?』
「はいセリナ!!読み上げ頼んだよ!!」
「え〜?もう照れちゃって。ふふ、じゃあ皆〜あっちで読み上げしてくるね〜」
そう言うと、セリナはAIドローンカメラを引き連れて隅っこの方へ消えていった。
その日の夜、ファンアートタグには悍ましい量のベッドシーンを彷彿とさせるイラストがタイムラインを占拠した。ナマモノでこんな堂々とエッチな二次創作するな!!!!
この後私たちは、世界最強の美少女探索者アイドルグループとして、世界を股にかけるのだが⋯⋯それはまだ先のお話。




