表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

蔵旅歯車 五話

 危なかった……なんだか、知らないが、逃げ切れてよかった。

「あれ? こんな所に猿がいるべ」

 原生生物に見つかった。また、森に逃げるか? いや、あいつの元に戻るはめになる。どうする? どうする……?

ギュゥゥゥゥゥ

 こんな時に腹が減った! 仕方ない不時着してから何も食べてないのだ。

「お前さん、腹が減ってるのか? 良かったらこれ上げる」

 なんだ、それは? 

 薄橙色のコイン?

 甘い匂いがする。試しに食べてみるか?

 いや、毒だったらどうする?

……例え毒だったとしても、すぐに吐けば大丈夫だろうか?

 うわ! 何をする?!

「捕まえた! 蔵から逃げた奴だろ? 」

ギャァァァァ!

「ほら、お食べ」

ムグッ。

 もぐもぐもぐ……これは、なかなか美味な味だ。気に入った。

「お前さん、可愛い奴だな。さて、計壱の後を追おう」

 おい、我にもう、一つそれをくれ。もぐもくもぐ、上手い。実にうまいぞ!

 テナガザルを追いかけて、森の中へと入って行った僕だが、見失いかけていた。

 手が長いと言っても、他は、普通の猿より小さく小柄な為、茂みに入られると見つけられない。

 暗闇の中、目を凝らして、辺りを見渡すが、何処にいるのか、見当もつかない。その時、背後の茂みがカサカサと音を立てる。振り返ってみると、テナガザルが出てきた所だった。

 走れば、すぐに追いつける距離に僕は、心の中で指を鳴らす。

 しめた! すぐに捕まえられる!

 向こうは、まだ、こちらに気づいていない。

 僕は、急いで捕まえ様と駆け出した。

 早く捕まえて元の時代に帰りたい。その思いで、先走ってしまった。

 そのせいで、テナガザルに気づかれてしまい、奴は、こっちを見るや白い背中を見せて逃げ出してしまった。

 テナガザルは、足は速いが、追いつけない訳じゃない。それに逃げ方がとても、単調で急に曲がって、茂みに潜ったり、木の上に登ろうとしなかった。

 これなら、すぐに追いつける。

 そう確信した。その時、突然、横の茂みから何かが飛び出してくる。それと同時に風を切る様な音が近づいてくる事に気づく。

 僕は、咄嗟に、大袈裟に避けた。

 見ると、そこには、道着を着たままの計太郎が竹刀を振り下ろしてこちらを睨みつけていた。

 不意打ちって……

 計太郎がした事に冷や汗をかく。

 僕は、ハッとなって、テナガザルが逃げた方を見た。しかし、もう、そこにはあいつの姿はなかった。

 突然の不意打ちに、テナガザルを捕まえる邪魔をされて、怒りが込み上げてくる。

 拳を強く握りしめながら、計太郎を睨み返した。

「なんの様だ?」

 僕が聞くと、計太郎は、竹刀を肩に乗せて答える。

「なんの様だ? 俺は、言ったよな。茜に近づくなって、宇宙人」

 あぁ、そうか、迂闊だった。地元の祭りだもんな。そりゃ、僕らを見かけるよな……

 悔いても、仕方ないが情けない。でも、なんで、竹刀なんか持ち歩いているんだ?

 僕は、自分の注意不足に悔いたが、ふと、彼の服装や手に持っている竹刀が気になった。

 道着が着慣れすぎて、着替えてない。なんて理由は、なくもないが、もしかして。

 予想を確かめるため、聞いてみた。

「僕たちを追ってたのか?」

「そうだ、お前が走って逃げたあと、必死に探したさ。そんで、ここにも見に来てみたら、お前ら仲良く射的をやり上がって! 目障りなんだよ、お前!」

 計太郎は、ものすごい剣幕で、今にでも、襲いかかってきそうだった。だけど、すぐに襲いかかって来るわけでもなく、くるりと身を返して歩き出す。

 見逃してくれるのか? なんて、事はなく。

 少し歩いた所で、何かを拾いかげるとすかさず、僕の方へと投げてきた。

 危うく顔に当たる所だった。

 寸前の所で受け止めたそれは、馴染みのある武器だった。

「竹刀……?」

「あぁ、そうだ。さっきは、不意打ちを決めて、一撃で終わらせようと思ったんだが、こうなっちまったら仕方ない。逃げ回る奴を襲うのは、男の恥なからな」

 彼はそう言うと、肩に乗せていた竹刀を下ろし、ゆっくりと剣先をこちらに向けて構えを取った。

 その立ち姿は、僕と同い年ぐらいなはずなのに、五つ、いや、十くらいか、大人びているどころか、玄人の構えのように見えた。

 構えを見た瞬間、全身に鳥肌が立つ。僕は、彼につられて、構えを取ろうとした。だけど、右手がうまく握れず、剣先が相手のヘソまでしか、上がらなかった。

 思わず舌打ちをする。

 計太郎は、表情一つ変えずにずりずりと地面を擦る音を鳴らしながら近づいてくる。

 間合いに入ってくる。そう思った時には、彼は、天を指す様に振り上げていた。

 まずい!

 竹刀を頭の上に構えて、打たれないように防ぐ。次の瞬間、バチン! と竹刀がぶつかる音が森の中に響き渡る。

 同時に、右手首に振動が伝わり、忘れていた痛みを思い出してしまった。

「ッツ!」

 狼狽える僕に、目もくれず、計太郎は、下がって斬新を取るわけもなく。奇声をあげて、繰り返し打ってくる。

 竹刀をまた、彼が振り上げた時、振り払う様に彼の胴を打とうとする。だが、当たるわけもなく。かわされてしまった。

 このままじゃダメだ! そう、分かっていても、何をすればいいのか僕には分からなかった。

 片手は使えないし、防戦一方、どうすれば……

 距離を取りつつ、やられない様に構える。絶対に目を離さない様にした。

 ふと、夜目が効き始めてきたのか、月明かりがさしたのか、目の前がよく見える気がした。

 計太郎は、僕より断然強そうな構えをしている。だけど、先程の攻めで、呼吸が乱れているのか、肩で息をしている。

 疲れているのだ。

 彼の様子を見て、僕の心は静かに沈み込む様に、そこから落ち着き始めた。

 ふと、小さい頃の記憶が蘇る。

 

 僕がまだ、防具を着けて間もない頃、ここに来た時、お祖父ちゃんに庭先で稽古を付けてもらった事がある。

 初めはずっと構えやら、すり足やら、そう言う事ばかりしか、教えてくれなかった。

 正直に言うと、他のどんな時よりも、退屈に感じていた。でも、ひと段落して、縁側で休憩した時にお祖父ちゃんは、試合の事を話してくれた。

「計壱も、もう少ししたら試合に出るのか?」

 僕は首を傾げるだけだった。

 そんな僕を見て、お祖父ちゃんは笑って話し始める。

「試合は、楽しいぞ。自分の実力を発揮できるんだ。お祖父ちゃんも、基礎はあまり好きじ無い。だが、試合で動けるのは基礎のおかげだと、感謝しているんだ。計壱も、ちゃんと素振りやら、すり足をやるんだぞ」

 僕は大きく頷く。

「はっはは、それとな、相手をよく見るんだ。焦って攻めれば、疲れちまう。いいか、よーく、相手を見て、ここだ、と思う所で攻めるんだぞ。焦っちゃうと、逆に相手に動きを読まれるんだ。お祖父ちゃんは、昔、それで負かされたんだ」

「そうなの?」

 僕は、思わず聞き返してしまった。

「そうだぞ、お祖父ちゃんだって、負ける時は、負けちゃうんだ。でもな、それも悪いことじゃない。次に生かせるんだ」

 お祖父ちゃんは、僕を宥める様に頭を撫でる。そして、柿の木の方を見ながら教えてくれた。

「わしは、小さい頃に同い年の子に負けたんじゃ、あいつは………」

 

 お祖父ちゃん、未来の計太郎が、教えてくれた。

 計太郎と相対する僕は、どうすれば良いのか、今、分かった。

 きっと、計太郎は、僕より強い。

 いや、強い。

 右手に力が入らないから、竹刀がうまく扱えないと思う。

 計太郎は、僕を倒そうと必死だ。そのせいで強そうな構えが崩れかかっている。

 僕は、竹刀を軽く握り直した。右足を浮かす様に前に出し、左足はいつでも蹴れる様に地面に引っ掛けた。

 腰は沈み、自然と構えに力が入る。

「どうした、俺とやり合うのか?」

 ぜーはーと息をあげながら計太郎が聞く。

 僕は、頷いた。

「うん、そうだよ」

 お互いにゆっくりと間合いをつめる。

 小さく前に出る度に、心臓の音が大きく聞こえてくる。

 額から汗が滲み出てくる。

 そして、お互いにあと一歩、剣先が交わる瞬間、先に動いたのは、僕だった。

 大きく振りかぶった僕の動きに、計太郎は、素早く反応する。

 竹刀の軌道を予測して先に防ごうと動いた。

 その瞬間、僕は踵を返して、すかさず、反対側に竹刀を回した。

 計太郎は、一瞬何が起こったのか、分からなかった。気づいた時には、頭に強い衝撃が走っていた。

「メーーン!」

 いつもの調子で振ってしまい、僕は気づいたら奇声を発していた。

 痛がる計太郎に目もくれず、僕は、我に帰り、恥ずかしさで顔を赤くする。

 すぐに気を取り直して、また、構え直した。もしかしたら、まだ、やり合うかもしれない、思ったのだ。

 そうなる事はなかった。

 僕が打ち込んだ一撃がそうとう効いたのかもしれない。

 計太郎は、頭を抱えて、嗚咽を吐きながら、悶え苦しんでいた。

 流石にやり過ぎたと罪悪感に駆られてしまう。

 構えを解いて、大丈夫か聞こうと近づいた時に彼の声が聞こえてきた。

「なんでだよ……なんで、茜が、こんな奴と一緒にいるんだ……クソ、クソ、クソ、クソが! 楽しそうに祭りに来やがって……」

 目の前に立つと計太郎は、今にでも、噛み付く獣のように、顔をあげて僕を睨みつけた。

「お前が茜と一緒にいた時、俺は、必死で稽古してたんだ! 戻って一緒に祭りに行こって、茜は言ってくれたのに……お前が来たせいで!」

 計太郎は、握りしめた土を投げつける。

「お前が来たせいで! 俺みたいな顔しやがって、そのせいで村の奴らは、お前の事を俺だと勘違いしたんだぞ! 俺の知らない所で楽しくしやがって……クソ!」

 倒れ込む、昔のお祖父ちゃんの姿を見て、僕は、申し訳なさでいっぱいになっていた。

 僕がこの時代に来て、茜と出会ってしまったせいで、もしかしたら、お祖父ちゃんの大事な時間を奪ってしまったのかもしれない。

 こう言う時、お爺ちゃんなら、なんて声を掛けるだろうか?

 想像してみたが、何も浮かばなかった。

 僕は、手を差し伸べて一言、聞いた。

「立てるか?」

 計太郎は、眉間に皺を寄せて、涙と怒りで目は、充血していた。

 今にも、襲いかかってきそうだった。

 彼は、袖で涙を拭き取ると、僕の手を取ってくれた。

 僕は、強く握り、引っ張る。

 立ち上がった計太郎は、俯いて目を合わせずに聞く。

「なんで、手を差し伸ばすんだよ……また、お前を打てるんだぞ」

 確かに、その通りだ。僕らの足元には、竹刀が転がっている。

 それを手にして、僕に反撃出来たかもしれない。だけど、そうはならないと思った。だって、

「お祖父ちゃんは、ちゃんと負けを認めてくれる、潔い人だったから……」

 小声で言った。けっして、計太郎には、聞こえなかったのだろう。

 彼は首を傾げた。もしかしたら、聞こえていて、言ってる意味が分かんなかったのかも知れない。

 お爺ちゃんの潔さは、決して適当で…弱い人間の諦める意味じゃない。

 ちゃんと、自分の弱さを見つめて、相手の強さを認められる潔良さなのだ。

 僕はそう、信じている。

「お前、強かったな……一本、取られたよ」

 ほらね、勝ちを認めてくれた。

「なんだよ、その笑顔、気持ち悪い。お前、まだ、何か企んでるのか?」

 いつの間にか、僕はニヤケ顔になっていたらしい。計太郎は、少し引いていた。

 首を降りながら答える。

「何も企んでないよ。あのまま、やり合わなくてよかったって、ホッとしてる」

「お前、臆病なのか?」

「利己的と言ってほしいね」

 腕を組みながら、そっぽ向く。が、すぐに吹き出してしまった。それに釣られて、計太郎も笑い出す。

「お前、話すと面白い奴だ」

「うるせい、野蛮人」

「何を!」

 計太郎に首を締め付けられるが、ただのじゃれあいだ。

 僕は、打ち解けられた事に、ホッとしている。このまま、やり合ったら、例え、元の時代に帰れたとしても、仏壇の前に立てないと思っていたのだ。

「あっ! いたいた、計壱! 見つけたべて……」

 僕らが肩を組んでいるところに、茜がやって来た。

 射的で景品を取ったのか、白い背中の人形とビスケットを抱えていた。

 茜は、この状況に困惑していた。

「何があったの?」

 竹刀でやり合っていた。なんて、正直に言ったら、彼女は、泣いてしまいそうだ。

 僕と計太郎は、顔を見合って、うなずいた。

「まぁ、男の友情て、てやつが生まれた」

「はぁ? 何言ってるの? 二人とも、怪我してない?」

 僕のトンチンカンな答えに、茜は眉を顰める。だが、それ以上、何があったのかは、聞くことはなく、僕らの体調を心配してくれた。

「僕は、何ともないよ」

「俺も……」

 計太郎が僕に続いて、怪我はしてない。と言うが、茜の目は誤魔化せなかった。

 茜は、近づき計太郎の顔を覗き込む。

「おでこ、腫れてるべ。大丈夫か!」

「別にこのぐらい……」

「いいから、見せるべ!」

 計太郎が、嫌がるのを茜が強引に引っ張っていると、彼女が抱えていた人形が、落っこちる。

 僕は、反射的にキャッチしようと動いた。すると、人形は、まるで自分の意思があるかの様に、姿勢を変えて、両足で着地した。

「え……?」

 思わず、自分の目を疑ってしまった。そこに居たのは、背中は白い毛並みで、腕は体よりも長い……いや、外見の特徴じゃない。

 そこに居たのは、僕と一緒にこの時代に来て、帰るための歯車を盗んだあのテナガザルだった。

 まさか、まさかの再会に思わず、僕は声を出してしまった。

 突然、目の前で大声を叫ばれて、驚いたテナガザルは、慌てて茜の元に戻って行った。

「あわわわー急に飛び乗るな、転んじゃう!」

 息良いよく飛びつかれて、転びそうになった。

 テナガザルは、茜の肩に乗って、身を丸くする。警戒する様に大きな目をじっとこちらに向けていた。

 僕が唖然としているのに気づいて茜は、事情を説明した。

「この子、射的の時、計壱がどっか行った後、勿体ないから、弾を全部撃って、後を追おうとしたら、草むらから出て来たんだべ。何だか、元気がなかったから、景品で取ったビスケットをあげたら、懐かれたんだ」

 彼女は、話し終えると、手に持っていたビスケットをテナガザルの前に見せた。

 テナガザルは、特に警戒をする訳でもなく、目の前のビスケットを手に取ってむしゃむしゃと食べ始めた。

「茜は、本当、物好きだな。宇宙人や妖怪に懐かれるなんて」

 横から見ていた計太郎が呆れた顔で言う。

 それに対しては、僕も同意見だ。と頷いく。

「なぁ、茜、このサルに歯車の場所を教えてくれないか頼めるか?」

 見た所、テナガザルは、手ぶらで、帰るための歯車がなかった。

 あれがないと僕は、帰れないのに……

 肩を落としながら、ため息が溢れてしまう。

「歯車?」

 計太郎が首を傾げる。

「うん、えっと……宇宙船に必要なパーツで、このぐらい、大きな歯車で、真ん中に宝石が埋め込まれてるやつなんだ」

 僕は、宇宙人である設定を守りつつ、手で大きさを表しながら教えた。

 話を聞いて、計太郎は、少し黙り込んでから、何か閃いた様に口を開けて、言った。

「さっき、隠れてる時に、それっぽいのを見かけたな」

「本当か⁉︎」

 思わず、食い気味に聞いてしまう。

「あ、あぁ、確か、この辺りに……」

 彼は、僕を襲おうとした茂みのあたりに手を突っ込んだ。そして、すぐに何かを掴んで、取り出す。

 その手に持っていたのは、大きな歯車に中心に赤い宝石が埋め込まれている。まさしく、探していた物であった。

 僕は、思わず涙が溢れそうになる。

 見つからないと思っていた。

 心の底では、もう帰れないかもしれない、そう思っていた。

 でも、これさえあれば、帰れるんだ……

「ありがとう……」

 震える声で僕は、お礼を言った。

「これで、帰れる……」

「そ、そうか」

 僕は頬を伝う水滴に気づかず、うなずいた。

「見つかって、良かったべ。これで無事に帰れるな」

 笑いながら茜が言う。

「そうだ、最後にもう少し三人で祭りを回らないか? 計太郎の頭は、大丈夫そうだし」

 彼女は、手を合わせながら聞く。

「さっきから、そう言ってるだろ」

 と計太郎は睨む。ふと、彼は言った。

「いや、待て。こいつは、とっとと帰らせた方がいい」

 茜の提案に計太郎が首を振った。

「俺とこいつは、顔が似てて、見られると面倒だ。それに……宇宙船が壊れてんだろ? 早く治した方が、いいだろ? 帰りたい場所があるんだったら尚更」

「そ、それも、確かにそうだべな」

 茜が、立ててくれた案は、とっても楽しそうだった。でも、計太郎が心配してくれた様に僕はもう帰りたかった。でも、もう少し一緒にいたい気持ちもある。

 僕は……ゆっくりと口を開いた。

「三人で……三人で、一緒に帰ろ、お爺ちゃんとお婆ちゃんのうちまで」

 僕の言葉に、二人はきょとんとするが、特に触れる事もなく、うなずいてくれた。

「そうだべな、帰ろ」

 茜は、僕の手を取って歩き始めた。

 計太郎は、自分の竹刀を二本手に持って僕の横に並んだ。

 僕の横を挟んだ二人が一瞬、お爺ちゃんとお婆ちゃんに見えた、気がした。

 僕らは、屋台の裏を通って、神社の階段を降りて行った。

 帰り道では、誰ともすれ違わずに、ただ、遠くなっていくお囃子の音と、鈴虫の鳴く声が聞こえていた。

 ふと、神社の方を振り返ると、ほんのりと淡い光が夜の黒と混ざり合って見えた。

「……」

 見上げた空には、星空が広がっていて、目を奪われてしまった。

「どうしたんだべか?」

 茜が聞く。

 僕は、首を振る。

「うんん、初めて見たなって」

 僕も、この町で、何度も夜を過ごした事があるが、こんなに綺麗な星空を見たのは、初めてだったのかも知れない。

「いい眺めだろ! この町は、俺の自慢の町だ」

 もしまた見たくなったら、いつでも、見に来いよ。と計太郎は、胸を張って行ってくれた。

 僕は、思わず、ヘナヘナと笑ってしまった。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

戦闘シーンを書いてる時は、とってもウキウキで書いていました。戦いは見るのも、やるのも楽しいですよね。

 計壱がお祖父ちゃんから試合は楽しいのだと言われていたシーン、僕は少し羨ましく思いました。

 剣道は、誰かの影響とかではなく。ただ、かっこいいというシンプルな理由で始めた。

 最近はサボりサボりなんですよね。

 この作品を変えてる時にふと、思ったんです。試合を楽しいのだと教えてくれた師はいたか……全く心当たりがなかったんです。もしかしたら、一家で剣道をやってた人なら楽しいのだと聞かされた事はあるかもなんですけど、僕はなかったですね。

 少し寂しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ