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35、残留

8/2より毎日投稿中。

ご注意ください。

 ローザが回復した事は、すぐに城中に周知され慌ただしくなった。

 滞っていた結婚準備も、再開して予定通り行われる様だ。

 その対応に追われる御三方を尻目に私は優雅に自室でお茶を飲む。


 ……暇だ。


 だからと言って城内を歩くとまた要らぬ人と会うかもしれないので迂闊に歩き回れない。

 この部屋は、ごく一部の人しか知られていない隠し部屋の一つなので、誰かが気軽に立ち寄ることも無い。

 トレドの街に行きたくなるが、まだローザは魔力供給中だ。王城内か少なくともアーレン王国内には、いる必要はある。


 あぁ……暇だ。


 そう言えば、ダグラスがローブを見て何か言いかけてたっけ?


 私はローブを外して、マジマジとみてみる。

 よく見るとかなり細かい魔法陣がある。

 ダミーも含まれているであろうが、かなりの数だ。

 それを、まるで優雅な模様の様に仕立てているのだからセンスがいい。

 保護魔法が、主な陣だとは思うが知らない印も多い。かなり凝った魔法陣の中には、凄い魔力を感じるが何の魔法陣かは分からない。どこかで見た事ある様な気もするけれど?

 そんな事を考えていると、ノックの音がした。

 私の返事を待って入ってきたのは、お三方だった。


「とっても暇そうね?」


 先頭にローザが入ってきた。

 ローザはクスリと笑いかけ、私の隣に座る。

 ダグラスとクリードも向かい側に腰掛けた。

 ローザがふわりと手を翻すとテーブルにはアンティーク調の華奢なデザインのティーセットが四客とおしゃれなお菓子が並ぶ。

 私のティーセットとは大違い。私のティーセットも悪くはないのだけれど実務的な物……つまり割れにくさ重視なので手持ちの部分は繊細じゃない。私はサッと自分のを片付けた。

 ローザのこう言う女の子らしさ見習わないとなと思いつつ、ローザのお菓子がめちゃ美味しいのでそれだけで気分が上がる。

 私がキラキラした目でローザを見ると、


「ふふふ。どうぞ召し上がれ」


 私はすぐにお菓子に手を伸ばす。今回は一口サイズのパイ生地にチョコレートが挟んであるお菓子だ。

 これ、かなり好き!!

 パクリと食べたら、サクサクのパイ生地と板チョコのパリッと感が堪らない!!

 フォンダンショコラの様に中のチョコがトロッとしたバージョンもあるけれど、私は断然パリッと派!!

 パリパリ音をならすのは、お嬢様としてはダメなので、お茶会には出せない代物なだけに背徳感が堪らないのだ。

 王妃教育で疲れた時はローザに強請ってたなと思いつつ、ローザの優しさにさらに頬が緩む。


「おいひぃ。ローザだいしゅき」


「あらあらまぁまぁ。愛の告白をありがとう。

 ラルフに怒られちゃうわ?」


 口いっぱいに頬張った為に、呂律があまり回らない。

 クリードどローザは、微笑ましく見てくれたが、ダグラスは眉間にシワがよっていた。

 3人とも少し疲れはあるけれど、体調は悪くなさそうだ。

 ローザも、すぐに復帰して大丈夫かと思ったけれど元気そうで何より。


 あっ、忙しい3人が態々時間を合わせて来てくれたということは何か重要な事があるんじゃないかな。


 私は話を促した。


 どうやら私が持ってきた魔道具の事らしい。

 治験のデータは、先に提出しているから問題ないのだけれど、やはり検証が必要との事だった。

 治験データとは違うところと言えば、クリードが王国の結界を維持管理している事だ。

 結界の管理室は、特別な空間らしくそこでの魔力供給が可能かどうかと、維持管理中は魔力をかなり使うらしいので供給分まで補えるかも検証する必要があった。

 それにローザが王位魔法使いになる為の試練もある。


 それを結婚前に全てクリアにしておきたいとの事だった。


「わかった。とりあえず、ローザの魔力がいっぱいになって体調が良くなってからにしよう」


 と言う事で、ローザの体調が完全に戻り次第、最終調整をする事になった。



 …………


 結果から言えば、

 まず、ローザとクリードとの魔力供与は問題なく行えた。

 出力を増やしてローザの王位魔法使いの試練も問題なく乗り越えた。

 ここまでは順調だった。

 ただ、一つ問題が発生。

 アーレン王国の結界管理室でも魔力供給は可能だったが、維持管理中は供給が不安定になってしまった。

 つまりクリードが結界管理室にいる間は別の誰か不安定分を補う必要性があった。

 不安定さはローザに害を与えていたので私が急いで安定化させて足りない分を魔力供与した。

 予想外の出来事で、ローザには2つの魔力腕輪からの供給になるが、それも問題なかった。

 不安定な時だけ補えば良いかと思ったが、全く供与してないところからいきなり切り替えをするとローザに負担がかかる。なので、私は常にある程度の魔力を供与する必要があった。

 つまりアーレン王国を離れられない事になる。


 ローザ達は魔道具の検証が終われば、すぐにでも私をラルフの所に送りたかったみたいだが、それは叶わなくなった。

 腕輪の魔力供与はアーレン王国内では問題なかったけれど、外に出るとダメみたいだ。やはり結界の影響みたいだ。


 それにローザは検証中、無理をしていた様だ。

 王位魔法使いとなると魔力量も桁外れ、技量はあっても魔力量を扱うのはかなり大変、不安定になるなら尚更。それを補うのも私の役目。


ダグラスが代わりになるとも言い出したが、次期当主であり、「神の御使い」筆頭にそんな事させられないし、国がまわらない。私は失踪していたから元々戦力外だ。

それに変更する際に、ローザに更に負担がかかる可能性もあるのでそれは断った。


 と言う事で私はアーレン王国にいる事が決定となってしまった。







この作中では、

印は魔力で見えない様に中に刻むもの。

魔法陣は目に見える形で刻むもの。

と分けてます。

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