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27、前世 中編 sideバネッサ

恐怖体験が続きます。

無理な方はブラウザバックでお願いします。

予定では、前世sideバネッサは読まなくても本編にはそれ程影響はない筈なので、本編再開から読んでもらっても良いと思います。

勿論読んでくれると嬉しいですがご無理はなさらないようにお願い致します。

それから話題は移り変わり、変な空気は霧散した。

気がつくともう夜の11時を過ぎる頃、帰るなら終電の時間が迫っていた。


「明日午前中に、伯母さんがくるけど、今日は泊まっていく?

部屋は沢山あるし、お客様用の布団も着替えもあるよ」


「えっ? あぁもうそんな時間か、居心地良すぎて全然気づかなかった。う〜ん。どうしようかな?」


祖父は交友関係が広く、よくお客様を家に呼んでいて遅くなれば泊まる人もまぁまぁいた。なので、廊下を挟んで隣には客間があり、最低限の家具が備え付けてある。今も習慣化していてベッドのシーツも定期的に手入れはしているので、急な宿泊も問題ない。無駄な面倒事が起こらないように、各部屋には鍵もかかるようになっている。安全面も大丈夫だ。まぁ今回は弟だし変な事が起こるとも思えないし、私も会話が弾んだのと、あの言動が気がかりなのもあり、提案してみた。


「部屋には鍵もかかるし、安全面は大丈夫だよ?」


少し茶化した態度で言ってみた。弟も姉弟とは言え男女なのでそう言う心配をしている可能性も考慮したのだ。弟は中々の優良物件なので何度か寝込みを襲われそうになった事があるらしい。モテる人は男も女も関係なく、大変なこともあるのね。私には関係のない話だなと思いつつ、姉弟でこの差は……とちょいと虚しくなるが、弟に罪はないので今は端においやる。


「ははは。姉さんは信頼してるからそんな心配はしてないよ。けどまぁ、帰ろうかな。伯母さん厄介そうだし、姉さんのためにも、ちゃんと事前準備してからくるよ。明日の10時だよね? それなら少し確認したい事もあるし」


この数時間で私の評価は上がったようだ。

何か伯母に対して気がかりな事でもあるのか、真剣な表情の弟に、これ以上茶化す気にもなれず、帰宅を促す事になった。


「えっ? あれ? 開かない?」


私は片付けを始めつつ、弟はトイレに行くのかリビングの扉を開けようとしていたのだが、戸惑いの声が聞こえた。


「うん? 扉が開かないの? それは引くんじゃなくて押す方だよ。鍵はかけてなかったと思うけど?」


「……開かない」


「…………」


鍵の部分も触っているようだが開かないらしい。困惑している弟を見て、私は片付けの手を止めて急いで歩み寄った。私もいつも通り扉を開けようとするも開かない。

私も半ばパニックになりガチャガチャ押したり引いたりするがびくともしない。

何が起こっているのかと不安になり始めた時、今度はキッチンの方からボン!と言う大きな音がなった。

急いでキッチンへ行くとコンロから火柱が上がっていた。コンロの上には調理器具は何もないのに、火が換気扇の部分に届く勢いで勢いよく噴出している。私はタオルを水で濡らそうと蛇口を上げたが、水が出ない……。えっ?なんなの?


私がパニックになり呆然としていると、後ろから弟が来て私をとりあえず火から遠ざけた。どうやら弟は、消防に電話していたらしい。弟は見たところ落ち着いているようだ。


「諦めよう……とりあえず脱出する方法を考えよう」


「う、うん、わかった」


この部屋の脱出ルート……開かなかった扉以外だと、窓という事になる。このLDKは個室よりも広いけれど、高い位置に方に明かり窓が沢山あるだけで脱出できそうな窓は2つしかない。私は急いでその窓に近づいた。


こういう時の嫌な予感は当たるものである。窓の鍵を開けて窓を開けようとするも開かない。弟も力一杯開けようとするが同じだった。弟は次に窓に体当たりするけれどびくともしない。それはそうだろう。祖父が防犯面を考えて、防犯ガラスにしたのだからちょっとやそっとじゃ割れない。

他の方法も考える。消化器は玄関にある。どうして玄関に消化器を置いてしまったのか。まさかリビングの扉が開かないなんて想定してなかったので、もうこれは後の祭りだ。


それならもう仕方ない。地震の時を想定して、防犯ガラスでも割れるハンマーが家にあったとリビングのパントリーからハンマーを取り出そうと見たが、いつも置いてあった場所に何故か無かった……。いやいやいや!! なんで!?



…………一体、どうなってるの?


私がパントリーを開けて呆然としていると、それに気づいた弟がやってきた。


「姉さん何してるの?」


「ここに防犯ガラスでも割れるハンマーがあったはずなの。なんで無いの? なんなの一体!? どうしてこんなことに??」


「落ち着いて姉さん!!」


ぐるっと向きを変えられ、ギュッと抱きしめられた。落ち着かせるように背中をポンポンされている。弟は高身長、私は女性の平均身長より少し低いので、親と子のような縮図だ。

私の方が姉なのに、弟の方がしっかりしている。良い雰囲気の男女なら盛り上がるところだろうが、姉弟だし、ムードのかけらもないな。と半ば現実逃避をした所で、少し落ち着いた。ふぅと一度息を吐き、自分を落ち着かせる。


弟は私を落ち着かせつつも、頭では別の事……これからの事を考えているのか。かなり表情は険しかった。


「ごめん、取り乱して大丈夫。ありがとう」


「あっ? あぁ……なんかごめん? 子供扱いしたつもりじゃないよ?」


私が落ち着いたのを見て何故か言い訳を始めた。

そうこうしているうちに部屋には嫌な匂いが立ち込めて来た。この家は祖父が拘って作ったので、壁紙も耐火素材が使われているのですぐに燃え移るような事はないが化学製品の溶ける?焼ける匂いがして体に悪そうだ。私はキッチンにあるタオルを取り出して弟にも渡す。少しはお姉さんらしい所を見せたかったのかも知れない。

 

 何とか自分を落ち着かせるもの、最悪の状態は変わらない。今の私が考えうる限りのことを試したがどうにもならなかった、詰んだと思いつつ。近隣の人が家事に気がついて、助けが来るのを待つしかなかった。


火から1番遠い場所で状態を低くして助けを待つ。じっとしていると頭だけが回るもので……。

この状況はどう考えても違和感だらけだ。誰かに仕組まれたとしか考えられない。

そうなると、こんな事をするのは1人しか考えられなかった。


どうやら私は伯母にそこまで嫌われていたらしい。伯母は弟が今日来る事は多分知らなかったはずだ。弟を巻き込んでしまって申し訳なく思った。


「正輝、ごめん……多分私のせいだ……巻き込んでしまってごめんね」


私が先に姉弟で話し合いたいと今日呼んだのが悪かった。内容が内容なので、自宅に呼んだが、なんなら外食でも個室を予約すれば出来なくは無かった。申し訳なさと今の状況もあいまって目が涙に滲んだ。


「別に……姉さんが悪いわけじゃないだろう? 聞いた話だと伯母はかなり強欲な人みたいだし、遺産を独り占めしたかったんじゃないかな。

 ……寧ろ今日俺がもっと早く帰ればよかったんだ。居心地よすぎで長いしてしまったから……姉さんだけなら、少なくともこんな事はしなかったんじゃないかな? 

こんなことするような奴だから、別の事はしたような気はするけれど……。それならいた方が良かったのか……?」


「別の事って?」


「…………それはまぁ俺の想像だけだからな。別に知らなくて良いんじゃないか?

 とりあえず今は、姉さんと俺2人の相続人がいなければ全ての遺産は伯母に行くんだろう? 2人一緒に抹殺できる機会はそうそう無いしな。伯母が今回の事仕組んだ可能性が高いな」


弟も私が思っていた事と同じことを考えたようだ。


「でも祖父母の財産はこの家と少しの貯金だよ?

家が燃えたら意味がないんじゃ……?」


「この家は築年数も経っているし、価値としては土地代だけだ。駅近だし、老後にはもってこいの場所だ。寧ろ、築年数も経っているし家は邪魔なのかも。自分好みに立て替えるつもり何じゃないかな? 燃やして廃材が減るとか、僅かでも火災保険が降りればラッキーくらいに思っているのかもな」


私が30を過ぎているということはこの家の築年数はかなり経っている。確かにあちこち修理が必要なところもある。私にとっては育った我が家で多少思い入れもあるが、確かに伯母からすると叔母が社会人になってから建てた家なので思い入れはないかも知れない……。

火災で人が亡くなった後に自分の家を立てる……もしそれが、事実だとしたら、伯母も相当変わった……ぶっ飛んだ思考をお持ちのようだ。

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