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24、懺悔 後半 sideローザ

 勿論、売れるとは思っていなかった。親戚や知人に配るくらいの少ない部数で発注したのは、私の理性が働いていたのだと思う。それでも手元に届いた製本は、心が踊ったし達成感もあった。まぁ、自費出版と言っても結局、世には出ていないので、個人で楽しむ本だ。それなのに何故こんな事に?


 前世の私は交通事故にあったとか、過労死したとかそう言ったことはない。

 ちょっと不摂生気味だったが、ちゃんと天寿は全うした。良縁には恵まれなかったけど……。

 私は7人兄弟の末っ子。勿論小さい頃は貧乏だった。勉強がそこまでできる訳でもなく高卒で就職した。給料は少なめだけれどしっかりお休みはあって、ホワイトな仕事場だった思う。定年後は質素に生活してなるべく迷惑をかけないように一人暮らししてたつもり。最期は一つ上の兄さんに看取られたんだと思う。面白味のない人生と言われればそうかも知れないけれど、私にとっては悔いはなかった。


 次にパチっと目を開けると、見たこともない美男美女がいてと言うか、アニメに出てくるような目が大きすぎる人たちばかりで驚いた。色味だってなんだかおかしい。カラフルすぎる。そして私は赤ちゃんで……もうそれだけで私はよくある異世界転生したと理解した。ただ何故? 天寿は全うしたよ!?


 理由は考えてもわからなかったので、一先ず置いておいて、ここがどこの世界なのか考えていた。そして私は何役なのかと想像する。小説を書くのも好きだったが、読むのは更に好きだった。書籍として出版される本も勿論だが、サイトに投稿されているものまでなんでも読み漁っていた。現役時代、老後を通して一つの楽しみだったとも言える。相当な数を熟しているので大丈夫! 

 なんでもこい!! と思っていた私だったが、なんと転生先は残念な私の作品。それも若かりし頃におかしなテンションで書いた記念出版の作品だった……。しかもそのヒロインときた……。ピンク色の髪に緑色の目……。ザ!ヒロインと言えばこれでしょう!!と思って書いたが……前世の自分の人生と照らし合わせると違和感しかない。うぇ〜。


 前世の自分との剥離もそうだけれど、それよりも転生先がど素人が書いた小説で穴だらけの物語なのだ。


 はぁ、そういや穴はいっぱいある。

 けれど今は入っている場合では無い。

 穴に落ちてばかりはいられない。

 入ったら大変な事になる。


 そうじゃなかった。穴だらけの小説をどうやって纏めたか……それはチートだ。困ったら流行りのチートで全てを無双する……。うん。理不尽すぎる。


 それに理不尽なチートを発動させる為に、主要メンバーに酷い生い立ちを与えている。うん。それも避けられるものは避けたい。

 特にヒロインの私はかなり過酷な物が多いので全力で避けたい。


 これでもかといじめてくる悪役令嬢は、アリシアだ。アリシアを、悪役令嬢にならないように全力で回避しないといけない。アリシアが悪役にならなければ相当数の困難を回避できる。


 ヒーローのクリードも生い立ちからヤンデレ監禁エンドになるのでそこも回避したい。今なら監禁エンドだと思うが…… 当時の私は『一心に私を見てくれるなんてステキ!』と思っていた……。あの頃はハッピーエンドだと思っていたのよ。若かった。監禁は嫌ですよ絶対に!!


 側近のダグラスは機械のように効率主義、感情がない人になってしまうのも軌道修正したい。


今更ながら当時の若かりし私よ……なんて小説書いたんだよ!!


 この世界がどこまで私の作品を模しているのかはわからないけれど、避けられる事は全力で避けようと思う。生まれたばかりだったので体力もなく眠気にも勝てなかったが、起きてられる間は、必死に今後の事を考えるのだった。




 …………




 必死に考えたけれど、所詮は凡人の私だ。全てがうまく行ったわけでは無い。


 けれどクリードは危ないヤンデレは回避できたと思っているし、ダグラスも効率至上主義だが、ちゃんと感情もある。悪役令嬢だったアリシアはちょっとぶっ飛んでる所はあるけれど友達思いの良い子になった。それに今はラルフと幸せに暮らしている。

 ラルフは……本当に幸せになってくれてよかった。

 私は、アリシアにいじめられる事はなくなり、小者達のちょっとしたイベントはあるけれど、ゾッとするような試練はなくなったので、まぁ良しとしよう。


 前世の若気の至りで大変な運命を背負わせてしまうところだったメンバー達はある程度、回避出来た。醜悪な作品は作者(自分)の手によって別の物語になり盛り上がりに欠けてしまうが、私はこちらの物語の方が好きだ。現実に起こって欲しいことと物語で得たい事は違うのである。


 凡庸な私だけれど、まぁ一度は天寿を全うしてるので色々な場数は役に立った。それなりにうまくいったと思う。

 作品を書いていた頃の私に比べれば上々の出来でしょう?

 まぁ、私はよくやったと思うし、ここで退場しても大丈夫かなぁ……。作者としての最低限の後始末は終えたと思う……。


 はぁ今回のイベントは結構つらいな。アリシアが悪役令嬢にならなかった分、ガードナー侯爵が直接妨害する可能性はあったけれど、直接妨害された方が体力的に辛いパターンだ。


 本来の魔力交換の儀式は、新たに王族入りする王子妃を守るために王族と6大侯爵家で印を結び合うために魔力の交換をする術だ。その王子妃から生まれた子も受け継ぐ事になり、幼少期の守りにもなるのでとても重要な儀式と言える。


 それなのに護るどころか私の中で反発するなんて……!!

 まぁ原作では、儀式中にアリシアが妨害をして大爆発を起こして半数以上がが重傷を負うという鬼畜よりかはマッシか。


 ガードナー侯爵は

「保護する為の魔力すら受け入れられないとは、ローザ嬢に王妃としての資質がないのでしょう」

と言い捨てて帰って行きやがった! 保護する以上の魔力を注ぎ込んできたくせに!! あら、言葉が乱れましたわ。失礼致しました。


 他の侯爵も魔力交換儀式が初めての人が多かったので、自分に責任を押し付けられないよう早速さと帰った。一応自分の養育家は心配する素振りをしていたが、所詮駒でしかない私にはそこまでの情はない。むしろ出来損ないと心の中で罵っているかも知れない。体調を気遣う言葉だけで、何かしようとする気配は無かった。いるだけだと気も使うし面倒なので丁重にお帰りいただいた。



 原作ではかなり大きなイベントだったので何かは起こるとは思っていたけれど、まさかこんなに長引くとは思わなかった。思ったよりも体力削られて、気持ち悪いし気分は最低だ。眠たくなる時間も増えてきた。原作よりもまともに育ったメインキャスト達もいるし、この世界は大丈夫だよね。私はこのままぐっすり眠ってもいいよね……?

自費出版自体は、悪いものではありません。リスクとベネフィットを考え、対応しましょう。

今回の内容について、自費出版を推奨、非推奨するものではございません。

これはフィクションです。


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