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23、懺悔 前半 sideローザ

少し時は戻ってアーレン王国にいるローザ視点です。

「あのクソ狸たち、嫌がらせする以外考える事ないの? 

 そんな暇があるなら、アーレン王国の今後の課題の一つでも処理しやがれ!!

 ほんと腹立つ!!」


 気心の知れた侍女以外いない部屋で私は悪態をついていた。

 私は今、とても豪奢な調度品に囲まれた部屋のベッドに横たわっている。ベッドのシーツや上掛けも最高級品で肌触りも良いし、ふわふわでありながらしっかり体も支えてくれる。本来なら極上の睡眠を得られる最高の空間だ。それはそうだろう。未来の王子妃が使う一室なのだから。

 なのに私の気分は最悪なのである。完全に気の抜けた私はベッドでゴロゴロ生活を送っている。


 はぁ……魔力交換の儀式のせいで船酔いと、眩暈と二日酔いが一緒に来た様な感覚が1ヶ月も続いている。考え得る対策はしてきたつもりだった…最悪、こうなる事は予想もしてた……それでも分かっていても辛いものは辛い。


 自分でも魔力を抑えようとするが、王家と6大侯爵家当主の魔力を一気に制御する力は、私には無い。まぁ最初よりはマッシで、制御できないのは半分くらいで、その内の一家が特に難しいのだ。本来はこう言う事が起こる儀式では無いのに……。

 最初は自分でどうにかするつもりだったが、かなり時間がかかりそう……と言うか最後の一家は無理だと早々に悟った。まぁ本来のストーリーから外れてるんだから仕方ない。


 どうしようかと思っていたら、ラルフはどこからか情報を仕入れてきたようで、代理を通して私に接触してきた。かなりお怒り気味で……。幸せホヤホヤのラルフには最初は頼むつもりはなかった。あちらの幸せに水を差す気は毛頭ない。けれど今の状況をアリシアが知れば悲しむのは明らか……。ラルフにバレてしまった以上、アリシアに知られるのは時間の問題だ。

 ラルフはアリシアが関わると途端ポンコツになる。きっとアリシアに詰め寄られれば話してしまうのは明らかだ。ここまでくれば、事情を説明して魔力酔いの魔道具をお願いした方が早い。アイツならなんとかしてくれるでしょう。こんな事になるなら最初から頼んでおけば良かったかな。ちょっと後悔だ。


 事情を聞いたラルフは更にめちゃくちゃ怒ってた。まぁ怒ってる理由はアリシアを悲しませる事になるからだろうけど。事前に分かってたなら、もっと前に言えよ!と説教もされた。

 はい。おっしゃるとおりです。でも、新婚さんに申し訳ないじゃ無い?? せっかく見つけたアリシアの幸せを壊したく無いと思うのは当然だった。この世界を少しでも壊せたのなら僥倖だ。


 はぁもっと私に最初から力があれば良いのに……なんでこんな世界にしちゃったんだろ。


 はい? 私は誰かって? ローザですよ?

 アーレン王国の若年世代の憧れの存在ですわ!

 美貌も知識も立ち振る舞いも、すべてが完璧と言われているローザです!

 えっ? 皆んなの前に見せる姿今は違うですって? 当たり前でしょう?? あんな完璧だ姿でずっといる自分なんて疲れるでしょう!! 見せる時は完璧な貴族令嬢を、見せない時はこれでもかと、だらけてもいいではないですか! メリハリは大事です! 痛いものは痛いし気持ち悪いものは気持ち悪いものなんですよ! 辛い時は休むべし!

 …………詐欺師だ! と言ったそこのあなた? 

 別に騙してるつもりはありません。完璧な姿も、だらけてる姿も、同じ私!! 誰だって裏も表もありますよ?

長い年月生きていたらわかると思いますが、物事をスムーズに進めるためには、便宜上の顔は必要なのですよ。それも勿論本当の私ですわ!

 世の中そんなものよ? 現実を見て! あっ、でもここは現実なのかしら? 


 この世界は私が前世で読んだ事のある小説だった。不安定な王国を救う為に、とある伯爵令嬢が数多くの困難を乗り越えて聖女となり、王子と共に国を安定に導き、最終的にハッピーエンドになる恋愛物語。よくあるような恋愛小説の様に思うだろうが、題名が頂けない。

「運命を切り開け、必ずそこに勝機はある!!」と言う題名なのだ。


 題名からはどう考えても恋愛小説とは思えない。実際、王子との甘酸っぱいシーンは最後の方以外、殆どない。ただ恋愛小説なので、所謂悪役令嬢がこれでもかと妨害をしてくる。

 悪役令嬢はハイスペックでヒロインは勿論最初は太刀打ちできない。怪我、毒などの身体的にも、イジメや言葉等精神的にもかなり辛い物語になっている。ヒロインは色んな試練に見舞われそれを乗り越えて行くのだけれど、かなり鬼畜なのだ。Sランクの魔物の住む森になんの装備も無しにいきなり放り込まれたり、真っ暗な洞窟に閉じ込められたり、何の前触れもなく毒を飲まされたり……。物語として成立してない。

 今思い出しても、誰が買うんだよって思う物語。実際に売れなかった。

 売れてない物語をなんで買って読んでるんだよって?

 …………そう、なんせ私が書きました。そりゃ書いたんだから読んでもいるよね? ははは。


 前世、私は普通の会社員、趣味はなく、出会いもなかった。仕事もそこまでハードではなくて、お休みもちゃんとあった。つまり、休日が暇なのだ。なので副業になれば良いなと淡い期待を持ちつつ始めたのが小説だ。

 まぁ、案の定、投稿サイトで書いてもブクマもいいねも評価も貰えない。現実はそんなもんだ。けれど書くのは好きでハマってしまい。休日になると中毒気味に書きまくった。

 小説を投稿して一年が過ぎた頃、聞いた事もないような出版社からあるSNSを通して直メッセージが届いた。


 貴方の小説に感銘を受けた。ぜひ出版しないか。

と言うお誘い。


 直メッセージと言うのが正直胡散臭い。話を聞くとやはり自費出版だった。

 ただ思っていたよりも、出版費用は高くなく良心的で、架空会社ではなく、実在する会社だった。その頃には小説を書くのが趣味になっていた私は記念出版してみようかな? と軽い気持ちで作ったのがこれだ。他に趣味もないし、出不精の私はお金を使う事もない。少しはまとまったお金もあったのが更に後押しした。

 どうせなら今まで書いた小説のハードな部分を全部詰め込んだら楽しいかなって思って、書いた物語。完全に変な方向にハイになっていた私が書いた小説。年代、地域、文化等全てごちゃ混ぜの世界……。




 完成した時は、こんなに凄い小説は今までに無いと自画自賛していた……。


 今までに無いのは確かだけれど……。



 穴があったら入りたい。



自費出版自体は、悪いものではありません。リスクとベネフィットを考え、対応しましょう。

今回の内容について、自費出版を推奨、非推奨するものではございません。

これはフィクションです。



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