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プロローグ 町人A視点→???視点

地震と津波の話があります。

被害はありません。

苦手な方はご自衛下さい。

読まずに本編へ進んでも大丈夫です。



「もう、終わりだ……」


空は晴れ渡り、穏やかな気候だった。なのにそれは突然襲いかかって来た。


 少し前に、揺れは感じたけど建物にも被害はないし、直ぐに日常に戻った。けれど数分後、町中に響き渡る緊急の鐘が鳴る。海に近い緊急の鐘が鳴ると言うことは、津波の発生だ。しかもかなりの速さで鳴らしている。これは凄い波がやって来る知らせだった。

 俺は皆に声を掛けながら、高台に急いで避難する。皆も、日々の避難訓練の成果で、声をかけ合いながら避難していた。

 高台に来ると海が一望できる。海をみて血の気が引いた。今の自分達がいる高さよりも遥かに大きい津波が海一面にやって来ていたのだ。直ぐ様、皆を誘導して更に高い場所を目指す。あんな高い津波……。この街はもうおしまいだと思った。



 そんな時に港付近に、男女2人の魔法使いが現れた。

 2人とも海の方を見ているので後ろ姿しか見えないが、1人は黒っぽい短い髪の男性で、もう1人は淡い水色の長い髪を靡かせている女性だった。

 何故魔法使いかわかるのは、一目瞭然で、2人ともあり得ない高さに浮いているからだ。魔法使いしかあんなこと出来ない。それに、白地に淡い緑色の刺繍が施されていたローブは、『神のお使い』と呼ばれる人達で、物語に出て来る絵と一緒だった。助けが来た。そう思った。


 魔法使いの女性が黄金に輝く身長ほどもある杖を横に動かすと、津波が見る見る低くなり半分程になる。

 おーっとどこからともなく感嘆の声が上がった。

 次に魔法使いの男性が輝く剣を横に振ると残りの津波が崩れて形をなくす。

 わー!!と今度は歓声と共に拍手が巻き起こった。


 僕たちは安堵した。隣国である魔法使いの国との協定で、大災害の際は助けて貰えることになってはいるが、この街では俺が物心ついてからは初めての事だった。本当に助けてくれる。魔法使い達に心から感謝した。


 ただ、津波は無くなったがまだ海は余韻で荒れていた。数日から数週間は荒れるだろう。漁には出れない。けれど街が津波に飲み込まれることを考えれば御の字だ。これ以上を求めてはいけない。協定でもそうなっていた。

 魔法使いを虐げていた歴史を知れば知るほど仕方がないことだ。ここまでしてくれただけでも感謝しかない。


 けれど、女性の魔法使いの方が今度は杖を消し、手のひらを上に向けて腕を伸ばし横に広げた。

 まるで神に祈りを捧げる様に……。

 神秘的だった。まるで女神様が降臨したかの様に見惚れてしまう。

 その願いが通じたのかわからないが、海にキラキラと輝く光が降り注いだ。そして穏やかな海が顔を出す。


 協定以上の事をしてくれたのだ。それは間違いない。

 これで漁に出れる。

 俺は更に感謝したのだった。


 ふと魔法使いの女性を見ると力が抜けた様にふらりと倒れる。俺たちは、うわっと声を上げてしまうが、危なげなく隣の男性魔法使いが支える。倒れて向きが変わったので女性の顔が見えた。

 やはり思っていた様に、女性は黄金の瞳をしており、神秘的で美しい人だった。

 魔法使いは何か言い合っていた様だが、その後直ぐに、2人は消えてしまった。


 俺たちはいなくなった2人の場所に祈りを込めて感謝の意を表したのだった。



 …………


「ほーっほっほっほ、アリシア少しやり過ぎかのぅ?」


 穏やかに嗜めるのは、法衣を纏った白髪の老輩だ。老輩は困った顔をしつつも、そこまで怒ってはいない様だ。


 しかし隣にいた壮年の男性はそうではなかった。壮年の男性は神官服を着ているが、間違えて神官服を着たのかと思うくらい似合っていない。筋骨隆々、騎士団に所属していると言った方がしっくりくる人だ。声も神官には適さない声量だった。


「こらっ! アリシア!! 協定以上のことをしよって!!

 何のための協定か話しただろう!!」



 怒鳴られているのは先ほど、街の皆に感謝されていた女性だった。まだ成人したばかり、不貞腐れている姿は少女と言ってもいいかも知れない。

 怒声で縮み上がったアリシアは弁明を始める。


「ひぇ〜。ごめんなさい!! だってあのまま海が荒れてたら漁に出れないし、ご飯に困るかなと思って……。漁が出来ないと困るでしょ?」


 怒られているのでとりあえず反省してる様に見せつつ、少し言い訳をするアリシアは、街での神秘的な女神とは程遠かった。本来の姿はこちらに違いない。

 隣には、一緒に任務に出ていた青年もいて、困った様な顔をしている。


「申し訳ありません。止める暇もなく。初任務だからと張り切ってしまった様ですね。監督する立場にも関わらず、この様な事になってしまいました。申し開きもございません」


 一緒に任務に当たっていた藍色の髪の青年は頭を下げて謝罪した。


「ダグラスのせいではない。

 ア〜リ〜シ〜ア!! どうやら其方は反省してないし、協定の意味もわかっていない様だな。これは訓練のやり直しだな」


 ムキムキすぎて全く神官服が似合わない壮年の男性は、怒りを滲ませる。これは厳しい訓練になりそうだ。お説教もまだ続きそうである。


「うぇ〜ごめんなさい!!」


 街の人たちには感謝されたが、後でこっぴどく叱られた魔法使いの女性だった。




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