変化
さてどう言ったことだろうか。明智は身体が動かせない状態で考えるが何も分からず、結果ぼっーとするしかないと思ってしまう。
「お待たせしました〜ご飯ですよ」
扉から一人の少女が顔を覗かせる。手にはお盆を持っており、皿から湯気が立っている。
「大分ご飯を食べていなかったのでスープにしてみました。」
ベットにお盆を置かれる。美味しそうな匂いが香ってくる。
「どうでしょうか身体は起こせますか?」
自分の顔を覗く様に彼女は言った。
幸い首までは多少の痛みで済むので首を横に動かす。
「そうですか、ならヒールを使いましょうか」
そういうと彼女は身体に手をかける。すると彼女の首にかけてあったネックレスを外すとネックレスの先にある石が光出す。
何が起こっている?何で石が光るんだ?
面白い事に先程の痛みは比較的軽くなった。
「どうでしょうか?」
とまた同じように自分の顔を覗く。
「さっきより、大分ましになりました。ありがとう」
声が出る。有難いことだ。と同時にこれまで見せられていた事についてを質問していく。
まずは自分がどういった経緯でここに寝かされているのかを確認する。
クレア曰く、この屋敷はアイリーンと呼ばれる少女のもので自分はここでメイドをやっているらしい。
一週間前、この屋敷の土地にクレアが趣味で行っている畑があるらしいがこの畑で血溜まりを作っている自分を発見し、ここに運び込まれてきたらしい。
そこからは大変でまるで私達とは違う身体をしているらしく魔術?を使うにも骨が折れたと話していた。
命を救って貰ったのだ。なるべく彼女達には怪訝な顔をしたくない。が突拍子もなさ過ぎ頭が混乱している。
情報がいる。クレアにここに書斎など無いかと話を持ちかける。
クレアからは魔術で一時的に回復しているに過ぎないため身体を動かすことは咎められた。
ならばとクレアに自分は別の国からやってきた人間あることとこの世界の話をしてくれないか聞いてみると彼女は快く了承してくれた。
ここはイリッシュ大陸と呼ばれる所らしい。元いた世界に照らし合わせると昔のヨーロッパに近いのでは無いだろうか。といっても明智自身ヨーロッパの歴史に詳しく訳ではない。
この世界では魔術というものが存在しており、この能力を使いイリッシュに住んでいる人たちは生活を利便的に行なっているらしい。
詳しくは説明をされていないため分からないが明智の身体はイリッシュに住んでいる人と違いマナの流れがないらしくアイリーンが擬似的なマナの流れを構築していなければ先程のヒールも効果を示さないらしく畑では泣きながらヒールをかけ続けていたと話された。
「明智さんその首に掛けてあるネックレスを取らないようにお願いしますね今はそのネックレスが明智さんにマナの流れを作らせているので」
クレアはアイリーンが明智に掛けているネックレスを指差した。ネックレスにはあの時の鍵がつけられている。
もっと詳しい話を聞こうと思ったが来客が来たようで話を中断してしまった。
さて、こんな状態からでは何も出来ないため横になる。
徐ろに首につけてあるネックレスを手で持ち上げてみる。銀色の鍵が光に照らされ輝いている。
「あら、もう元気そうで何よりだわ」
扉の方から声が聞こえる。顔をそちらに向けるとアイリーンが立っていた。用事から帰って来たのだろう。
「少し話したいことがあるけれど話せそう?」
落ち着いた声でこちらに話かける。
「大丈夫ですが、どうしました?」
「貴方のことで聴きたいことがあるの、特に貴方の世界の話について」
彼女の話は簡単に言うとイリッシュ人に関連することであった。
そもそも、この世界ではマナを媒介にして人間を形創っているがこと明智はマナとは違う物で構成されていると説明されている。
同じ人間の形をしているが別世界の構成要素で形創られている。
「何年に一人はそういった異世界人がここの世界に訪れる。その鍵を持ってね」
彼女は本を眺めながら、落ち着いた声で言った。
「しかし、なんでこんな事になっているんですか?というかこれ何なんですか?」
「それが分かったら、私は貴方に説明をしている筈だけれど?」
アイリーンは落ち着いた声で続けて
「貴方、不思議にならないの?ここに来てから私達は明らかに言語も構成要素も違う。しかし、貴方は不思議に思わない。変じゃ無いかしら?」
あっと口に出した。今まで明智は不思議と何の違和感なく彼女達と話していたが明らかに言語が違う。
「意識が戻ってから時間がまだ経っていないから混乱しているかも知れないけど貴方、相当学術的に高価な被験体なのよ」
被験体……恐ろしい響きだ。なんかこう拷問めいたものをされる可能性があるかもしれない。
「拷問で済めばいいけどね」
「いや〜拷問以上は勘べ……あれ?」
彼女に顔を向けると本に目線を落としているが笑みを浮かべている。
「なんで考えていることが分かるんですか」
「貴方が何者か分からないし、そもそも私は助けるつもりは無かった。そのネックレスはその鍵を媒介に貴方のマナの流れを作る。その流れの一端を私の頭に繋げているだけよ。クレアに感謝しなさいこの世界じゃのたれ死んでいても誰も気にしないのだから」
少し、ムッとするが助けて貰ったのは事実だったので感謝の念を込める。
フフッとアイリーンは柔らかく笑った。頭で考えていることがわかっているのなら、ここでの会話は全て自分が嘘をついていないか試していると言う事だ。要は悪い奴じゃないか調べる為だったのだ。分かっていても身体を弄ってまでするのかと思ってしまう。
……しかし、待てよこう頭の中で考えている事が分かるのであれば最悪、エロいことも考えれないのではないか……試しにやってみるか
アイリーンの顔をみる。視線を本に向けているが耳が赤くなっている。
「貴様、分かっているな」
「あなッ……貴方はなんて事を考えているんですか。最低です。」
なんと年頃の女の子の様な、今までお嬢様の雰囲気を醸し出していたのに下ネタ一つだけでこうなるのか。
「あなたは私達に助けられたのですよ。その感謝は無いのですか!!」
「俺は感謝してるさ、でも人間常に聖人君子の様な事考えられないってもしや、そこまで考えておりませんでしたか」
「普通の人ならそんなこと考えません!だからイレギュラーは嫌いなの!」
怒ったように、部屋を出て行ってしまった。まだ話したいことがあったがこんな状態じゃ歩くことも儘ならない。
ベッドにくるまり何も考えず明智は寝る事にした。
読んでくださってありがとうございました。