森の中で出会ったのは
暗い森の中、月明かりだけを頼りに前へ歩き、進む。屋敷育ちの雪奈には少し歩いただけでも息切れをしてしまう、蹌踉めきながらも奥へ奥へと進む。
雪奈は森の中に入った時から視線を感じていた。しかし、気の所為だと思うも時折草むらがガサガサと音を立てる。動物か何かだろうと気にしないで居たが。ついてくる。どんなに歩いてもずっと音は後をついてくる。
「だ…だれかいるのですか。」
小さく消え入りそうな声で呼びかける、沈黙が続く「私の気の所為ならよいのですが…だ、誰かいるのでしたら出てきて貰えないでしょうか…」
ごくりと唾を飲む。するとガサリと音を立て小さな子供が姿を現した。その子供は裸に薄い着物一枚頭はボサボサで見開かれた目。雪奈は恐怖し小さく悲鳴を上げる。
ぶつぶつと何かを呟きながらゆっくりと近づいてくる子供は、雪奈へと手を伸ばしてくる。
殺される!そう思った時、
「何してる、そいつはお前の新しい遊び相手か。」
振り返るとそこには真っ白な男が腕を組み木にもたれかかっている。
見惚れてしまう程美しく暗闇の中でも分かる程、
透き通る肌、月夜に照らされて輝く白髪の髪。
見つめていると吸い込まれそうな深紅の瞳。
見惚れていると先程の不気味な子供はすーっと姿を消した。
「お前、人間の癖に一体何しにここにきた。
そうか、やはり俺たちの森を奪おうって気だな、しかもこんな女を遣すとは俺も舐められたものだな。女、死ぬ覚悟は出来てんだろうな。」
襟元を掴まれ持ち上げられる、バタバタと足をばたつかせるもびくともしない。
上手く呼吸出来ず苦しさにボロボロと泣いてしまう宵を見て無表情のまま手を離してやる。
地面に落ちてはへたり込みゴホゴホと咳き込む。
「ご、ごめ…なさ。私は何も、森を奪おうだなんてそんな事」ガタガタと震えながら言葉を紡ぐ様子見て男は、「それもそうだなこんな軟弱な女が、俺の勘違いだ悪かった。とっとと失せろ目障りだ」
背を向けては男は暗闇の中へと歩いていく、
「ま、まって!!」自分でも驚く程に大きな声で呼び止めてしまい焦っていると、ぐっと口を押さえ付けられ「黙れ大きな声を出すな、ここにはお前みたいな女の肉が好物の妖が五万といる。死にたくないなら今すぐ山を出ろ、三度目は言わんぞ。」
「い…行くところが、ないんです。私には」
それを聞くと男は首を傾げながら「その身なり、そこそこ良い所の出だろう。帰るところがないだと?」
眉を寄せ、信じられないと言わんばっかりな表情で見つめてくる。
暫くの沈黙の後男は口を開き
「………なら、俺がお前を連れて行ったとして、俺に何かいい事でもあるか?」
へたり込んでいる雪奈と目線を合わせるように
しゃがみ込み、問いかける。
その問いかけに困ったような顔をするが
少し考えるか自分には何もない、与えられるものがない「なにも…ない、です。すみません。引き止めてごめんなさい」
俯き、何も言えなくなった。
その様子に男は大きくため息をつくが
ゆっくり手を差し出し「はぁ…仕方ねえな。来いよ、女。このままこんな所いても仕方がねえだろう。今日だけは面倒見てやる」
その言葉に驚き雪奈は顔を上げる、
近くで見る顔はやはり美しく見惚れてしまった。