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DBQ 転生したら弟だった  作者: ああいう
9/11

第9話 妖精大暴走 4

長く停滞していましたが、また書き始めました。

ゆっくりですが行進していきたいと思います。

 女神二人に夕食を振るまった晩から数日経った日、三人で昼食を取っているとボレアスの街から来客が来た。


ボレアス警備隊の隊員さん達が三人、大分急いできたらしく息が弾んでいる。


応対した俺の姿を見た隊員の一人、セクターさんがハアハアと息を整えながら言葉を切り出した。




 「ベル君、大至急エリシアさんを呼んでくれないか。」




 どうやら急ぎの用事らしい、セクターさん達なら知っている顔だし屋敷に上げても大丈夫だろう。




 「とにかく三人とも上がってください、エリシアは今食事中ですしお茶ぐらいなら出せますから。」




 とりあえず3人を椅子を用意して座らせてお茶を出し、俺達は食事をしながら話を聞く事にした。


お茶を飲んで息を整え、一息ついたセクターさんがエリシアに向かって要件を切り出した。




 「実は今日の朝、猟師がコボルトに襲われてな、それでボレアスでも警戒態勢に入ってる。


俺達は隊長に言われてそれを知らせに来たんだ。」




 「コボルトが…、ガルダさんには山に不用意に近づかない様にと伝えてあった筈ですけど、伝わって無かったとか?」




 「いや、そうじゃない。


コボルトが出たのはこの山じゃないんだ、街とこの家との間の川に掛かってる橋が有るだろ?


そこから北に行ったボレアス側の山だ。」




 「そんな所に?、コボルトの集落がある谷からはかなりの距離がありますよ。


あんなところまで来なくても猟に不自由は無い筈なのに。」




 「狩りをする為とも思えないんだ、襲われた猟師が言うには20匹以上いたらしい。」




 「20?、…それはおかしいわ、コボルトは全部で20ぐらいの筈、女子供もいるのに集落全員で狩りをするなんて有り得ない。」




 エリシアが考え込んで会話が中断したタイミングで、会話を横で聞いていたベルが口を挟む。




 「コボルト20以上に襲われたって、その猟師さんよく逃げ帰れましたね、怪我とか無かったんですか?」




 ベルの質問にはセクターさんの隣で聞いていたベルディさんが詳しく答えてくれた。。


どうやらコボルト達は猟師を見つけるや否や数人で遠間から手槍を投げてきて、接近しては来なかったそうだ。


猟師の方も距離があったので槍には当たらず、無傷で逃げられたらしい。




 「俺たちがここに急いで来たのは、君たちに町まで避難して貰う為なんだ。


避難先は隊長が用意するそうだ。」




 「避難と言われても…、社を空にする訳にもいきませんし。」




 エリシアがやんわり断ろうとすると、ベルディさんが口を挟んだ。




 「エリシアさん、何を言ってるんだ?


コボルトが山から下りたら、街とここのちょうど中間地点に出るんだぞ。


ボレアスも危険だけど、ここはもっと危険だ、女子供3人でコボルトの群れに襲われたらどうするんですか?」




 (確かに、コボルトの群れにエリシアやアマナが襲われたら…)


エリシアなら瞬殺だろうな…コボルト達が。


アマナの場合は…全員こんがり丸焼きか氷漬けか、まあ一瞬だな。


となると危ないのは…俺だけじゃないか。




 考えているとベルディさんが立ち上がってエリシアに一歩近づき熱く語り始めた。




 「エリシアさんの腕が立つのは知ってますが、それでも万が一が無いとも限りません。


もしそうなったら俺は…、


幼い兄弟もいるんです、避難していただけませんか?


及ばずながら俺も協力します。街にいる間は不自由はお掛けしませんよ。」




 (ああ、これはあれだ!…ベルディさん、稽古によく来ると思ってたら、エリシア目当ての人だったのか。)


思い返せば稽古の時、好んでエリシアの相手をしたがっていた気がする。


何度叩き伏せられても立ち向かっていってたからドMだとばかり思っていたが…いやエリシアに惚れる事自体ドMの可能性が高いのか。




 「危ないからこそ私達家族がこの社を守らねばいけないんです。


ベルディさんの気持ちはうれしいのですが、やはり私達はここに残ります。」




 にっこりほほ笑んだエリシアがそう言った後もベルディさん達はしばらく食い下がったが彼女の決心を変える事は出来なかった。


ベルとしては別に街に避難しても良かったのだが、そもそも彼の発言権は家族中最も低いので言っても無駄だっただろう。




 その後、三人は「何かあったらすぐに街に避難するように。」と言い残して帰っていった。




 食事を終えたエリシアがお茶を淹れながらベルとアマナに不安そうな目を向けている。


(この子達はコボルトに襲われた時、相手を倒せるだろうか?、相手を殺せるのだろうか?。)


アマナは魔法で戦えるだろう、魔法で相手を攻撃するのは剣で相手を攻撃する事とは違う。


肉を裂く感触も血を浴びる事も無い。


だが、ベルの方は…、多分無理だ。


ベルに生き物を殺せるとは思えない。




 コボルト相手なら剣の腕は足りている。


普通のコボルトと一対一なら遅れを取ることは無い。


けれど実戦では一瞬のためらいが命を落とす要因となりうる。


なんといってもまだ10才の子供なのだ、正直実戦はまだ早過ぎる。


でも、もし襲われたら…。




 「ベル、しばらく剣を持ち歩いて。


アマナもベルと一緒にいて離れないようにしなさい、わかった?」




 「わかった…、兄はアマナが守る。」




 フンス!と両手を胸の前で握るしめるアマナを、ジロリと睨んだベルだが守ってもらうに越した事は無いだろうと思い返した。


(兄の威厳?そんなもん知らん!!)


自分に自分で言い訳した後、ベルはエリシアに聴いた。




 「こんな状況じゃお弟子さんも来ないだろうし、家でじっとしてた方がいいよなエリシア?」




 「貴方たちは家に居てちょうだい、私は湖に行ってくるわ。


全員で集落を放りだして移動するなんてどう考えてもおかしいわ。


コボルト達に何かが有ったとしか思えない、マーリネア様なら何か知ってるかもしれないから。」




 確かに、しかし…




 「エリシア一人で大丈夫か?俺たちも一緒に行ったほうがいいんじゃ?」




 ベルの提案を聞いたエリシアはにっこりと微笑んだ。




 「あらベル、誰の心配をしているの?、むしろ心配なのは貴方達二人なんだけど。」




 考えたら確かにその通りだ、セクターさんの言った事が正しいならコボルト達はほぼ全員でボレアス側に居る、湖周辺よりこの家の方が危険。


(もし、コボルト20以上がこの家に来たらどうするか、俺とアマナが二人しかいない状況で?


…ああ大丈夫だ、コボルトどころかオークやオーガでもアマナの魔法に耐えきれるとは思えない。


むしろコボルト達を殲滅しないようにアマナを止めないといけない位だ。)




 「分かった、一応何があるかわからないから 気をつけてね。」




 ベルの心配に一言返事をした後山に向かったエリシアを見送った後、彼は気づいた。




 稽古が休みだ!






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 コボルト達がボレアス周辺で発見される日の早朝。


湖の女神、大精霊マーリネアが住まうマリア山北側の谷にあるコボルト達の集落が突然何者かの襲撃を受け大混乱に陥った。


彼らが朝食を取った後の団欒に、崖の上から無数の石弾と火炎弾が降り注いできたのだ。




 ルガ=ゲル士族の族長ルバドにとってこの谷での生活は生まれて初めての安らいだ日々だった。




 生まれ育った森には強力な魔獣が生息し、集落が襲われる事も稀では無かった。


時には集落を放棄して逃げ出す事もあった。


挙句、普人族の軍隊に襲撃され生まれ育った森を放棄して逃げ出したのだ。


族長の父が魔の山脈と呼ばれる山々を越えて新天地を求める事を決断した時には、普人達との戦闘で一族の人数は半数以下に減っていた。。


その父も魔の山に生息していたドレイクの群れに襲われた時、族長以下覚悟を決めた戦士達をなかば囮の生贄にして逃げ延び、残った戦士達で女子供を守りつつこの谷までたどり着いたのだ。


父は一族の命運を息子である俺に託して、ドレイクと戦う為に殿に残った。


族長としての責任と戦士の矜持を守った父の魂に誓って、俺は一族を守らねばならない。




 降り注ぐ石弾と火炎弾から身を守りつつ女子供を集め逃げ道を探す。


火炎弾は当たっても少し火傷を負う位だ、だが石弾の方はまずい。


よほど高い場所から落とされたのだろう。急所に当たれば大人の戦士でも危ない威力がある。


(なぜこの村を襲う?普人族が追って来たのだろうか、そんな筈は無い、魔の山を越えてまで俺達を狙う理由は無い筈。)


考えを纏める間もなく降り注ぐ脅威が、最初より幾分収まってきたと見て取ったルバドは一族全員に号令をかけた。


この村は谷の真ん中、北と南は険しい崖となっている。逃げる方向は東西どちらかの出口しかない。




 「全員まとまって東側の谷の出口から一気に抜けるぞ!戦士は全員子供を抱えて走れ、いくぞお!」




 先頭を切って走るルバドを追いかけてコボルト達が走り出した。


目に見えぬ敵はおそらく崖の上から無差別に攻撃をしてきた。


逃げ道の予想できる谷間へ頭上からの無差別攻撃を仕掛けてきた敵がいる。


その敵の投擲攻撃が我々を村から追い出す為であったと仮定すれば、おそらくは逃げ道に伏兵がある。


伏兵が有るとするなら自分が血路を切り開く。


その為にルべドは使い慣れた手槍を握りしめて先頭を駆け抜けた。




 予想した伏兵の攻撃がある訳でもなく逃げ延びたルバド達は、途中に出くわした川に沿って下り、川にかかった小さな橋に辿り着いた。


かなりの距離を逃げて来た、追撃の心配は無い様だ。


闇雲に逃げて来て橋のある場所までたどり着いたが、橋があるという事は普人族の縄張りの筈、このままこの場所にいるのはまずい。


そう判断したルバドは川を逸れて北に見える山の中に隠れる事にした。




 それにしてもあの襲撃は何だったのか、何者の仕業なのか。


ルバド達は魔の山を抜けてあの谷に辿り着いてから普人族や他の亜人達とは全く接点を持っていない。


あのような組織的な襲撃を受ける覚えがないのだ。


斥候をおろそかにした覚えはなく谷周辺に危険な物は無かった、近くに人間の類は住んでいなかった筈である。


だが現実に襲撃を受け谷を追い出されている。


一族を率いて一体どこに行けば良いのだろうか。




 周囲を警戒しながら山中に隠れたルバド達が、子供の数が一人足りないことに気づいたのは正午を大分過ぎた頃だった


途中偶然出会った普人族の猟師を追い払ったり、食料の調達などで忙しく、かなりの時間気づけなかった。


人数が減ってしまった我が一族にとって子供は宝だ、なんとしても見つけなくてはならない。


ルバドは一族を森の中に隠し、戦士数人で来た道を引き返して探し出す決断をした。




 (絶対に探し出す、必ず!)





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