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DBQ 転生したら弟だった  作者: ああいう
8/11

第8話 妖精大暴走 3

  うちの兄、ベルはおかしい。


昔から言動も行動も変だと常々思っていた。


私、アマナリア=ユークスの双子の兄ベルリア=ユークスは大概な事は何でも器用にこなす。


私がもっと小さい頃、多分まだ言葉とか喋れてない位の頃には色々な手伝いとかやっていたように思う、私の面倒を見るとかも。


偶にエリシアの替わりに作る見た事無い料理とかは私の一番のお気に入りと言って良い。


何でも出来る素敵なお兄ちゃんの筈なのに、偶によく出るおかしな言動と行動が,良い所を全部打ち消してしまって残念さしか残らない。




 私から見て兄の一番気に入らない所はやっぱり女の子関係のだらしなさだろうか。


昨日も女神様のおっぱいに鼻の下を伸ばして変な事を口走っていたし、常日頃も妖精達にデレデレで何かと甘やかしては悪戯されている。


(全く、あんな脂肪の塊とか羽虫みたいなやつらの何が良いのだろう?私とお風呂に入っても平然としている癖に。)




 気に入らない事は多いが、もちろん良い所も少しは有る。


修行中に剣を構えてる姿はちょっとカッコいいし、昨日も疲れた私をおぶって山の上まで連れて行ってくれた。


後、優しい所とか、まあ本人にはもちろん言わない。




 一昨日エリシアとおじ様に抱えられて戻ってきた。


回復魔法で治らなかった時は本気で焦って、おじ様に新開発した超加速ストーンバレットを打ち込もうとしてしまった。


エリシアが横にいなかったら殺していたと思う。


何せ新開発のあれは絶対回避不可能の必殺技だ、エリシアでも多分躱せない。


その後は、心配で眠れなくて一晩中兄の寝顔を眺めていた。




 大体兄も兄だ、事情を聞いたら生意気を言ってエリシアとブス(レッカ)を怒らせたらしい。


よわよわのヘタレなんだから大人しくしていれば怪我などしなくて済むのに。


エリシアに勝てると思ったとか馬鹿。


馬鹿には躾が必要だ、そう決心した私は悪くない。




 朝ご飯を食べた後、何時ものようにエリシアとベルがテーブルを片付けそれぞれ自分の仕事に向かった。


アマナがお茶の残りを飲みながらそんな考え事をしていると、ベルの声が裏の畑から聞こえてきた。




 「エリシアー、御白様が来たぞー!!」




 (おばばが?!、)


声を聴くや否やアマナは畑の方向に走り出した。


走り出したアマナの頭の中からはそれまでの考え事はすっかり消えていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 俺が食事を終えて裏の畑に来ると、畑の中央に人影があった。


(誰だろう?)


首をかしげながら近づくと白い髪の老婆の姿が見えた、御白様だ。




 御白様はボレアス地方の豊穣の神様。


農作業をしていると手伝ってくれて、その畑をいつもより作物が出来るようにしてくれる。


神様と言っても偉ぶった所は欠片も無い、本人も「自分は弱い神様だから、」とか「力が弱くてごめんね、」などと言っているぐらい腰が低い、まるで近所のお婆ちゃんの様な方だ。


ボレアスの子供にとってはみんなのお婆ちゃんの様な存在。


いくら近所のお婆ちゃんみたいでも神様が来てくれたのだ、失礼があってはいけないだろう。


一応エリシアにも声を掛けて御持て成しをしなくてはいけない。




 「御白様が来てくれたら今年も大豊作ですね。」




 「今日ぐらいにムロ芋の植え付けじゃろうと思ってなあ、大豊作になればいいねえ。」




 確かに今日か明日ぐらいに植え付けをしようと思って用意してある。


(さすが神様だけあってそんな事もわかるのか。)


「じゃあ種芋を準備してきます。」ベルがそう言って物置に行こうとした瞬間、後ろから何者かに跳ね飛ばされた。




 「おばばーー!!」




 地面に手をついた俺が御白様の方を見ると、屋敷から飛び出してきたアマナが俺を突き飛ばして御白様に抱き着いていた。


(なんでわざわざ俺を突き飛ばすんだ。)


そう思いながら立ち上がると一言言いかけた俺だったが二人の様子を見ると怒りが収まってしまった。


さっきまで不機嫌だったアマナの機嫌が一発で良くなっている。




 「まあまあアマナちゃん元気いいねえ、でもベルちゃんを突き飛ばしたらかわいそうだよ。」




 「おばば、そんな事はいい。仕事は兄がやる。アマナがお茶煎れてあげる。」




 たった一人の兄を後ろから突き飛ばした事をそんな事呼ばわりした妹が、御白様の手を引っ張って家の中に連れて行こうとする。


釈然としないがアマナの機嫌が良くなって何よりなのは確かだ。


いつまでも機嫌悪いままだと、またいつ爆発するかわからなくて危険である。


(全く、なんで御白様にだけはなついてるんだか?)




 「御白様、少しアマナの相手をしててもらえますか?、その間に種芋の準備とかやりますから。」




 「そうかい、じゃあちょっとお邪魔しようかしらねえ。」




 家の中に入っていった二人を見送った後、すこししてベルが準備を整えた頃、エリシアを加えた三人が畑に戻ってきた。


多分家の中で朝のお勤めを終えたエリシアと合流したのだろう。




 「それじゃあムロ芋の植え付けを始めるわよ、アマナは御白様のお手伝いをお願いね。」




 「さっそく始めようかねアマナちゃん、よろしくお願いするよ。」




 「うん、アマナ手伝う。」




 (例年とちがって四人がかりの植え付けだ、割と早く終わるかも。)


あらかじめ数日かけて作っていた畝の上に穴をあけて種芋を植えていく作業を続けて、お昼の休憩時間も併せてそう広くない畑の作業が終わった時にはもう稽古の始まる時間になっていた。




 「御白様のおかげで早く終わりました、本当にいつもありがとうございます。


もし良かったら今日の夕飯をご一緒できませんか?、実は今日は湖からマーリネア様が降りてこられるはずなんです。」




 エリシアが御白様にお礼を言い夕飯に誘う。


神様に食事の必要があるのかは知らないが女神様が食べるのだから御白様も食べられない事は無い筈。




 「おや大精霊様が来るのかね?珍しいねえ。


お邪魔でなければお呼ばれしようか。」




 「おばば、今日家に泊まる?、一緒に寝る。」




 笑顔のアマナが御白様の袖を引っ張っている。


本当にうれしそうだ、基本的に表情が変わらないアマナの笑顔はマジで珍しい。




 ここ数日ろくな事が無かったけど、まあかわいい妹の笑顔が見れたんだ。良しとするか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 夜、ベル君特製フレンチトーストとエリシア得意の野菜たっぷりスープの夕食。


大精霊と豊穣神を加えた晩餐は楽しくて、みんな笑顔。


特にアマナはなついている御白様のおかげでいつになく上機嫌だ。


特製フレンチトーストを2回もお代わりしたマーリネア様も当然上機嫌だった




 「うっうっ、甘い!甘いわ、なんて甘いの!何百年ぶりの甘味。」




 泣きながらフレンチトーストを頬張るマーリネア様の御姿、なんと愛らしい事だろう。


緑髪の美女の恍惚顔、眼福である。


御白様もお代わりこそしなかったが満足していただけたようだ。


こちらは甘味より食後に出したお神酒の方がお気に召したらしい。


頬がほんのりと赤くなった顔でアマナの相手をしてくれている、可愛らしいお婆ちゃんだ。




 食後、御白様がベルを見ながら何か考え事をしている様子にエリシアが気が付き話しかけた




 「御白様、ベルがどうかなされましたか?」




 「ん、いつの間にかベルちゃんの封が解けてたものでねえ。」




 「封?」




 意味が分からない様子でエリシアが御白様に聞き直す。


話題の張本人であるベルにしても、?である。なにそれ意味が分からないよ。


(封?もしや俺の中に何かの封印が施してあってそれが解けているとか?右手とか左目とかに)




 「それって一体どういう…?」




 エリシアが聞き返すと御白様ではなくマーリネア様から答えが返ってきた。




 「ベルリアちゃんの中に眠っていたのよ、本当は生まれた時に気づいたんだけど、意志の無い赤ちゃんの頃だと目覚めさせるのは危険だったの。


だから昨日会った時、私が起こしてあげたのよ。」




 「俺の中に眠ってた?、それって何かすごい力とか能力とかですか…例えば右手とか左目とかに?」




 「右手とか眼とかではないわ、何か意志の様なものだと思うけれど…」




 「そうだねえ、ベルちゃんの魂に何かが憑りついているってのが一番近いかねえ、悪い物では無いとは思うけどねえ。」




 (憑りついているって表現がそもそもやばそうなんだけど、って?いや思い当たる事があるな。


魂に…って所、俺は魂に竜の宝珠を同化させて前の世界から転生したんだ。


二人とも神様なんだから気づいても不思議はない。


意志ってのもジジイもいるし、分からないけど…竜の宝珠だしな、意志ぐらい持っててもおかしくない。)




 「ベル、本人的にはどうなの、何か変った所は無い?」




 「んー?無いかな、別に。」




 「でもマーリネア様がベルの中に眠っていた物を起こしたって言ってるのよ、何か有る筈だと思うけど。」




 (確かに!転生の時じいさんが言ってたな、竜の宝珠を同化させた影響で良い事有るかも…だっけ。


もしかしたら何か特殊な能力とかがあって呼び出す努力がいるのかも。)


ベルは椅子から立ち上がると、おもむろに右手を前に突き出し虚空を掴むしぐさを取り叫んだ。




 「我が右手に宿る大いなる力よ!我が呼びかけに答え顕現せよ!!」




 唐突な異常行動に団欒の場が静まり返る中、「駄目か、じゃあもしかしたらこっちか?」


ぶつぶつと小声でつぶやきながら今度は片目をつむり左手を前に突き出してさらに叫ぶ。




 「我は求める銀河を照らす星々の力よ我が左目に宿れ!今こそ目覚めよ邪眼の力!」




 凍り付いた雰囲気の中、あきれた顔のエリシアがマーリネアに聞いた。




 「ベルの左目に何か感じます?マーリネア様。」




 「多分何も無いと思うわエリシア。」




 「右手にも…」




 「無いわね、何も感じないわ。」




 「はぁ、ベル?私ね、ベルのそういう所嫌いよ!」




 深いため息をついたエリシアの真っ白い視線とセリフに我に返ったベルが周りを見渡す。


エリシアの白い視線、効果は抜群だ。ベルに中ダメージ!


女神達の生暖かい視線、効果は絶大だ。ベルに大ダメージ!


アマナは仲間になりたそうにこっちを見ている、ベルは目を逸らした。




 (なんだよエリシアのあのさげすんだ視線、あれがマーリネア様の視線ならエクステンドできたのに。)


確かにベルの今の行動は傍目には痛々しかったかもしれない。


それは彼が昔、若かりし頃さんざん浴びた視線だった。


だが彼とて歴戦のオタク、耐性はすでにできている。


浴びた後あとで思い返しつつ、さんざん転げまわりながら作り上げた黒歴史耐性であった。


しかし、たった一人のかわいい妹が向ける、あのキラキラした椎茸の様な視線は…。


白い視線を自分が向けられるのは良い、だが妹を悪の道に引きずり込む事だけは兄として避けねばならない。




 「ごめん、何か眠った力が目覚めないかと思って試してみたけど、無かったみたいだ。」




 「そう…これからは気を付けてね。」




 それまで生暖かい視線で見守っていたマーリネアも慌ててフォローに回る。




 「あのねベルリアちゃん、そういうのじゃ無いと思うのよ、多分。」




 「そうじゃねえ、そういう変な力は感じないねえ。まあ必要な時になったら目覚める類の物じゃろう。」




 神様二人にまで気を使わせてしまった様だ。


その後会話は普通の世間話に戻った。ベルはあまり聞いていなかったが。




 ベル的に、一つ腑に落ちない事がある


(なぜだろう、オタクはしょうがないとしても、厨二病は完治してた筈なんだが…)


転生前、死ぬ直前のベルは40代の社会人だったのだ。


少なくとも人前で厨二病全開の詠唱を始める事は無かった。


(肉体年齢に精神が引っ張られるっていう現象かなあ。)


 『いや違うじゃろう、それはおぬしの素じゃ、おぬしの中二病は不治の病、完治などしとらんわ。』


 『うるさい黙れジジイ、取り憑いてたのってお前の事だろ悪霊ジジイ。』


 『言うに事欠いて誰が悪霊じゃ。せっかく説明してやろうと思っておったのに、もう教えてやらんぞこのクソガキ。』


 このジジイ、何か知ってやがる。


 『…おいジジイ 隠すとためにならんぞ、俺を転生させたのはお前だろう、貴様には説明責任がある。』


 『そんなものは無い、まず年配に対する口の利き方を改めよ。

それからジジイではなく,敖廣様と敬称をつけてもらおうか、話はそれからじゃ。』


 この野郎!! 脳内イメージでジジイと対峙してにらみ合う。


 『ジジイ 何を知ってる、まさか貴様の存在が俺のチート能力を阻害してたとかじゃあるまいな。

 もしそうなら貴様を殺してでもこの手に取り戻すぞ』


 『敖廣様じゃクソガキ、やれるものならやってみるがいい、返り討ちじゃ。』


 実物が目の前にいれば叩き潰すところだが、とはいえ脳内に寄生している存在相手に何ができる訳でもない。

しかし、ジジイ相手に下手に出るのも癪に障る話だ。


 ジジイから秘密をどうやって聞き出すかと考えているうちに食事の時間が終わってしまっていた。


 エリシアに声をかけられて我に返った俺は急いで食事を済ませ楽しい食事会は解散となった。


 その夜、マーリネア様は湖に帰り、御白様はアマナと一緒に寝る事と決まったようだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




その夜、湖では妖精達による会議が開かれていた。




 「皆さん集まっていただいてありがとう。


第3回妖精大会議を開催します。議長は私、ベゴニアが務めさせていただきます。」




 「「「ハーイ!!」」」




 「皆さん、今日未明大変な出来事が有りました。


これは我々全員で共有すべき一大事です、今から斥候部隊のライラから情報を報告してもらいますので皆さんご静聴を。」




 「第2斥候部隊隊長ライラです。


北の谷に向かったポーリアに替わってベルちゃんの動向を探る任務を任されました。


そしてたった今、麓の社で重大な事件が起こり、それを伝える為、緊急で戻ってまいりました。


その情報とは…」




 「「「ごくり」」」




 全妖精が固唾を飲んで見守るなか、ライラが言葉を続ける。




 「先ほど、なんと…


大精霊様が特製フレンチトーストをお召し上がりになられました。」




 「「「なんだってーーー!!」」」




 「しかも2回お代わりをされ3枚も…、そしてそのお食べになられている最中の表情たるや、正に恍惚。


泣きながら美味しい、甘い!などと叫ばれていました。」




 「「「なんだってーーーーー!!」」」




 その後、十分以上妖精達の騒ぎは収まらず、興奮した一部の妖精などは今すぐ麓の社まで飛んでいこうとした程であった。




 「皆さんお静かに!静粛に、静粛に願います!」




 声を張って騒ぎを抑えようとするベゴニア達の必死の努力で、ようやく騒ぎが収まった後、情報参謀長エーデルが話し始めた。




 「皆さん、先ほどの情報は私にも衝撃でした、皆さんの気持ちは痛いほどわかります。


ですが騒ぐだけでは我々の目的を達成することはできません。


こういう時こそ冷静にならなければいけないのです。


さて、この情報から2つの事が判明しました。


一つはフレンチトーストなる甘味が大精霊様を恍惚とさせる至高の甘味であるという事。


もう一つはフレンチトーストの材料がまだあるという事です。


特に二つ目は重要です。


これまではフレンチトーストの材料が果たしてまだあるのか、という一抹の不安がありました。


ですが、その不安が今払拭されたのです。」




 エーデルの演説を聞き全妖精の目の光が増し、静かな興奮が妖精達全員に広がっていった。


ある種、異様な雰囲気の中エーデルの後を受けてベゴニアが語りだした。




 「皆さん、聞いての通りです。


この情報で我々妖精たちの手にフレンチトーストが手に入る可能性が大いに高まりました。


今、北の谷へと向かっている斥候部隊の情報が入る次第行動に移りたいと思っています。


では皆さん、ご一緒に。」




 「我々に至高の甘味を我々の手に!」




 「「「「「至高の甘味を我々の手にーー!!」」」」」






 会議後




 ねえリーリ、なんかこれまずくない?




 でもミント、私たち捕まってるから逃げられないよ。




 縛られてる訳でも閉じ込められてる訳でもないのに?どうにかしないと拙いと思う。




 でも逃げたらルール違反で怒られるよ?





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