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DBQ 転生したら弟だった  作者: ああいう
7/11

第7話 妖精大暴走 2

 ベル達の住む社の裏からマリア山に伸びる小道を頂上付近まで登ってゆくと湖にたどり着く。


この地方の守護神である湖の精霊マーリネアが住むこの湖にベル達が登りついたのは、社を出て3時間ほど経ってからの事だ。


それなりの高度があるマリア山の8合目付近にあるこの湖付近は高い木が生えておらず草原となっていて、今の季節は色とりどりの花が咲き誇っていた。


後ろを振り返れば遥か遠くにボレアスの街とその先に広がっている海が見える。






 エリシアに気絶させられたアマナが目を覚ました後、遅めの朝食をとった俺達はエリシアに連れられてこの湖まで登って来た。


幼い頃からそれなりに鍛えている俺はともかく、魔法使いであるアマナはかなり疲れている。


ここまでを手を引いたりおぶったりして連れてきたがさすがに10歳児に山登りは辛かったようだ。


風景を見渡す余裕もない。




 「おーい!エリシア、アマナが限界!ちょっと休もう。」




 俺が声をかけると先頭を進むエリシアが振り向いて二人を励ます様に返事をした。




 「もうちょっとだから、頑張って!」




 アマナの手を取り直して俺が軽く引っ張るとアマナが顔を伏せたまま再びとぼとぼと歩き始めた


下映えの草を踏みしめながらエリシアの後ろを付いていきやがて湖にたどり着いた。


湖を見渡した瞬間、眼に飛び込む光景に思わず目を奪われた。


山の木々の中にぽっかりと空いた草原の中心に円形の湖が有る。


山の深い緑と草原の鮮やかな緑そのコントラストに湖の青が映えて何とも言えない美しさだ。


清らかな水と柔らかな日差し、そして清浄な空気。


ここまで手を繋いで連れてきたアマナの手を放して、誘われた様に湖に近寄ろうとした俺をエリシアが声をかけて静止した。




 「ベル止まりなさい、ここは聖域なのよ。」




 エリシアの言葉で我に返った俺はエリシアの方を振り返る。




 「今日ここに連れてきたのはマーリネア様が会いたい、と言ったからなの。


今日二人にお会いになるわ、失礼の無い様にしなさい。」




 「女神さまが、急になんで…?」




 「さあ?、そんな事マーリネア様に聞かないとわからないわよ。」




 (なんじゃそれ、無責任か!)


エリシアが無責任なのか、女神様がそうなのかはまあ良いとして、某ギリシア神話の例もある。


神様っていうのは元々そんなものなのかもしれない、あのじじいも龍神の皮をかぶったガチオタだし。


この世界は色々な神様が身近に存在するこの世界だが、それでも神様と言う存在は特別で、会うとなればさすがに緊張する。


マーリネア様は俺達の家で代々祀ってきたこの地方の守護神である。


失礼を犯さなければ害を与えはしない筈だ。


それどころか守護してくれるありがたい存在の筈。




 基本的に国家と言う物が無いこの世界では人間は、それぞれの神様の支配圏の中で守護を受けて生活を送っている。


守護神というのはその地方の人間からすれば、国家でいえば国王のような存在だ。


つまり俺達からすれば今から国王に謁見する一般市民の心持ちなのだが、連れてきた張本人である姉のお気楽さ加減がすごくうっとうしい。




 「おい、そんな態度でいいのか、女神様に使える巫女。」




 「私は良いのよ、私にとってはちっさい頃から一緒にいるお姉ちゃんみたいなものなんだから。


それよりほら、二人ともそこに並んで膝をつきなさい、今から御呼びするから。」




 俺は姉に言われた通り持ってきた敷物を地面に敷いてアマナと二人で膝をついた。


エリシアが背を向けて湖の方を向いて祈りを捧げると湖がパァーっと明るくなり女神が姿を現す。




 「お召しにより二人を連れて参りました。マーリネア様。」




 エリシアの挨拶を受けて軽くうなずいた女神はゆっくりと水上を歩き三人に近づき声を掛けた。




 「あらあら!まあまあ!やっと会えたわね、この前会った時はとっても小さかったのにこんなに大きくなって。」




 久しぶりに親戚の子供を見たおばちゃんのようなセリフであった。


だがマーリネアを見て愕然としたベルには聞こえていなかった。


ベルを愕然とさせた理由は女神の容姿である。


少しパーマがかった緑の髪、すらりとした長身、それは彼が前世で恋い焦がれたお方を彷彿とさせたからだ。




 「マールとゼストの子供がこんなに大きくなるのね、人間の子供は成長が速いわ。」




 マーリネアが二人に近づいてアマナに話しかけている間、俺はというとずっと固まっていた。


(踏んでほしい踏んでほしい踏んでほしい…)


ベルはマーリネアを凝視したまま身じろぎひとつしていない。


その姿は明らかに不審者のそれであった。




 ベルが我に返ったのは、視点が定まらないまま固まっている様子を不審に思ったマーリネアが呼びかけてからであった




 「ベルリアちゃん…ベルリアちゃん…?」




 「えっ、はいマーリネア様、ふんでください!!」




 「えっ?」




 殴られた!


ベルがたわごとを発した瞬間、エリシアが駆け寄ってベルの頭を殴りつけていた。




 「いきなり何言ってるの!失礼の無い様にって言ったでしょ。」




 殴りつけた後胸倉を掴もうとしたエリシアを見たマーリネアが庇う様にベルを抱きしめていた。




 「駄目よエリシアちゃん、乱暴しないで。」




 そうやって出来上がったのが、鼻の下が伸びきった10歳児を豊満な胸に抱きしめる美女とそれを真っ白い眼で見つめる姉妹二人というカオスな光景であった。




 数分後、4人が落ち着いた頃にマーリネアの豊満から解放された俺に姉妹からの非難が集中したのは言うまでもなかった。




 「全く、神様に失礼な事言うと罰が当たるわよ、むしろ罰を当てるわよ巫女として。」




 「胸なんかただの脂肪の塊、燃やしつくすべき。」




 (もう勘弁してくださいお姉さま、そしてアマナはやめたげて、それはただの塊じゃないから、夢と希望の塊だから。)


緑髪の美女という俺にとっての理想を目の前にして、つい正気を失ってしまったが、よく見ると優しそうな目つき、柔らかな雰囲気など、彼の理想からは多少の違いがある。


(いかんいかん、緑髪美女を見てつい正気を失ってしまった、俺とした事が。)


気を取り直した俺は改めて膝をつきマーリネアに対し挨拶を行なう。




 「大変失礼しましたマーリネア様、お呼びと聞きベルリア=ユークス参上いたしました。何なりとお申し付けください。」




 白い眼を向け続ける二人の姉妹をあえて無視した俺が膝立ちのまま手を胸に当てマーリネア様に向かってお辞儀を行う。


その姿はまさにジェントルマン、一個の英国紳士の姿がそこにはあった。


俺からすれば夢にまで見た緑髪の美女である、彼女の存在に比べれば有象無象の白眼視などどうでもいい問題であった。




 「まあまあ、さすがはエリシアちゃんの弟ねえ、礼儀正しくてとってもかわいいわ。」




 ニコニコと満足そうな微笑みを向ける精霊神に憧れの眼差しを向けるベル。


二人の姿は知らない者が見たら一片の絵画であった。




 「エリシア、兄のあれ何とかして欲しい。」




 「無理ねアマナ、10年矯正しても駄目だったんだから。


ベルのあれは不治の病よ。」




 (なんだか後ろから雑音が聞こえる、あれって何だよ俺は病気か何かか)


「うるさいよ、マーリネア様の前で失礼だぞお前ら」




 「まあまあ、せっかく来てもらったんだから。喧嘩はやめて。


実はね、ベルリアちゃんにお願いがあって来てもらったの。」




 「お任せください、マーリネア様。このベルリア=ユークス、貴方の為ならこの命すら惜しくはございません。」




 「ちっ!!、死ねばいいのに!」




 毒づいた妹を睨みつけたベルを優しく笑って制しながらマーリネアが言葉を続けた。




 「実はね…言いにくいんだけど…妖精達が噂してたのを聴いてね…私も、その…」




 (恥ずかしそうな女神様、最高です!。)


ベルの心の声を無視してエリシアが問いただすと、どうやら女神様も特製フレンチトーストを食べたいとの事だった。




 「そんな事なら神託で伝えてもらえれば私がお届けしましたのに。」




 「ああ、それだけじゃないのよ。ほらベルリアちゃんとアマナちゃんに会いたかったしエリシアちゃんの身体の事も確認しておきたかったし。


食べたいのはついでなの、ついで。本当よ。」




 そういう事なら絶品のフレンチトーストを作るしかない、まだ材料はあったはず。


とはいえ作った物をどうやってマーリネア様に届ければいいんだ?


冷めたフレンチトーストを女神様に食べさせる訳にはいかない、それは俺の料理人としてのプライドに傷がつく。


俺が材料をここまで運んで作ればいいのか?


まあフレンチトーストの材料なんてそれほどの量じゃないし、それでいくか。




 「では明日にでも私が材料を持ってきてお作りしましょう。かまどは石を積んで作ればすぐできるし材料もまだ残っていた筈です。」




 「あら駄目よベルリアちゃん、子供一人で来るのは。危ないわ。」




 マーリネアの危ないという言葉にエリシアが首をかしげる。


マリア山は女神の住まう聖域だ、危険な魔獣など出る訳が無い。


熊や猪ぐらいは出没するだろうがベルなら、まあ一応逃げ切れるだろう、多分。




 「あの、マーリネア様、ベルならば体力も付いてきていますし一人でも大丈夫だと思いますわ。」




 「うーん、いつもなら大丈夫かもしれないけど、今は危ないの。」




 エリシアが何が危ないのかを問いただすと、最近マリア山の北側の谷間にコボルトの集落が出来てこの山付近まで狩りに来ているらしい。




 「犬人達が北の山脈を越えて来た時は全員ボロボロで見ていられない状態で…最近やっと元気になったみたいなの。


この一帯の山は食料豊富だし、ちゃんと生活していければ幸いなのだけれど。」




 「ちょっと、大丈夫なのか?コボルトって魔物じゃないか。


この山には猟師さんとかも来るし襲われるんじゃ?」




 俺とエリシアが二人で話しているとそれを遮ってマーリネア様が話を続けた。




 「あら違うの、犬人さん達は魔物じゃないの人間なの。


戦争で魔族側だった所為で誤解されてるけど人間なの。


偶に人間を襲うこともあるかもしれないけど、それはお互い様なのよ。」




 どうも誤解があるらしい。


この世界のコボルト、オーク、ゴブリンなどは魔物枠じゃなくて亜人。


20年程前に魔王との戦争があり、その戦争で魔王に服属して人間側と戦ったのが原因で魔物扱いされているそうだ。


この戦争は魔族の王が人間やエルフ、ドワーフ達を相手に起こした戦いで、この魔王を倒した3人の英雄にちなんで英雄戦争と呼ばれている。


ベル達の父親であるゼストやボレアスの警備隊長ガルダもこの戦争に参加して戦っている。




 この戦争を切っ掛けにこの世界唯一の国家を打ち立てたのが三人の英雄の一人、普人族の英雄王アリエルド。


コボルト達は、北の山脈を越えた先にあるアリエルドの国から逃げて来た様なのだ。




 「それは、コボルト達にもマーリネア様のご加護をお与えになる、という事でしょうか?」




 「ええ、そうなの。せっかくこの土地まで来たのだから出来れば幸せになって欲しいもの。」




 「であればボレアスの住民に知らせて事故が起きないようにしないといけませんね。


北側の谷周辺には猟師も含めて立ち入らないように伝えておかなければ。」




 「あの子達は人間を怖がってるからできるだけそっとしてあげておいて欲しいの。」




 土地の守護神であるマーリネア守護すると宣言した以上、反対する事はできない。


ボレアスの街から彼らの住む谷まではかなりの距離もありおそらく何の問題も起こらない筈という事らしい。




 「だからね、麓まで私が出かけようと思うの。」




 「ファッ?」




 「マーリネア様が社まで?」




 「あら、この前も麓まで降りたのよ、ベルリアちゃん達が生まれた時。


マールとゼストがびっくりしてたわぁ。」




 「だって、熱々でふわふわでとろとろでしょう、楽しみねえ。」




 「ですってよベル、全部任せるから自分の言葉の責任は自分で取りなさい。」




 エリシアに丸投げされたが俺にとっては望む所だ。


ベルリア=ユークス、10才は緑髪の美女の為ならばいつでも死ねる男であった。




 その後、エリシアとマーリネアが何やら相談を始め、暇になりあたりを見渡したりしていたベルにマーリネアが声を掛けた。




 「ベルリアちゃん、なにか付いてるわよ、取ってあげるからちょっとこっちに来て。」




 (えっ?何にも付いてないような?)


不審に思いながら俺が近寄るといきなりマーリネアに抱き着かれてしまった。


ギュっとベルを抱きしめたまま、「少し動かないでじっとしててね!」と、耳元でささやかれた俺であったが、言われるまでも無くその豊満に挟み込まれて身動き一つ取れない。


結局何が付いていたのか説明は無く意味が分からなかったが、その所為でなぜか機嫌が悪くなったアマナをなだめるのに忙しくなり、ベル達が山を下り帰り着いた時にはもう日が暮れかかっていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 夜、ベル達の住む社にコソコソと忍び寄る影が三つ。


陰達は蝋燭の光が漏れる窓から中を伺っていた。




 部屋の中では家族三人が夕食を取りながら会話を楽しんでいる。




 三つの影の内、先頭の一人がハンドサインで指示を出すと、背後の草むらから音も無く追加で二人が忍び寄ってきた。


後ろから来た二人は、目配せした先頭の影の合図で社の裏に回り込む。


二人は裏口から社に入り込むつもりの様だ。




 部屋の中では昼間のアマナのマーリネアに対する暴言と態度をエリシアがたしなめていた。




 「アマナ、女神様の何が気に入らないの?さすがにマーリネア様に使える巫女としてあの態度は看過できないわよ。」




 「…胸!!」




 (胸って…いくら自分が平坦だからって、相手は女神様だぞ。)


横で聞いている俺に言わせればそれは八つ当たりとか逆恨み以外の何物でもない。


口には出さないが…。




 「貴方ね…そりゃ女神様のあれは凄いし、うらやましいとは私も思うけど…相手はマーリネア様なのよ。」




 「一番気に入らないのは、兄の鼻の下。」




 「なっ!…伸びてねえし、鼻の下伸ばしてないから。」




 「伸びてた。」




 「あー、確かに伸びてたわねえ、だらしなく。」




 「無礼なのは兄の方、アマナは悪くない。」




 「…そうね。」




 エリシアの同意を得てどや顔のアマナとエリシアの白い視線が俺に集中した。


(なんだよ、矛先は結局俺かよ。)




 早急に話題を変えなければ、このままいつも通り俺が責められ続ける流れになる。


そう判断したベルが別の話題を切り出した。




 「そんな事より良いのかよエリシア、コボルトの集落の件、拙くないか?」




 「拙いわよ、数が少ないうちは兎も角、集落が大きくなったら必ずボレアスの住民にも被害が出るもの。」




 俺の意見に、少し考えてからエリシアが同意した。


コボルトやゴブリンなどは普人族より寿命が短い分世代交代が速く人口の増え方も速い。


いくらボレアスと集落の距離が離れていても、ボレアスにも猟師や木こりがいる。


どう考えても先々問題が起きるのは目に見えている。




 「どうすんの?」




 「どうもしないわ、マーリネア様が認めてるんですもの。


ボレアスの皆に伝えて気を付けてもらうしかないわね。


そもそも、ボレアスの街周辺が危険な魔獣が出なかったりや災害が起きたりしないのはマーリネア様の加護のおかげだもの。


みんなには我慢してもらいましょう。」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 ベル達が就寝した後の湖近くで妖精達の大会議が開かれていた。




 「皆さん集まっていただいてありがとう。


第2回妖精大会議を開催します。議長は私、ベゴニアが務めさせていただきます。」




 「「「ハーイ!!」」」




 妖精達全員の返事と拍手が鳴りやむまで待ってベゴニアが語り始める。




 「この会議は麓のベルちゃんに甘味を要求する作戦の進境状況を全員で共有するための会議です


まずベルちゃんの弱みを握…役に立つ為にはどうすればいいか。


そのためにあらかじめエーデルを情報参謀長に指名して動いてもらってます。エーデル?」




 「ハイ、情報参謀長のエーデルです。皆さんよろしくお願いします。


皆さん、戦いは強いだけでは勝てません。


フレンチトーストという至高の甘味を、我々が手に入れるという大勝利を得るにはどうすれば良いか。


それにはまず情報です。どうすればベルちゃんの役に立つか、という情報を手に入れなければいけません。


そのために私は精鋭12名からなる斥候妖精部隊を組織して麓まで送り出しました。


そして先ほど斥候を終えた精鋭達が帰還しました。


斥候部隊!前へ!!」




 「「「「「「「「「「「「ハイ!」」」」」」」」」」」」




 声を揃えて返事をして、前に進み出た12名の妖精達の先頭にいた一人が、もう一歩前に出て敬礼し報告する。




 「精鋭斥候妖精部隊隊長、ポーリアです。


我々斥候部隊は麓の社まで秘密裏に潜入し情報を入手してまいりました。


入手した情報は2つ、どちらも索敵目標であるベルリア=ユークスに関する有力情報です。」




 「一つは最近北の谷にやってきた犬人族に関して、街の人達が襲われるのではないかと心配している事。


これに関してはエリシアお姉ちゃ…姉のエリシアとかなりの時間話し合っていました。」




 「なるほど、これは有力情報ね。犬人達をなんとかしてあげればベルちゃんに恩を売ったことになるわ。


エーデル!犬人達の集落の情報を集めなさい。」




 「ラージャ!、麓の情報集めと並行してもう一つ斥候部隊を編制して北の谷に向かわせます。」




 「ポーリア、もう一つの情報は?」




 「ハイ、これはベルちゃんが寝る前にアマナちゃんに話していた話を有志二名が決死の覚悟で家内に潜入し入手した有力情報です。


ベルちゃんはどうやらエリシアお姉ちゃんに毎日いじめられているようです。


我々、湖の妖精の力でエリシアお姉ちゃんにいじめを辞めさせることができれば特製フレンチトーストは我々の手に入ったも同然だと思われます。」




 「「「「ウォーーッ!」」」」」




 言い終わると同時にコブシを突き上げたポーリアに周りの妖精達が歓声を上げる。




 「「「「いじめダメ!絶対!!」」」」




 パチパチパチという拍手と共に起こったシュプレヒコールであったが、議長であるベゴニアの絶叫で一斉に静まり返った。




 「駄目ーーっ!!」




 見るとベゴニアの様子が明らかにおかしい、両手で顔をおおい体が小刻みに震えていた。




 「駄目なのよ、エリシアちゃんに手を出してはいけない。


優しかったエリシアちゃんはもういないのよ。


ああ、なぜ変わってしまったのエリシアちゃん、昔はあんなに一緒に遊んだのに…。優しかったのに。


なぜ貴方は鬼になってしまったの…。」




 下を向いてぶつぶつと独り言を始めたベゴニアが、驚いたミントに肩を揺すられて我に返ったのは数分経ってからだった。




 「失礼しました。今の意見に関しては議長権限で却下します。


これは湖の妖精全体の安全を考えての事です。


今後は最初の情報に基づいて犬人達の情報収拾を優先して行います。


その情報が集まり次第、次の行動を決めますので、そのつもりで行動してください。」




 「皆さん、頑張って特製フレンチトーストを手に入れましょう。」




 議長であるベゴニアのおかしな態度で首を傾げる者もいたが、盛り上がった全体の雰囲気を壊す訳にもいかず合唱に加わり返事をしていた。




 「「「「ラージャ!!」」」」








 会議後




 ねえリーリ、これ何が起こってるの?




 えっミント、軍隊ごっこでしょ。




 軍隊ごっこ、それは妖精達が見よう見まねで軍隊になり切って行う至高の遊びであった。



妖精さんのリーダー、ベゴニアさんと湖の妖精四天王


ベゴニア:湖の妖精達の姉貴分、何やらエリシアと因縁らしきものがありトラウマを抱えているらしい


エーデル:湖の妖精中、一、二を争う知性派


ポーリア:湖の妖精中、一、二を争う毒舌。


ライラ:ベゴニア大好きっ娘


ランサス:ツンデレ

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