第8話:転入生…?
時間に余裕があったので、早めにUPすることができました。
ぜひ読んでください!
また、ご意見・ご感想をいただくと、ホントに原動力になります。時間があるときにでも書いていただけると嬉しいです。
お風呂に入ろうと思った…。
だが、気づいた。
「しまった…重要なことを思い出した…。俺、女じゃん……。」
何度もそのことを忘れる俺って…。
その時だ。
携帯電話が鳴る。
プルルルル、プルルルル―――。
ポケットから、徐に携帯電話を取り出す。
「誰だろう……?」
ピッ
「もしもし…?」
『はろーッ。さっきぶりー!今、何してたー?』
美羽からの電話だった。
素直に答えることにしよう。
「今お風呂入ろうとしてた……。」
『やっぱりッ。今からまた詠人の家行くからよろしくッ!』
「え?ちょ…何で――――。」
プツッ―――。
俺が全部言う前に電話を切られた。
そして、1分後……。
ピンポーン―――。
「来たか……。」
「おひさッ!」
案の定、美羽だった。
「お、おう。で、どうしたんだ……?」
「いやー、大したことじゃないんだけど…。」
美羽が、ちょっと照れながら言ってくる。
「何で照れてるんだ…?」
「いや、あの…ね…。一緒に…お風呂に入ろうかと思って…ねッ…!」
「あー、それぐらいのことか………。……って、えぇー!?」
お、お風呂!?
年頃の男女…いや、今は女か…。
しかし、一緒にお風呂って…。
「美羽っ!仮にも俺はつい最近まで男だったんだぞ……!?何で一緒にお風呂なんか―――。」
「気にしないッ、気にしないッ!これは決定事項なんだよッ!裸の付き合いって重要だと思うし…。さぁ、諦めるべしッ!」
そう言うと、美羽は俺の体を引きずってお風呂場に連行した。
ど、どうしよう……。
「さぁ、脱いだッ脱いだッ!」
美羽がそう言って、俺の服を脱がし始める。
こいつには恥じらいという心はないのか……。
「お、おまっ…。恥じらいの心持ってないのか…!?」
「…。そ、そんなに嫌だった…!?」
美羽が泣き始める
「くっ…!?わ、わかったよ。入ればいいんだろっ!じゃあ先に入ってる…。」
そう言って、俺は急いで脱いでお風呂場に入った。
「………。かかった…。」
美羽は泣きまねを辞め、自分もお風呂場に急いだ。
「ほらーッ、つめてッ、つめてッ!」
そう言って、俺の入っている浴槽に美羽が入ってくる。
一応タオルを巻いているとはいえ……。
「………。」
思わず顔が赤くなる。
その俺の顔を見て、美羽が俺の体を触ってくる。
「えぃッ!」
「ひゃっ!?」
いきなりのことで、変な声が出てしまう。
「ちょ…美羽、何してるんだよっ!?」
「……?何って、スキンシップ……?」
「お、お前なぁ……。」
「…………。」
突然、美羽の表情が今まで明るかったのから変わった。
「…美羽………?」
そう言葉をかけたときには、美羽が俺に抱きついてきた。
「え…、えー!?」
突然のことで俺は驚いた。
何で抱きついてくるんだ…。
「ど、どうしたんだよ……!?」
「無理しなくていいんだよ……?」
「っ………。」
その言葉を聞いた瞬間、言葉が出なかった。
きっと、俺は心のどこかで無理をしていたんだろう…。
そして、また美羽が口を開く。
「私知ってるッ。詠人は強い子だってこと…。でも、幼い頃から一緒だったからかな…、わかるんだ……。今の詠人は、心のどこかで誰かに助けを求めてるってこと…。」
それを聞いて、その通りだと思った。
そして、彼女が話す言葉は、心が安らぐような気がした……。
「でも、大丈夫ッ!私は、いつも詠人の傍にいるから……。」
「美羽………、お前いい奴だな……。」
「ふふふッ。当たり前でしょッ!何年、幼馴染みをやってると思ってるのー…?」
「そ、それもそうだな…。腐れ縁って奴で、俺たちは繋がってるもんな。」
「そうだよッ!だから、何かあった時はいつでも頼ってねッ!」
「わ、わかったっ!何かあった時はお願いする。」
「少し気が晴れたかな……?じゃあ、上がろうッ!」
そう言って、2人でお風呂を上がった。
「もう11時過ぎてるから、帰るねッ!」
「おう、明日なっ!」
そして、美羽は自分の家に帰っていった。
「今日のあいつには感謝しないとな…。」
そう思いながら、ベッドに転がっていると、いつのまにか寝てしまった。
翌日……。
ピンポーン、ピンポーン――――――。
「…!?」
またチャイムで目を覚ました。
「誰だろう…。」
急いでドアに向かいドアを開ける。
ガチャッ―――。
「どなた様ですかー…?」
そこには、お馴染みの奴が立っていた。
「おすっ、愛しの親友、詠人!今日も―――――。」
バタンッ―――。
朝から変な奴見て、思わずドアを閉めてしまった。
すると、ドアの向こうから声が聞こえてくる。
「ちょっ、おまっ…。今日はお前の女物の制服持ってきたんだよ。」
ガチャッ―――。
真一から俺の制服を受け取る。
「ありがとう…。じゃあっ!」
バタン―――。
「おまっ…!ひどい扱い…。親友のために、わざわざ制服持ってきてやったのに……。」
「俺は、昨日のことを許した覚えはないぞ。」
昨日出来事とは、真一が俺の部屋で俺を襲ってきたことだ。
「あ、あれは、ちょっとした出来心で…。まぁ、制服着てみろ。サイズ合ってるか確認したいんだ。」
「あっ、あぁ……。」
そう言って、試しに着てみることにした。
「こ、これは………。」
俺は驚いた。
制服を着てみると、何故か俺の体にジャストフィットしたのだ……。
「真一、お前っ!なんで俺のスリーサイズ知ってるんだよ!?」
「ふふふっ。愚問だな!俺をなめるなっ!目で見ただけで大体のスリーサイズは分かるが、昨日のことで完璧に見極めたのだっ!」
ガチャッ―――。
「こ、この変態がっ!」
そう言って、俺は真一の顔に右ストレートを入れてやった。
バタンッ―――。
「いってぇ……。ひっでぇなぁ……。せっかく持ってきてやってんのに…。」
「それはありがたいが、お前の変態を直すために手を貸してやってるんだよ。……というか、何でお前、女物の制服持ってんだ…!?」
「あれ……?言ってなかったっけ…?俺のばあちゃん、校長だぜ。」
「えっー!?マジかよ……。」
なるほど、理解した。
あの校長あっての真一…。
真一あっての校長だな……。
「あー、それとそのばあちゃんからの伝言があった。」
「な、何だ……?」
嫌な予感がする…。
「お前、転入生扱いにするってさ。」
「…!?」
「まぁ、仕方ないよな。いきなり男から女になったって言っても、みんな驚いて信じないだろうし。幸い、お前のこと気づいてるのは俺とあの3人、それに校長だけだしな。」
ごもっともな意見だ…。
「わ、わかった…。悪魔でも女で通せということだな…。」
「まぁ、そういうことだな…。じゃあ、俺ちょっと用事あるから先に学校行くわ。愛してるぜ、詠人。」
そう言って真一は走っていった。
「最後に気持ち悪い言葉残していくなよ……。」
そう思いながら学校の準備を済ませ、家を出ることにした。
「さぁ、隣の美羽を誘って学校行くか…。」
ピンポーン―――。
ガチャッ―――。
ドアが開く。
出てきたのは美羽のお母さん、雅さんだった。
「あら、詠人くん。おはよう。」
「おはようございます。」
相変わらず優しそうな人だ…。
そして、雅さんがちょっと驚きながら口を開く。
「あら……、本当に女の子になってる…。可愛い…。でも…、ちょっと残念ね…。うちのお婿さんに迎え入れるはずだったのに…。」
「そ、そ、そうですね…。」
そういう計画があったのかと、驚きながら本題に話題を移す。
「と、ところで、美羽はいますか…?」
「ごめんなさいっ。美羽はもう家出ちゃったの。」
「あっ、そうですかぁ…。わかりました…。じゃあ、すみません、失礼します。」
「いってらっしゃい。」
そう言って、雅さんは見送ってくれた。
「いつも、俺の家に迎えに来てくれるのに珍しいな…。」
そう思いながら、まぁ仕方ないと思いつつ、学校への通学路を進む。
学校への道のりは、そこまで遠いものではない…。
歩きで10分っていうとこだ。
歩いて数分後…。
学校の校門が見えてきた。
そして、同じ学校の生徒の姿が、ちらほら見えてくる。
その中を颯爽と歩いていくが、あることに気づく。
「ぅ………。」
何故か周りから視線を感じる。
すると、話し声が耳に入ってくる。
「ちょっと、ちょっと、あの人見てっ!」
「え…?うわっ!?可愛い……。て、転入生かな……?」
可愛い……?
誰のことだ…。
そう思い、その話し声の方向を見る。
「っ!?目が合っちゃった…。」
「こ、こっち見てるよ!?か、可愛い…。」
……………。
か、完全に俺のことだな…。
「と、とりあえず…女の子で通さないといけないし、適当に笑っとくか……。」
そう言って、俺は笑顔でそちらを見た。
「うはっ…、キュン死にしそう……。」
女の子なのにキュン死にって、大げさな…。
そう思いながら、学校へ入る。
それから転入生ということで通すため、職員室に向かうことにした。
職員室に行く間も周りから多くの視線を感じたが、気づかないふりをしながら何とか職員室に着いた。
そして、担任のところに向かい、ホームルームが始まるまで一緒に待つことにした。
「これからよろしくお願いします。」
「よろしく!」
適当に挨拶を済ませる。
しかし、担任が口を開く。
「校長先生から聞いてるが、朝倉詠人の双子の妹なんだって…?今までどこに?それと詠人の方は、いきなり転校して行くなんて、何か聞いてないか…?」
「……!?」
校長……。
どういう設定にしてるんだよ…。
し、しかし、適当に誤魔化せなければ…退学になってしまう…。
仕方ない……。
「は、はい、双子の妹です。私はこの前まで海外に居ました。そして、最近帰ってきまして、兄の事は家庭の事情でちょっと言えないんです…。」
最終兵器、家庭の事情…。
これで防げるはず。
「そうか…。家庭の事情なら仕方ないか…。あと、――――。」
キンコーン、カンコーン―――。
担任の言葉が全部出る前に、チャイムが鳴る。
「おっと、ホームルームの時間だな。じゃあ、行くか!」
「は、はい。」
何とか誤魔化せたようだ…。
後はクラスの連中か……。
ガラガラッ――。
「こらー、お前ら席に着け!」
そう言いながら、担任は先に教室に入っていった。
俺は廊下で待たされている。
「あぁ……、何て挨拶しよう……。というかキャラを作らないとまずいな…。」
自己紹介が近づいているため、心臓がドキドキしてきた。
「と、とりあえず、下手なことは離さないようにするか…。ていうか、みんなにバレたりしないよな………?」
そう考えていると、担任の声が聞こえてくる。
「おーい、入れー!」
覚悟を決める。
ガラガラッ――。
コツ、コツ、コツ、コツ、コツ―――。
女の子らしく歩き、担任がいる教卓の隣に立つ。
そして深呼吸をして、話し始める。
「初めまして。朝倉千尋と申します。先日、海外から帰ってきまして、生活に少々慣れない部分がありますが、みなさんこれからよろしくお願いします。」
よし、難なくこなしたはずだ。
「………。」
クラスのみんなは、沈みきっていた。
まさか、バレたのか……?
しかし、すぐにある事が起きた。
「よっしゃーーーーーーーーー!可愛い女子キターーーーーー!」
そう言いながら、男子全員が拳を上に突き上げ喜んでいる。
一方女子は…。
「か、可愛い…………。」
そう言いながら、こちらを潤んだ目で見ている。
何とかバレてないようだ…。
というかこいつらがアホで良かった……。
「じゃあ、とりあえず桜木の隣に座ってくれ。」
「は、はい。」
美羽の隣か……、良かった…。
色々と助けてくれそうだ…。
「詠人、上手くできたねッ!」(ボソッ)
「お、お―――。う、うん……。」
危うく素の言葉が出そうになる。
女言葉で通すのきついな…。
まぁ…これからが本番か………。
第9話へ続く。
次回UPは12月の頭を予定しています。(注)遅くなったり早めにUPされることがあります。)
他の小説「Brave Heart」を公開しました。