第5話:修羅場…ではないです。
第5話です。
「ま、まさかッ……。女の人を連れ込んでるなんて……。」
ふざけながら悲しむ美羽…。
それにつられて、他の2人も悲しむ…。
「学校早退されてたから、心配しておりましたのに……。」
「……がっかり………。」
蘇芳さんの姿を見るなり、一斉に非難の声が飛び交う。
「へ、変な言いがかりつけるなっ!」
「あら?あら?修羅場かしら…?ふふっ…。」
蘇芳さんは、クスリッと笑いながら、この状況を楽しんでいる。
と、とりあえず、この状況を打破しなくては……。
「お、お前らっ…。言い分は分かるが、初対面の人に失礼だろう!挨拶ぐらいしろよっ。」
「そ、そうですね。お初にお目にかかります。楓と申します。」
「…凛です。」
「さっきは、ごめんなさいッ。そして、はじめましてッ!美羽といいます。うちのちびっこが、いつもお世話になってます……?」
「誰がちびっこだ……!」
「詠人様照れて……、可愛い…。」
「…160センチ=詠人=ちびっこ……なの………?」
「ち、違うっ…!」
ペースに乗せられっぱなしだ……。
そんな中、蘇芳さんが口を開く。
「こちらこそ、はじめまして。詠人くんの妻の蘇芳です。」
「……!?」
その言葉を聞いて、3人が固まる。
「ちょっ、蘇芳さん冗談はそろそろやめてくださいっ!」
「あら…?そう…?3人の反応があまりに面白くて…つい…。」
完全にからかわれてる…。
しかし、とりあえずこの状況を3人に説明しなくては…。
「今の状況を説明するけど――――。………っ!?」
説明に困ってしまった。
なぜならば、蘇芳さんが魔法使いで、さらに俺が狙われているという話。
話しても…、信じてくれるだろうか……?
そういう不安にかられていた。
それが表情に出ていたのか、楓が口を開く。
「詠人様…。無理にお話しなくてもよろしいですよ…?」
「え……?」
「そ、そうだねッ!詠人、無理に話さなくても大丈夫ッ!」
「詠人…。……詠人が話したいときに話して……。」
気を使ってくれている。
いつもはあんな調子だけど、ホントは優しい……。
そんな優しい友達に感謝しながら俺は言う。
「わかった……。というか、ごめんなっ!今は説明が難しくて…その……。でも、いつかきっと話すから!」
「うんッ!」
「はいっ!」
「…了解っ。」
3人が納得する。
それを黙って見ていた蘇芳さんが、俺に耳打ちする。
「あの話の続きは、また後日するわね。」
そう囁き、彼女はドアの方に歩いていった。
そして、
「じゃあ、私はこれで失礼するわね。みなさんまた会いましょう。」
そう言って、彼女は家を出て行った。
「不思議な方でしたね…。」
「…みすてりあす……。」
「き、気になるッ……。」
そう話してる3人と俺で、彼女の後ろ姿を見送った……。
さて……、こいつらの来た理由を尋ねることにする。
「そういえば話変わるが、何で俺の家に来たんだ…?」
「早退なされてたので、心配して来たのですけれど、その他には…。」
美羽が口を開く。
「今日詠人の家に来たのは、みんなで作戦会議するためだよッ!」
「え……?」
「…詠人……、女になったから………。それの……。」
その言葉で、自分の日常生活の問題を思い出す…。
「そ、そうだった……。朝からのドタバタで、考える暇なかったな……。」
「ふふんッ。私たちが来たからには、もう大丈夫だよッ。ワトソン君ー!!」
「だ、誰がワトソン君だっ……!」
何を根拠にこんな自信があるのだろうか…。
そう思っていると、凛と楓が口を開く。
「…ワトソン君…、疲れた……。」
「私も疲れましたわ……。」
その言葉を聞いて、気づけば、みんなずっと玄関に立ちっぱなしだった。
「わ、悪いっ!みんな、上がってくれ。」
慌てて、そう言って3人を家にあがらせた。
第6話へ。
お疲れ様でした。
第6話へ続きます。