19話
温かく見守ってくれると幸いです。
射出された光の弾丸が、
目標物の木へ向かって真っ直ぐな軌道を描く。
「当たれっ…!」
当たる!一瞬そう思った。
そう思ったんだが…、
「残念……」
二人で確認しに行った木の傍で凛がそう呟いた。
目標の的には当たっていなかった。
的から左へ数十センチずれた所に痕跡がある。
「惜しかった…ね…」
「そうだね…」
まぁ、そうですよね…。
素人が結構近い距離とはいえ、当てるのは難しいってことか。
でも、ちょっと悔しいな…。
そんな顔をしていたからか、凛が続けて言葉を発する。
「筋は…いいと…思う……」
「本当に!?」
「うん…大抵の人は…銃の…反動で…もっと外れる………」
どうやら普通は反動で身体が動いちゃうらしいな。
「それで…どうしても……狙いとは…違った…方向に………」
「なるほど。」
そういえば撃ったあと、銃声に驚きはしたけど身体はブレなかったかな…?
よし、次はもっと身体の軸を意識してみるか。
「だから…次も…気をつけて…やって…みて………」
「うん、わかった!」
そう言いながらまた一人で元の位置へ。
凛は木から少し離れた射線上に入らない場所に立っている。
それを確認し、俺は銃をまた構える。
目標へ全意識を集中して、
撃つ。
「外れたか…」
目視で確認すると、
また左に外れたがさっきより近づいているようだった。
「すぅー…はぁー……。…よし、次だな…!」
深呼吸をして気を取り直す。
そして、また目標へ意識を向ける。
「次こそは…!」
そう言いつつ指をトリガーへ。
引くと同時にまた銃声がする。
放たれた射線は木の方へ。
「やったか!?」
が、また外れた。
次は左手ではなく右の方へ外れてしまったようだ。
右へと意識しすぎたか…。
次の射撃に向けてどうするべきか考える。
しかし、そこであることに気付いた。
「あれ…?」
なぜか身体がだるい。
「汗も…?」
上から着ていた服も汗でびっしょりになっていた。
「何だこの気だるさ…」
風邪にかかったような感じに似ていた。
それに気付いてか、凛が近寄ってきた。
「どう…したの…?」
「いや、何か身体がおかしい…。」
「………。」
凛は無言で俺のことを見回す。
そして、
「楓……!」
遠くに声をかける。
すると、PCを見ていた楓が慌てて近寄ってきた。
「すみません、気付くのが遅れました!」
「やっぱり……」
「本当にごめんなさい。」
「え!?どうしたの?2人とも…」
二人の会話が気になり尋ねる。
「詠人様。単刀直入で言いますと、今あなたの魔力が尽きそうです。と言っても尽きた所で一応大丈夫なんですが…」
凛もコクコクと頷いている。
続けて楓が説明する。
「個人個人によって尽きた後に何かしらの副作用がございます。」
「副作用…?」
よく治療薬とかで聞く言葉だな…。
「はい。例えば人によっては、全身筋肉痛。また他の人は頭痛など。あくまで例なんですけどね…。そんな中、魔力が尽きても普段通りという方は極めて少ないです。」
「つまり……詠人も……何か…あると…いうこと………」
「なるほどな…。」
この説明と今の俺の現状。
そうか…。
「俺の場合は、気だるさや脱力感…風邪みたいな症状って所かな…?」
「そう…みたいですね。」
と楓が返す。
「でも、これってこのまま続いたりするの?」
そう言いつつその場に座り込む。
「ちょっとこれはきついな…ふぅ……」
久しぶりに風邪ひいたような気がするな。
まぁ、気がする程度なんだけどね。
実際風邪にかかったわけではないし…。
「大丈夫……」
「…?」
「一晩…寝れば…その症状は……治る…はず……」
「そうなんだ。よかった…」
これが連続で続いたらさすがにシャレにならない所だったな…。
「あっ、でも!一晩寝たら魔力って全回復するの?」
ゲームのRPGとかで宿屋で寝たら全快!ってよくあるよな。
「ううん……。全快は…しない………」
「え…!?」
「んー……。詠人は……特別………?」
特別?
「私の…場合は…全快に近い………。」
「………?どういうこと?」
「詠人様、それは私が説明しましょう。」
「うん?」
「詠人様は特別という表現は合っています。それは、魔力が膨大すぎることです…。」
「っ!?でも!俺の魔力は女の子になったことで減少したはずじゃ…!そう蘇芳さんも言ってたし…」
「そうですね。でもその減少した後でも膨大なんです。」
「なんだって…!?それならまたあの黒い影が来るのかな…!?あいつらって大量の魔力を持つ人を狙うんだろ!?」
ふと、不安になって声を荒げてしまう。
銃の扱いを訓練しているとはいえ、自衛能力が整う前に来られたらおしまいだ。
今は凛がいる。
きっと守ってくれるだろう。
また、俺は凛を信用もしている。
だけど、彼女も四六時中俺に付きっきりで護衛ができるわけではないだろう。
「大丈夫……。まだ…来ない…」
そう凛が答えた。
「詠人は…一回…魔力を…たくさん…使ってる………」
「たくさん使った…?」
「襲われた…とき……盾………」
あぁ…あれか…。
凛が助けてくれたときに出た盾…。
しかしあの盾無意識に出たんだよな。
そんなに大量の魔力を使っていたのか…。
「なるほど…。理解したよ…。」
そう俺が発言すると、楓は中断してしまった話を続ける。
「たくさんの魔力を一晩で回復すると事例は今の所ありません。個人差はあるようですが、詠人様もしばらくは大丈夫でしょう。」
そう言ってくれたことで俺は安堵した。
「じゃあ、しばらくは襲われないということか…」
「うん…それまでに……力…磨く………」
「りょーかい!」
俺に今できることは力をつける一択だな。
頑張らなきゃ…。
おっと、そういえばあと一つ疑問があったな。
「それにしても2人とも。よく俺の魔力?について分かるね…?」
俺が質問すると、
「モニターしてましたから」「実際に…目視で…見えるから………」
と、楓と凛が一斉にそう答えた。
「私は凛ちゃんのようにはっきり魔力は見えません。しかし、これが…」
と言いつつミニノートPCを持ち上げる。
なるほど。
凛はそんな気がしてたが、楓がPCを覗いてたのはそういうことだったのか。
これらのやり取りの後、俺達は帰路についた。
俺の体調が芳しくなかったこともあるが、訓練は積み重ねということも理解していたからだ。
そして、帰り道。
楓とは途中で別れ、凛と二人で歩いていた。
体調は少し良くなっていたが、一応送ってくれるらしい。
「それにしても訓練って難しいね…」
「当たり前……これからも……頑張る………」
「わかってるよ。ところで、今日の訓練で構え方習ったけどさー」
「………?」
?マークを浮かべながら凛が首を傾げる。
「何かこう構えづらいんだよねー…」
「構え…方は…あってる…。何で……だろ………?」
確かに一応とはいえ、凛は妥協点とはいえ認めてくれた。
じゃあ、なんでだろ…?
そう思いつつ自分の身体を眺める。
こう普通どおりの身体だよな…。
うん、普段通りだよな…。
「あれ…?普段通り…?」
銃を構える体勢をとってみる。
自分の二の腕あたりに妙な膨らみを感じた。
「あっ…」
「どう…したの……?」
なるほど。これか…。
「原因が分かったよ…。この胸が原因だ!」
と堂々と宣言する。
確実にこれだ。
男の時の感覚でいたけど、俺今女の子だもんな!
これは思わぬ盲点だったな…。
「………。」
しかし、宣言をしたものの凛は下を向き無言だった。
「?凛、どうしたの?」
「………。」
まだ無言のままだ。
よく見ると肩をプルプル震わせていた。
「おーい…?凛…?」
「………。」
「…?」
なぜ反応しないんだろう。
「詠人…!!!!!!」
「っ?何!?」
顔を上げた凛は顔を赤面していた。
「そんなに……!自慢……したいか……!!!」
「え!?」
「この……ばか………知らない………!!!」
そう言って、凛はこの場からダッシュで立ち去って行った。
「いきなりどうしたんだろう…。たかが胸の話だよね…?」
そう胸の話だ。
むね……
「あっ…!」
ダッシュで立ち去った理由が分かった…。
そうか。
そういうことか…。
俺の胸に比べて凛は、
貧乳だった…。
あぁ…前に投稿したものを編集&加筆しなきゃと思うんだけど、
続きを書いてしまうという…(´・ω・`)