俺が女の子のパンツを手にした時の話をしよう
ノリと思い付きで書き始め、冷静になって見返して頭おかしいんじゃないかな、と思いつつ書き切りました。
拙作ではありますが、どうぞお付き合いください。
男子高校生が女の子のパンツを手にした時、喜ぶだろうと考える人間は多いと思う。
年頃で思春期な、異性というかエロいことに興味津々な生命体なのだから間違っていない。
実際に、前の席に座る子のシャツから透けて見えるブラや、短いスカートが捲れそうになればつい目が追いかけてしまう。
悲しい性を持つ生き物、それが男子高校生。
そんな業を背負う男子高校生が、女子が直接その柔肌に、しかもアレなところにつけている下着、パンツをその手に収めたらいったいどんな感情を抱くのだろうか。
歓喜、羞恥、火山のごとき性的興奮か?
いや違う。
困惑、緊張、そして絶望である。
もう一度言う。断言する。
あるのは絶望である。
それを今、身をもって味わっているところである。
俺に何が起こったのか簡潔に説明しよう。
今日は朝から水泳の授業があった。
しかし、どうも体調が芳しくなく、何とか登校したもののそんな状態で水泳の授業を受けさせるわけにはいかないということで保健室へと送られてしまう。
無理を推して来たというのに女子たちの水着姿を見られなかったことに涙を滲ませ、憤りをベッドに叩きつけていると、そんなに元気なら授業に出られるな、と水泳の授業が終わるころになって保健室を追い出された。
まだクラスメイトたちが戻ってきていないガランとした教室に一足先に戻った俺は、取りあえず次の授業の用意でもしておこうと自分の席に座って机の中を漁った。
パンツが出てくる。
「……は?」
机の引き出しから見覚えのないパンツが出てきたら誰もが混乱するだろう。俺も意味が分からなかった。
明らかに自分のものではない女子が履いていそうな、水色の縞柄でアクセントに赤いリボンのついた可愛らしいパンツだ。
両手でパンツを広げ、これぞザ・縞々パンツだな、などと考えていると教室の外からクラスメイトたちの声が聞こえて来た。
着替えて戻って来たんだろう。そこで自分の手にある物体が何なのかようやく思考が追い付き、血の気が引いた。
ドアが勢いよく開かれるのとほぼ同時にパンツをポケットに押し込む。
「おっ、秋葉。戻って来てるじゃん。体調はもう良いのか?」
「ぼ、ぼちぼち……」
「なんだよそれっ!」
戻って来た友達たちが声を上げて笑う一方で、俺は全身から冷や汗が止まらなかった。
ポケットの中のブツの存在が誰かに気づかれまいかと焦りと不安で酷く緊張してしまい、いつものように笑うことなどできない。
身に覚えがまったくないとはいえ、男子が女子の下着を持っているという時点でアウトだ。
さっきまで水泳の授業だったことから、バレれば下着泥棒の疑いをかけられることになるだろう。
そんなことになれば、冤罪であろうとも学校中から変態、犯罪者のレッテルを貼られて三年間の高校生活を送る羽目になる。
ならばいっそのこと俺自身に後ろ暗いことはないのだし、露見してしまう前に自分からありのまま話してしまうべきか?
『ちょっと聞いてくれよ。実は教室に戻ってきたら机の中にこんなのが入ってたんだ。これだよこれ、どっかの誰かの縞々パンツが。ヤバくね?』
『……え、ヤバいのはお前じゃね?』
ダメだ。周りに全力で引かれてしまうところまでリアルに想像できてしまった。
堂々と女子のパンツを見せびらかすとか正気の沙汰じゃねえ。
やはり、俺がパンツを持っていると知られた時点ですべてが終わる。
授業をサボってパンツを盗んだ変態野郎と噂されることになるかもしれない。
第一、気づいたら引き出しの中にパンツが入っていたなんて荒唐無稽な話を信じて貰えるはずがない。俺でももっとマシな言い訳考えろよとか思うもん。
思春期こじらせた若気の至りでやったことだろ、とでも思われそうだ。
このことについては誰にも知られるわけにはいかない。
さりげない動作でポケットの奥へと押し込む。これを誰かに見られれば俺の高校生活は間違いなく、詰む。
いつ爆発するかわからない爆弾を持っている気分だ。
――――パンツに殺されるかもしれない……っ。
誰にも助けを求めることはできず、これを隠し通して今日一日を乗り切らなくてはならない。
失敗すれば待っているのは俺の社会的な死だ。
クラスメイトたちとぎこちないやり取りを交わしながら、ポケットに隠した爆弾の存在に意識が行って思わず歯ぎしりする。
体調は悪いし、プールには入れないし、女子のスク水姿は拝めない。
そして、謎のパンツ。
今日は厄日だ。
くそっ、頭が痛い。
激しく動揺したせいなのか回復した体調が悪化した気さえする。
どうしてこんな目に……。
意味の分からない状況に悪態をついているとチャイムが鳴った。
俺はこの絶望的な現状に頭を抱えながら次の授業を受けることとなった。
ぶっ飛んだお話が書きたくて書きました。
もっとぶっ飛んでてもよかった気がする。