クールなバイブス
“イエーイ!盛り上がってこうぜっ!!フーッ!!!”
僕の友達である翔の昨日のハイテンションが未だに耳に残る。
翔と会った翌日は無性に落ち着いた場所に行きたくなる。
「こういう場所、普段よく来るんですか?」
「いいえ」
落ち着きを求めて辿り着いたバーで隣に座った奈良早紀という女性は話しかけても口数が少なくクールな印象。
翔とは真逆の世界の住人といった感じ。
「あの、あなたの連絡先を聞いてもいいですか?」
「いいえ」
無表情で淡々とお酒を飲む姿には清清しささえ感じた。
外で降り続く雨が止むことを祈りながら僕はグラスを傾ける。
「昨日は友達と派手に盛り上がったので、今日は落ち着きたくて」
「友達って長崎翔ですか?」
「知ってるんですか?」
「弟です」
煩すぎる友達はクールな姉に僕の話をたまにしているらしい。
正反対すぎて想像が追い付いていない。
奈良早紀は翔の姉だった。