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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

アビーは良い子

作者: どんC

 いい子におなりなさい。

 いい子におなりなさい。

 そうすれば、皆に愛されるから。

 お母様は私の手を握りしめ微笑みながらそう言った、


「アビー。お前の新しい継母と異母姉だよ」


 母の葬式が終わり館に帰るなり継母と異母姉がいた。

 父は母が亡くなるとすぐに後妻を迎えた。

 年上の異母姉が居たことを知る。

 よりによってお葬式の日に館に連れ込むなんて‼

 もう少し待てなかったのか?

 父も継母も異母姉も常識を勉強すべきだ。


 いい子におなりなさい。

 いい子におなりなさい。

 そうすれば皆に愛されるから。


 私は笑顔を張り付けて二人を迎えた。


 ねえ。お母様。

 お母様はいい子だったの?

 それとも都合のいい子だったの?


 貧乏生活の反動で二人は贅沢三昧だ。

 父は二人に負い目があった。

 許嫁が居たのに浮気で出来た子供。

 爵位は高かったがあまり裕福ではなかった父。

 お爺様は自分の事業の失敗をお父様に払わせた。

 裕福な母の実家。

 政略結婚に反抗したのだろう。

 ならば二人で駆け落ちでもしてくれた方が良かったのに。


 義姉は、病弱で学校の入学が遅れたということで、私の一年下に編入した。

 まあみんな知っているんだけどね。


 そして御披露目パーティー。

 大掛かりなパーティーだ。

 集まった方は物珍しげに継母と異母姉を見ているが。

 珍獣扱いなのに、お父様は浮かれていて気が付かない。

 異母姉の婚約者を探そうと必死な継母。

 お父様は二人を身内として私の婚約者に紹介した。


「やあ。アルーダ公爵、私の妻のエスタと娘のクロエだ」


 私の婚約者の名前は、アルーダ・フォン・ハーパア公爵だ。

 一昨年お父様を亡くされ爵位を継いだ。

 父は得意気だ。

 母の父と伯父様はパーティーには来なかった。

 愛人と不義の娘など認める訳はない。


 義姉は私のことが妬ましかったのだろう。

 私に会いに来たアルーダ様にへばりつき媚を売る。

 まるで娼婦のようだ。

 鼻が曲がりそうなくらい香水を付けて、アルーダ様の迷惑顔がわからないのかしら?


 異母姉は知らないだろうけど、私とアルーダ様は昔姉に会った事があるのよ。

 私に異母姉がいるらしいと噂があってお忍びで会いに行った。

 手筈はアルーダ様のお母様がして下さった。

 勿論護衛も隠れて二十人ばかりついてきたが。

 アルーダ様の母君はアリッサ様とおっしやいます。

 聡明な方で母とも仲良しでした。何か思う処頃があったのでしょう。

 アルーダ様は下町の女の子の格好をして、私は男の子の格好をして。

 魔道具で髪と目の色を黒く変え。

 ちなみにアルーダ様はライトブラウンの髪と瞳で、私はプラチナブロンドとアイス・ブルーです。

 彼女は下町でも裕福層の場所に家がありました。

 コッソリ庭を覗くとクロエがおりました。


「こんにちは」アルーダ様が声をかけました。


「あんた達何処から来たの?」


「お父さんが商人をしていて一緒に商いをしているの」


 なんて可愛らしい声でしょう。声変わり前のアルーダ様は天使の声です。

 お芝居も上手いし。今度の劇の主役はバッチリですね。


「ふ~ん。。友達になりたいのなら何か持ってきなさいよ。そうね。お菓子か。アクセサリーでいいわ」


「えっ?お金持ってない」


「親が持ってるでしょう。盗んできなさいよ」


 私とアルーダ様は固まりました。

 はあぁ~?盗んでこい?

 こいつなに言ってんだ!!


「当たり前でしょ。私みたいに可愛い子と友達になりたければ盗みぐらい当然よ」


 その時、お父様がやって来ました。

 不味い!! ばれるかも!!

 しかしお父様は気が付かず。


「おや?お友達かい?」


「いいえ。道を訪ねてきただけですわ」


「親切に道を教えるなんて。クロエはいい子だね~。ほらいい子のクロエにはお土産のお菓子とぬいぐるみがあるよ」


「嬉しいです。お父様。」


 二人は家に入って行きました。

 チラリと私達の方を振り向くと馬鹿にした笑みを浮かべて。

 見事な猫かぶりです。二重人格と異母姉の事を言うのですね。

 その後、商人の格好をした護衛に連れられて館に帰りました。


「どう?いい勉強になった?」


「はい。母上。二重人格のいいサンプルでした」


 アルーダ様は元気よく答えられました。


「昔ね。貴女のお父様エイデンと隣の国に留学していたの。その時に継母エスタと会ったわ」


 ミエド・テロル皇国に留学したのは二人とも十五歳の時だそうです。

 その時エスタ・デイサビス男爵令嬢も同学年で、第三王子もいらっしゃぃたそうです。

 ミエドは王子や高位貴族を侍らせ我が物顔で学園を牛耳っていたのだけれど、流石に王太子の婚約者に喧嘩を売って潰されました。

 取り巻きも家から追い出され、エスタも国外追放になりました。


 エスタは元第三王子と取り巻きと暫くは一緒にいたけれど。

 元王子と取り巻きは冒険者になり、ダンジョンに潜って帰って来なかった。

 一人エスタだけ取り残された。

 エスタは父を追いかけてこの国来ました。

 継母と父の関係はその時からだそうです。


「お前には馬鹿になってほしくないから、小さい時から悪女の免疫を付けてもらいたいの」


 アルーダ様のお母様は破滅した男達を見ていたから、お前にはああなって欲しくないのとおっしやった。


 私はアリッサ様の勧めで学校を中退し、花嫁修業でハーパア公爵家に入った。

 花嫁修業の為に学園を後にするには珍しくない。

 アルーダ様様は三年前に学園を卒業している。

 私に婚約者以外で好きな人がいるとか、異母姉を虐めているとか、誹謗中傷をされる前に動いたのだ。

 ならず者をけしかけられる可能性もあったからだ。

 私の父は厄介払い出来たとサッサと承諾した。

 私はアリッサに領地の事や館の事を学んだ。

 本当にアリッサ様は聡明で細かなことまで気付く方だ。

 私もみならわなければ。


 私とアルーダ様の結婚式の日。

 異母姉はまるで花嫁衣装のような白いドレスを着てきた。

 すぐさまメイドがジュースをひっくり返してドレスを汚し、バスルームに下着姿で閉じ込めた。

 継母には睡眠薬で眠らせ「色々花嫁の支度で疲れたのでしょう」と客室に閉じ込めた。

 二人が閉じ込められている間、私達はサクサク式を終わらせ新婚旅行に旅立ち。

 念の為新婚旅行の行き先はでたらめを伝えておいた。

 案の定。 

 継母と異母姉は追いかけて来たが、湖の別荘に私達はいない。


 いい子におなりなさい

 いい子におなりなさい

 そうすれば皆に愛されるから


 お母様 ごめんなさい。

 わたしはいい子ではありません。

 殴られる前に回避して相手を罠に嵌める。

 悪い子です。


 その後学園でスキャンダルが起きたことを知ったが。

 その時はハーパア公爵家の領地にいたが。

 実家とは縁を切っていた。


「血は争えないものね」


 お義母様は優雅に紅茶を飲みながらそうおっしゃった。

 お義母様は異母姉の容姿が取り巻きの魔導士に似ている事に気づいていた。

 そう異母姉は父の子ではなく魔導士の子だった。

 なのにあの女は父の子と偽り父にたかっていた。


 正気に帰った父は養子を取り引退して領地に引っ込んだ。



 春になりアルーダ様と私に男の子が産まれた。

 もう少しこの子が大きくなったら父に会いに行こうと思う。


 いい子におなりなさい

 いい子におなりなさい

 そうすれば皆に愛されるから


 お母様

 私はいい子ではありませんが……

 私は今とても幸せです。





         ~ Fin ~










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2018/4/11 『小説家になろう』 どんC

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★アビー・アルシェ 17歳

主人公。伯爵令嬢。


★エイデン・アルシェ 38歳

アビーの父親。


★エスタ 37歳

アビーの継母。ハーレム主義。女は貢がせてなんぼ。


★クロエ 18歳

アビーの異母姉。アビーの婚約者狙い。


★アルーダ・フォン・ハーパア公爵 20歳

アビーの婚約者。クロエの正体を知っている。

女性不信によくならなかったもんだ。


★アリッサ・フォン・ハーパア 38歳

アルーダの母。賢い。女で身を持ち崩した馬鹿を見ていたから息子教育は厳しい。






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― 新着の感想 ―
[一言] 大丈夫! とてもイイ性格の子になっているから! お母さんは良い間違えてる説を推します。
[気になる点] 誤字報告です。 お義理母様←理はいらないと思われます。
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