いくら死のうが最後に生きている奴が強い
子供の頃から体が弱かった俺庄条守は、病院のベッドの上が自分の生活圏だった。
寝て、暇つぶしにネットで遊んで、飯を食って寝る。
人によっては羨ましいと思うかもしれないが、何の希望もない自分の人生に絶望しかない。
そして俺は病院のベッドの上で死んだ。意味のない15年の生涯だった。その間この世界で何の存在価値もなく、家族以外に存在を認知されることもなく――
――「‥‥目が覚めたようね」
死んだはずの俺はなぜか目が覚める。
目の前ににこやかに笑う少女がいる。年は俺と同じぐらいの日本人に見える簡素な黒いワンピースを着ていてなぜか裸足だ。
周囲は森?ジャングル?混乱する刹那、視界が跳ねる――
そして暗黒になる。体が動かない無感覚状態だ。
この感覚は覚えがある――俺はまた死んだのだ。
――「はい、もう一回」
少女の声が聞こえる。そしてまた俺は目を覚ます。
何が起きているのかさっぱり分からない俺は周囲を見渡す。
すると背後に恐ろしいものがいた。
「虎‥‥?いや、体はネットで見る動物に比べて3倍以上大きい、上顎犬歯が異常に長い、サーベルタイガー
という生物?」
その生物は俺のほうに飛び込んでくる、その動きに本能が訴える『死ぬ』と
すぐ逃げ出そうとするが足元が滑り倒れる。地面にはおびただしい量の血があり、それに滑ったのだ。
俺が最後に見た光景は虎の喉の奥だった――
――「はい、気を取り直してファイトー」
また俺は目を覚ます。どうやらこの少女が俺を蘇生?させているようだ。
「お前一体なんで、こんな、助けてくれよ!」
北条は混乱しながらも少女に訴える。
「さっきから蘇生して助けてあげてるじゃない。このサーベルティガーを倒せば導入訓練は終わりよ。ほら後ろ後ろー」
ドSな笑顔を見せながら俺の背後を指差す少女
(いや無理だろ、武器もないのにどうやって勝つんだよ、導入訓練ってなんだ?チュートリアル?こんなムリゲーなチュートリアルあってたまるか‥‥!)
そんな絶望と怒りの最中また俺は死んだ。
――「蘇生回数は無制限、サーベルティガーが死ぬまで戦ってもらうわ。何日、何週間かかろうともね」
よくわからないがやるしかない‥‥!
腹をくくった俺は改めてサーベルティガーを見る。
(蹴ったり殴ったりしたところでビクともしなさそうだ‥‥。消耗戦に持っていけば勝てるのか‥‥?)
しかし、俺を何度も殺しているサーベルティガーに疲れの色はない
サーベルティガーがまた襲い掛かってくる。
病弱な俺が普通に殴ったんじゃダメージを与えることすらできないだろう、狙うは弱点――
サーベルティガーは俺の胴体を部分を思いっきり噛みつく。
噛みついて切断される前での時間で俺は渾身の力でサーベルティガーの右目を殴った。
俺の右手より大きな眼球は俺の全力のパンチでも潰れはしないがサーベルティガーが呻く
そして噛む力が強くなり俺は下半身と上半身が真っ二つになり死んだ。
――「やるじゃない、その調子よ」
そして例のごとく蘇生
サーベルティガーを見ると目からは血が流れている。
いける!まずは両目だ!
何度も死にながら少しづつ両目を潰し鼻を千切る。弱い部分から徹底的につぶす。
そして、陽が落ち、陽が昇りそしてまた陽が落ちかける頃戦闘は終了した。
サーベルティガーは両目を失明し、鼻は捥がれ、牙を折られそれを利用され潰れた眼球の上から牙を突き立てられて脳を潰され絶命した。
――「おめでとう。クリスティーナ・リンよ。よろしくね」
サーベルティガーを殺した後出血多量で死んだ俺を
蘇生してくれた少女クリスティーナ・リンは笑顔で祝福してくれた。
俺は自分自身が大きく変わっているように感じた。