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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第六章 「赤髪の将軍と魔王との邂逅」
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「悔いなき明日を」

「……やあ、諸君」


「おお……モルドさん!」


「モルドさん!」


 モルドが入室した瞬間、団員の者と思しき男たちが彼のもとへ駆け寄ってきた。見ると団体は全て男性で構成されているようで、皆、中々に屈強な肉体を持っている。団員達はモルドのことをさん付けで呼んでおり、彼らから信頼を置かれていることがよく分かる。


「うむ。……さて、早速だが君達に紹介したい人物が何名かいる。彼らは我々と同じく魔王討伐を志す同士だ。彼らを我々の仲間に迎えることを認めて貰いたい」


 モルドの紹介を受け、俺達はそれに応えるように改めて彼らに軽く頭を下げる。しかし彼らの表情は訝しげであった。


「何者なんですかいコイツら。本当に信用できるんですか」


「おまけにそこの金髪は頭から角が生えてる……魔族じゃねえか」


 ……魔の血を引く者は、大抵の場合蔑視の対象となる。とはいえ、俺の武勇伝が広まっていたドラドカやサンメラではそれでも比較的受け入れられていた。しかしザザンガルドにまで来ればそれも無関係となる。こんな冷たい目を向けられるのも久し振りだ。


 ……そういえば、逆にモルドは俺と最初会った時、俺が魔族であることについては特に何も触れてなかったな。


「恐れ多いぞ君達。彼は確かに生まれこそ魔族だが、その階級はバレア王国の将軍だ」


「言ってみれば格上だ。……魔族だろうが何だろうが、格上の相手には敬え」


 モルドは、俺達に対し不信感を示した彼らを強く圧のかかった口調で諌める。すると彼らは気圧されたのか途端に萎縮し、それ以上は何も言わなくなった。どうやらこの団ではモルドの方針が絶対のようである。


 とりあえず俺達は小屋にあがり、改めて彼らに名を名乗った。その後、今度は逆に彼らからもそれぞれの名を聞いた。そして最後には、結束の証として握手を交わした。これで俺達は正式に仲間同士という関係を結ぶ。


「さて。立ち話もこれくらいにして、そろそろ部屋に移動しようか」


 モルドの案内で、俺達一行は小屋の最奥へと足を進めていった……。


 ※


「――以上が、当日行う作戦の段取りだ。質問は……無いな」


 卓を囲み、俺達は卓上に敷かれた用紙を見つめていた。それにはザザンガルド城を示す図が書かれており、また、その上には当日の俺達を指しているであろう小さな駒が置かれている。


 駒を紙の上でスイスイと動かすモルドの説明は理路整然で分かりやすかった。この作戦会議に出席して俺は、同じ将軍という立場としてモルドの軍略家としての突出した才を羨ましく思うのであった。


「再度確認しておくが、作戦の決行日は明日の夜だ。諸君らにはその時に備え最後の準備を進めてもらうと共に、悔いのないような休み方をしてもらいたい」


「先に言っておくが、この戦いには間違いなく死人が伴う。敵にも、仲間にもな。自分だけは死なないなどという絵空事は捨てろ」


「ここでもう一度忠告をしておく。……悔いのないようにしろ」


 モルドの警告が再三にわたって行われる。魔王アルハートとの戦いは死闘となることが濃厚であり、そこで戦死する者もまた少なからず出るだろうと。なので予め、余生を悔いなく過ごしておけと。


 中々に心に……いや、心を通り越してもはや“命”そのものに刺さる言葉だ。自分の中で鼓動する心臓の音が早まるのを感じる。すぐそこまで迫っているかもしれない己の死期に怖気づいているのだろうか。


 ……なんて、そんなことを今更不安がるのもおかしな話か。これまで幾多もの死線を掻い潜ってきたのに。どうやら、ほんの少しだけ俺は臆病風に吹かれてしまったらしい。


 そうだ。思い出せ。俺にとって“魔王討伐”とは、エリス様に捧げる贖罪の鎮魂歌。きっとかの国で見守ってくれているであろう彼女に報いるための使命。そして、俺がその生涯を賭けて果たさなければならない天命だ。


 故にこの命は、既に供物と等しい。失われて然るべき生命だ。惜しくも何ともない。覚悟など、とうに決している。


 ただし、仲間の命だけは俺の使命より優先して守り通さなければならない。どんな時でもそのことだけはゆめゆめ忘れないようにと、俺は自分自身にそう言い聞かせるのだった。

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