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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第六章 「赤髪の将軍と魔王との邂逅」
92/141

「魔王の本質」

 ※


 ……アイザック達がゴツガケ山脈を進行している一方で、かの国……ザザンガルドでは、とある一人の老人が一人自室でソファに腰をかけ、昼間からワイングラスを優雅に揺らしていた。


「……モルドの帰りが遅いな」


「奴が“山賊”の討伐に手間取るとは到底考えられんが……それとも、思った以上に敵が手練だったか?」


 この、長い白髭をたくわえた老齢の男……“アルハート・ザザンガルド”は、ザザンガルド国の現国王である。アルハートは今、己に仕える忠実な部下の帰還が遅れているのを憂いていた。


「……こんな所で死んでくれるなよ。モルド」


「我が“世界征服”の野望を達成するには、貴様の力が何よりも必要不可欠なのだからな……ッ!」


 アルハート・ザザンガルドは、一国の王であるにも関わらず……いや、寧ろ逆か。そう、一国の王らしく、野心家なのである。世界征服という四文字はまるで絵空事のようにデタラメな響きだが、彼はその野望を真面目に叶えようとしていた。


 白昼を映す窓を憂鬱そうに眺める彼は、赤ワインによって酔いしれながらひたすらモルドの帰りを待つ。するとそんな彼のもとに、とある一報が届いた。


「失礼いたします。アルハート様」


「……“ラスロー”か」


 ――“ラスロー・ゲネビア”。アルハート王に仕える将軍の一人。緑色の短髪を持つ青年であり、これまで国のためにうち立てた武功は数知れず。モルドに勝るとも劣らずの騎士であり、アルハートから寄せられている信頼も厚い。


「ただいま城門前で不埒な行いをしていた輩共を捕らえました」


「連中は王の政策に不満を持った市民で、今回の蛮行は王の政策に武力をもって異を唱えたかったという動機のもとで行われたものと推測されます」


「いわばデモ活動のようなものですね。……いかがなさいますか?」


 ラスローは市民達が起こした一揆の顛末について理路整然に、淡々とアルハートに伝えた。現在アイザック達と同行中のモルドが言っていた通り、アルハートはまさにこの自国で苛烈なまでの圧政を敷いている。その圧政に市民達は気づいていないともモルドは言っていたが、何事も一枚岩ではなく、たった今一揆を起こした市民達のように、“気づいてしまう者”もまた一定数いるのが正しい現実である。


 ではそんな彼らを、独裁者アルハートはどうするのか。


「一旦帰せ」


「そして奴らの帰り道を襲撃しろ。……勿論、それも、ゴツガケ山脈の山賊共の犯行に仕立て上げてな」


 ……アルハートは、直接的に自分が処刑の命を下すのを避けつつ、あくまでも全く関係のない他者に責任を押し付けながら部下に暗殺させるという、狡猾極まりない極刑の執行をラスローに命令した。そう、これが……独裁者アルハートのやり方だ。


 アルハートの本質は正に、モルドの言うとおり“魔王”のそれだ。世界征服という野望のためなら、例え相手が力弱き自国の民であっても阻めば平気で殺す。どんなに汚い手段を使ってでも。それ程までに、このアルハートという男の野望に対する渇望心は半端なものではない。


「御意」


 そしてそれと同様に、ラスローのアルハートに対する忠誠心もまた然り。アルハートは傍若無人な男だが、同時に類稀なカリスマ性も持ちあわせている。彼の悪に満ちた本質には、自らと同じ“悪”を惹き寄せる才能があるのだ。


 故にアルハートは、反感も買いやすいが、仲間の信頼も得やすい。野心家ではあるが、彼は確かに支配者としての器を併せ持っている。


 まさに、ザザンガルドの魔王と呼ぶに相応しい人物なのだ……。

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