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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第六章 「赤髪の将軍と魔王との邂逅」
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「結束の呪文」

「嘘だろオイ!?」


 いや分かる。気持ちは分かる。確かにこのナメクジの見た目は非常に気持ち悪い。なにせ、ヤツのサイズは通常のナメクジの50倍以上は軽くあるし、ウネウネと触覚を揺らす仕草はかなり気色悪い。見てるだけでショック死しそうだ。


 実際、炎で焼くという討伐方法を思いついたのも、俺が直接剣でヤツを斬るのが嫌だったというのが100%だ。ぶっちゃけ。だから俺とてイクシスを咎める資格は無い。しかしそんなこと言ったって……!


「ナメクジぐらいでビビってんじゃねえよ三下将軍ッ!」


 と、そこへ見かねたマルク君が救援に入った。彼はぐるぐると回転する鎖鎌をナメクジに向けて勢いよく投擲。その鋭い刃先がナメクジの甲殻に触れると、甲殻に亀裂が入った。


「これで……どうだッ!」


 マルク君が更なる追撃を加える。亀裂に向って再び鎖鎌をブサリと刺した。すると甲殻は今度こそ完全に砕け散り、ナメクジの背が顕になる。ブツブツとしたまだら模様がまた何と言ってもキモい。


「ぎひゃぁぁぁぁっ!?」


「よ……よくやったマルク君!」


 イクシスが青ざめる中、俺もまたナメクジのせいで精神をすり減らされながらも、マルク君に礼を言いつつ、もう一度聖炎魔法の詠唱を行った。


 浸透する痛みを代償にして放つ、魔を滅する聖なる火炎弾。鮮烈な爆炎がナメクジを一瞬にして包み込んだ。やがてナメクジが完全に消滅する。これでイクシスはようやく悪夢から開放された。あと二体……と思った矢先。


「はぁぁぁっ!」


 聖杖≪フリーズ・クリスタル≫を両手に、光の魔力を蓄えながらイリアはリザードランサーに向かって一直線。そして……。


「≪水晶の輝きよ 光を正義に導き 闇を終焉の果てへと誘え≫!」


 ……新たに習得した詠唱式を用いて、リザードランサーに挑んだ。呪文を唱えながら走り、杖を前方へ突き出す。すると杖の先に魔法陣が展開され、それはまさに水晶の如く蒼き輝きを纏いながら、言の葉の通り導かれた光を顕現させる。


 その光はやがて弾丸と化し、リザードランサーに照準を定め、勢いよく発射された。壮烈な激光が水平線をなぞる。そして瞬く間に光弾はリザードランサーに直撃。瞬間、炸裂。


「ギャォォォォォッ!!?」


 刹那、爆砕。終焉の果てへ、リザードランサーは誘われたのだった。これであと一体。残すはパワフルジョーズのみ。


「シャァァァァッ!」


 筋骨隆々。己の肉体美を追い求め続けたサメの成れの果て……という風に、“モンスター・ライブラリー”には記載されている。まさに見た目通りのパワーファイターで、基本的に近接戦での殴打を得意な攻撃手段とする。その実力は圧倒的とされ、我々四人がかりでも、近接戦で彼を倒すのは骨の折れる苦行だ。


 よってここで頼りになるのは、呪文での総攻撃となる。


「≪星の魔玉よ――」


「≪水晶の輝きよ――」


「≪聖剣の炎よ――」


 俺とイクシス、そしてイリアの三人で、呪文の同時詠唱を行う。それも、いつもの単なる詠唱とは形式が異なり、今度は複数人の呪文を合体させて放つ≪融合呪文≫の詠唱だ。


 融合呪文を使う場合、詠唱式は三人で共通となり、通常の数倍の魔力消耗を詠唱者全員が負担する。この特性から融合呪文は、いわゆる“切り札”として使用するのが最もオーソドックスである。


「――星々と水晶と聖炎の煌めきに照らされながら――」


「――敵を悉く破滅させよ≫!」


 三位一体の同時攻撃は、三つの魔法陣によって放たれた。迸る閃光は稲妻の如し。混沌の超エネルギーは一切の乱れ無くパワフルジョーズを貫通。


「シャ――」


 鍛えに鍛え上げた無敵の肉体も、この結束の呪文の前では完全に無意味だった。悲鳴すら光にかき消されながら、鮫は瞬きに溺れ命を落とす。そして跡形もなく奴は消え去り、立ち込めし煙の先には無残な焦土が広がった。


 この絆の結晶ともいえる技は、グラファ戦を乗り越えたことで完成した。難敵を共に倒した同士との連携によってようやく生み出した、俺達の“切り札”。この融合呪文は、俺達の誇りそのものだ。今の俺達は、とても強い“友情”で結ばれている。


 パワフルジョーズを討伐し、魔物の群れを殲滅した俺達は、ヒュウと口笛を鳴らすモルドを背に行進を再開する。戦う度に得られる経験こそ、何よりの加速燃料だ。俺達は連戦しながらも、確実に、そして迅速に、山登りを進めていくのであった。

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