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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第六章 「赤髪の将軍と魔王との邂逅」
88/141

「魔物三人衆」

 ※


 モルドさんの武器――戦槌≪ヘルレッド≫――は、強さ極まった武器である。どんなに強靭な魔物が相手でも、そのひと振りで全て即死させてしまうのだ。彼がそうする様は実に壮絶であり、魔物の立場にふとなってみると、思わず身の毛がよだってしまう。


 ザザンガルド国の将軍の力は我々の想像を優に越していた。道を阻む敵は瞬く間に血飛沫をあげて死滅していく。俺達が通った後には魔物達の死屍累々がずらりと、おぞましく並んでいた。


 一方で俺達の出番はあまりなく、殆どモルドさんに任せっきりで山登りは進行している。


「……モルドさん、少し休憩してはどうだろうか」


「モルドで良いよ。私もこれからはアイザックと呼びたいからな」


「あと、休憩はいらないよ。今ここで君達にうっかり死なれたら困るからね」


 ……モルドさん改め、モルドは、飄々とした態度で俺の休憩の提案を軽く流す。どうやら彼には若干、我々を甘く見ている節があるようだ。


「こんな所でうっかり死んでしまうような鍛え方はしてはいないよ。モルドさっ……モルド」


「そうだ、モルド殿。寧ろここでいくらか戦っておかなければ我々とて腕が鈍ってしまう」


 そう。俺達はこんな所では死にはしない。絶対に。俺達はモルドに、不死の誓いを立てた。そしてそのうえで、改めて彼に一時の休息を促す。


 すると彼は、やれやれといった感じの表情でため息をつき、しかしやがて頷いた。


「……確かにね。それは悪かった」


「お言葉に甘えて少し休ませてもらおう。……この機会に、君達の戦いを拝見させてもらうよ」


 望むところだ。モルドには負けていられない。俺は今、彼に対し密かに燃え始めているライバル意識からか、戦意が結構高揚している。今なら、どんな敵が相手でも負ける気がしない。俺は聖炎が燃え滾る剣を高らかに掲げ、仲間と共に前線へ出た。


 聖剣の痛みは未だに苦しい。というか、これに慣れる日なんてもう一生訪れないことを俺は既に悟っていた。この数日間の旅を経てまるで馴染まないこの激痛に、俺はとうとう諦めてしまった。


 だが、だからこそ俺は、この聖剣を振るうのだ。己が罪咎をこの辛苦の炎で燃やし尽くす。これこそが、この痛みが俺にもたらす唯一の意味。エリス様を死なせた罪を贖うことが、俺の使命なのだ。


 耐えろ。そして守れ。――俺は自分にそう言い聞かせながら、いつも戦っている。


「うぉぉぉッ!」


 前方に待ち構えし強敵は三体。二足歩行のトカゲが槍を装備した“リザードランサー”。岩肌のような見た目の外殻を持つ変異体のナメクジモンスター、“ロッキースラッグ”。そして、陸で生きるため肺と手足を備えた強力無比のマッチョなサメモンスター、“パワフルジョーズ”。


 俺は三体の中でまずナメクジを倒しにかかった。あのナメクジは放っておくと毒素が沢山詰まった体液を放出してくる。その前に最優先でコイツを……燃やす!


「焦げ落ちろッ!」


 先手必勝。俺は聖剣の炎をナメクジに向けて一気に放射した。呪文を唱え、魔法陣を展開し、その威力を更に加速させて。確実に燃やし殺す為に。


 一般的なナメクジの体が殆ど水分で出来ていることは言うまでもない。無論それは魔物と成り果てたアイツでも同じこと。故に燃やして蒸発させれば跡形もなく消え去る。灰も残らず。……しかし。


「キュルルルッ……」


「何ッ!?」


 その理屈は、今の眼前の状況によって還付なきまでに覆されてしまった。なんとナメクジは、聖剣の炎で燃やされてもなおピンピンしていたのだ。……そうか、分かった。


 あの外殻だ……岩は火に強い性質を持っている。あの岩でできた外殻がナメクジの本体を炎から守ったのだ。俺はその事実に気づき、なぜもっと早く気付かなかったと自らに苛ついて思わず舌打ちしてしまう。


 しかしカラクリは分かったので、後はそれを対処すれば良いだけのこと。あの外殻を破壊できれば今度こそ奴を燃やせる。そしてその役目を担うにあたり最も適しているのは、何でも砕いてしまう程の威力を持つ斧に変形できる≪星の魔玉≫の持ち主、イクシスだ。


 俺は早速彼女に、星の魔玉の力を行使してナメクジの外殻を破壊するように頼んだ。だが、次の瞬間、彼女からはこんな答えが返ってきたのだった。


「……す、すまんアイザック」


「私、実はその……虫が大の苦手でな」


「そのナメクジ、ちょっと見てるだけで吐き気が……おえっ」

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