「暴かれる魔王」
俺達は彼のその言葉を聞いた瞬間、驚きのあまり瞠目してしまった。そして口からは思わず感嘆がだだ漏れてしまう。彼は魔王の手がかりどころか、魔王という存在そのものを知っていたのだ。
「モ、モルドさん……貴方魔王を、魔王を知っているのですか!?」
「その言葉、そっくり君達に返したいところだ。……君達は魔王を倒すために、魔王を追っているのかい?」
「勿論です!」
改めて俺は思った。「運が良い」、と。この段階で、魔王のことを知る人物と出会えたことはもはや奇跡と呼ぶに相応しい幸運だ。これで一気に、この旅の最終目標である魔王に近づける。
「そうか。……実は私も、近々本格的に魔王討伐を試みようと考えている」
しかも、魔王を討伐しようとする意志はモルドさん側にもあるらしい。これはあわよくば……彼と“協力関係”が組めるかも。そう思った俺は反射的に協力関係を作ることを彼に提案しようとした。だが、それよりも先に彼の方から声を発した。
「そうだ。良ければ私と手を組まないか?アイザック」
「君たちと私が組めば、本当にあの憎き魔王を倒せるかも……」
なんと彼の方から申し出てくれた。俺にはこれを断る理由なんてない。俺は勿論これを快諾した。
「是非、ここで手を組みましょう!モルドさん!」
「ああ。よろしく頼むよ」
こうして俺とモルドさんは、握手をかわした。モルドさん程の実力者と結託したなら、もはや魔王討伐など本当に夢では無い。
「……ところでモルド殿。してその魔王の正体はご存知なのだろうか」
と、ここでイクシスがいきなり核心に迫ることをモルドさんに聞いた。するとモルドさんは爽やかな表情から一転、やや険しい表情を浮かべて……こう言った。
「……この事実を聞けば君達は確実に驚くだろうし、そして信じないだろう。しかしこの虚言のような事実こそが、君の質問に対するこれ以上無き答えだ」
「言おう。魔王の正体は――」
「――現ザザンガルド国王、“アルハート・ザザンガルド”だ」
――魔王イコール、ザザンガルドの王。俺はその告白を聞いた時、己の耳を疑った。何かの聞き間違いかと思い、もう一度言うよう彼に頼むも、返ってきた答えは先程と同じであった。耳は正常であり、聞き間違いなんて無かったのも分かった。
そして確かに彼の言ったとおり、驚きもしたし、到底信じられもしなかった。だが、そんな信憑性に欠いた発言をしているにも関わらず、発言者である彼の瞳は驚くくらい真っ直ぐであった。
「そんな、現ザザンガルド王が魔王だなんて……」
「モルド殿、将軍の立場としてそれは本当に責任を持てる発言なのか?」
当然ながら、イリアとイクシスはモルドさんに疑いの言葉を投げる。無論俺も、モルドさんを信じ切れるかと言われたら正直言って自信がない。
しかし彼の、真剣にも程があるだろうとまで思わせる表情に俺は、えも言われぬ気迫のようなものを感じさせられた。とても嘘を言っているような顔ではない、と。
「おいアイザックさん。あんま、この人の言うことは信用しない方が良い気がするぜ」
「なんか……嫌な予感がするんだ」
……彼の発言を信用したとして、もし仮に彼の言ったことが嘘であった場合、俺達は罪のないザザンガルド王を倒すことになってしまう。何にしても、今ここで彼の言葉を鵜呑みにするのは早計なのは言うまでもない。だが、モルドさんはそんな俺達の疑いすら受け入れるかのような態度で、更に言葉をこう続ける。
「君達がこの話を疑うのは、君達が正常である証拠だ」
「だがこれだけは敢えて言わせてもらおう。……来れば分かる、とな」
……ザザンガルドに行けば分かる、か。
どうやらモルドさんは、俺達が彼を信用するまでの猶予をくれるらしい。とりあえず現段階でも同行だけはしようと、彼は言った。そういうことなら、と、俺達も改めて彼を迎え入れることにしたのだが……。
……この時、マルク君だけはどうにも煮え切らない感じの表情を浮かべていた。彼の人を疑ってかかる性分が出ているのだろうか。マルク君の“嫌な予感”とやらが当たらないことを祈るばかりだが……。




