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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第五章 「地獄にも勝る悪夢に終止符を」
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「本気」

「マルク!!貴様!!」


 倒れるイクシスは、その場面を間近にして怒りを爆発させる。目の前で君主の背中がかっ斬られたのだ。無理も無い。


「怒るなよイクシス将軍。これは仕方のない犠牲ってヤツだぜ」


 だがマルク君はあくまでも、飄々とした態度で彼女に受け答えする。彼は全く悪びれていない。寧ろこの上なく清々しい表情を浮かべていた。


 孤児の中には、自分達に何もしてくれない王政に対し少なからず憎しみを持つ者がいる。それは分かっていたが、彼のように殺意まで抱いてしまう者はそうはいない。一体何が、彼をあそこまで突き動かしたのか。


「ぐぅ……っ!」


 固唾を飲んで、床に倒れゆくグラファを見るイクシス。彼女にとっては、最も望まぬ形での幕引きとなったことであろう。俺もこの時ばかりは、指をくわえてこの光景を見ていることしかできなかった。


 ……が、次の瞬間。俺達一同の予想を覆す出来事が起こる。


「……ガキィ、今ので俺を殺したつもりか?」


 斬られたハズのグラファが下卑た笑いを浮かべた、その時。


「な……切ったハズの背中が再生してやがる!?」


 マルク君は、グラファの傷が癒えていく様を見て驚愕の声をあげた。そう。グラファの、いや、ホルス様の肉体につけられた深い傷跡が、跡形もなく消えていっているのだ。


「これこそ、この女の底知れぬ魔力がもたらす奇跡よ」


「どんなに致命的な傷であろうともこの通り……回復の魔法によって再生することができる」


「それも、圧倒的なスピードで……な!」


 グラファはホルス様の内に秘められし魔力を行使し、彼女の体についた傷を癒して復活を果たした。こうして完治した肉体を、グラファは次の瞬間存分に駆使する。


 奴は右手に携える天帝剣を、マルク君に向かって思いっきり薙いだ。


「うわぁぁっ!?」


 刹那、マルク君の小さい体が宙を一直線に飛ぶ。やがて壁に激突すると、落下。息を切らしながらイクシス同様床に倒れこむ。


「マルク君!!」


 俺は彼の身を案じて叫んだ。イクシスに続いて、マルク君までもがこうもあっさりやられてしまうなんて。グラファとホルス様が融合してできたあの怪物は、力が圧倒的すぎる。


「さて、イクシス。これで安心したか?この女は不死身さ」


 と、グラファは、ホルス様の死を恐れるイクシスに対して皮肉の言葉をぶつける。確かに、今のイクシスの表情は、マルク君がホルス様の体を斬り裂いた時よりはマシになっているみたいだが……。


「……早くその体から出ろ!化け物めッ!!」


 やはり、体はホルス様のものでも精神がグラファという魔物である以上、素直に喜ぶことはできない。なんというか、彼女としても複雑な気分なのだろう。


「それはできない相談だな」


 そして、毅然とした態度でホルス様の肉体から離れようとしないグラファ。余程あの体が気に入ったのか、上機嫌かつ邪悪な笑みを浮かべている。


 このままだと、精神と肉体の癒着が進む一方だ。ホルス様とグラファが完全に合体してしまう前に、唯一の解決策を決行しなければならない。あの薬を、グラファの奴に飲ませるのだ。


「ならば無理矢理出させてやるまでさ……貴様とて、あの薬の存在を忘れたわけではあるまい」


 ルスワールちゃんの作った、グラファの呪術をも解いてしまう奇跡の回復薬……アレを、フォード将軍の時と同様、グラファにも飲ませることができれば、グラファの人格をホルス様の肉体から切り離すことができるハズだ。


「……フン、例えお前らにはアレがあるとしても、アレをこの俺に服用させることはできないだろうな」


「俺に服用させるには、俺の動きを完全に止めなければならないのだからな」


 だがグラファは、自身満々な物言いで、薬の服用は不可能だと決めつける。


「あのフォード将軍に対してはそれは成功したのだがな」


 俺は、王国最強の将軍の名前を引き合いに出して、グラファを焦らそうとしてみるが。


「言っておくが、この女の力はそのフォードという男を遥かに越えているぞ」


 グラファの持つ絶対的な自信が揺らぐことは無かった。


「……そのようだな」


 俺はグラファのその自信に、思わず納得の一言を残してしまう。なぜなら実際にグラファは、フォード将軍をも遥かに凌ぐ実力を手に入れてしまったのだから。


 だが俺は、諦めるわけにはいかない。奴がフォード将軍を越えたというのなら、俺は更にその上を行くしかない。


「……肉体の治癒が可能であるからには、遠慮はいらないな」


「悪いが、半分は殺す気でいかせてもらおう」


 俺は、本気の実力で戦うことをここに誓った。道中で兵士達やフォード将軍と戦った時とは違う、まさに殺し合いをする時の精神でこれから始まる戦闘に臨む。


「魔族のなり損ない如きが、俺に楯突くかァ!!」


「それが、人のためであるからば」

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