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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第五章 「地獄にも勝る悪夢に終止符を」
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「女王にして魔族」

「戦闘、ねぇ……」


「俺としては望むところだけどな」


 マルク君は、冗談に聞こえない不穏な台詞を平然と言う。鎖鎌の刃をブンブン振り回して、戦いに対し意欲を見せる。


「マルク……ッ」


 最上階まで来ても、結局イクシスのマルク君を見る目は変わらなかった。……いや、寧ろ更にマルク君に対する彼女の警戒心が強くなったように見える。


 共に同じ時を過ごすことで、彼の少年らしい部分に一瞬でも触れられればとは思ったのだが、マルク君は想像以上に邪悪な心の持ち主だった。


 お陰でイクシスは已然としてマルク君を信用していない。彼女の彼を見る目は、敵に向けるそれと同じだ。マルク君もまた同様だろう。彼の性格を考えれば、イクシスに対して信用なんてものは一欠片も持っていないに違いない。


「……足並みを揃えろ、とだけは言っておく」


 言っても無駄なのだろうが、俺は一応忠告をした。この先どのような危険が待っているか分からない以上、仲間割れは絶対に避けたい。


「行きましょう。アイザック様」


「ああ」


 イリアに促され、俺は扉の取っ手をしっかりと掴む。次に、握る手に力を込め、ゆっくりと扉を開けた。金属の軋む音が響く。


 鈍重な扉を開け切り、俺達はついに王室へと入る。そして即座に王座に目をやった。そこにホルス様はいるハズだから。


「……来たか」


 予想通り、ホルス様は玉座に座っていた。足を組み、堂々とした佇まいで、俺達を悠々と見下ろしている。


 彼女の体からは、いつか見た覚えのある紫色の煙が立ち込めていた。あれを見て俺は確信する。今回の事件の黒幕の正体を。それは――


「この邪気……やはり正体は貴様だったか」


 ――ホルス様――


「グラファ」


 ――の体に乗り移っている煙の魔物、"グラファ"だ。


「あぁ?誰だよソイツは。ホルス様じゃねぇのかよありゃあ」


 マルク君は俺の発言に疑問を抱く。当然だ。彼はグラファという名を今初めて聞いたのだから。なので俺はここで、簡潔に今の状況をマルク君に伝える。


「体はな。だがその精神は、グラファという魔物によって支配されている」


「ふぅん」


 時間が少々差し迫っているのでざっくりとした回答になったが、彼はもともとそんなに興味がないためか、あっさりと"ふうん"の一言で納得する。まあ、そうしてくれた方がこちらとしては助かるわけだが。


「俺の仕掛けた罠を掻い潜ってここまで来るとは……どこまでも忌々しい奴め」


 奴の真の目的はまだ分からないが、少なくともこれまでの罠は全て奴の仕組んだものであることが判明した。やはりか、という感想しか出てこないが。


 人を操る奴の恐るべき呪文には本当に苦労させられた。イクシスにマルク君に、フォード将軍に。どれを取っても強敵だった。強者を手駒にできる奴の能力は、狡猾だが確かに脅威的である。


 だが、それも全て仲間と共に突破してみせた。残るは奴だけ。しかも、グラファ本人なら過去に一回撃破している。それも、俺とイリアの二人だけでだ。今ならイクシスとマルク君もいる。こちらには勝算が十分過ぎるほどあるのだ。


「貴様の恨み節などどうだっていい」


「早くホルス様の体から出ろ、薄汚い下等生物が……!」


 そして、忌むべき宿敵を発見するや否や、イクシスは怒りを露にする。自らだけでなく、戦友であるフォード将軍、そして、彼女が敬愛する君主……ホルス様までも傀儡にしたグラファを、彼女は絶対に許さないだろう。


「イクシスか……一度はお前も俺の支配下に置かれた身だろう?そんな自分の無力さは棚にあげて俺に指図するのか?」


 だがグラファは、イクシスの憤怒の言葉を挑発的な態度で一蹴する。


「コイツ……ッ!」


 グラファの言葉で更に逆上するイクシス。いつしか彼女の瞳は、殺意と憎しみにて満たされていた。激情の将軍は、オーブを斧に変形させ、今すぐにでも奴に襲いかかりそうだ。


「……随分と余裕なんですね?4対1ですよ?」


 イリアは、イクシスをこれだけ挑発するグラファに、今一度彼が置かれている状況について言及する。そう、今グラファは絶対的不利の状況にあるハズだ。俺達4人に対し、奴は1人である。少なくとも、悠長に挑発している余裕など本来はあるハズがない。


「そうだなァ、確かに"俺自身の力だけ"ではお前らに勝つことはできんだろうよ」


 すると奴は、次の瞬間こう語り始めた。


「だが、今はこのホルスという女の肉体を支配しているからな」


「この体は素晴らしい……これだけの魔力を人間如きが有せるものなのだな」


「あるいは、この女は既に人にあらずなのか……まあ、そんなこと俺にはどうだっていい」


「この魔力と俺の魔力が融合した今、恐れるモノは何もないのだからな……!」


 ……成る程。今奴が乗っ取っているホルス様の体……これが、奴の自信の裏付けになっているわけか。確かに、ホルス様は戦いにおいても超一流であることを俺は記憶している。


 最も彼女は女王であるため、自ら戦場に赴くことはまずないだろうが……噂によればその実力は、イクシスやフォード将軍といった軍のトップをも凌ぐらしい。


 そんなホルス様の圧倒的な力に、グラファの厄介な呪文まで加わっているとなれば……ふむ、逆に不利なのは俺達の方かも知れない。最悪の事態だ。


「実質二人分の力を持っているというわけか……厄介だな」


 言葉では余裕ぶっていても、正直焦らずにはいられない。

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