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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第五章 「地獄にも勝る悪夢に終止符を」
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「聖剣への拘り」

 *


「……何とか掃討できたようだな」


 見渡すと、数百に及ぶであろう数の兵士達が気絶して築かれた人の山があちこちにあった。恐らく、城内の兵士達の殆どがこの一瞬のために動員されたのだろう。


 彼ら全員を殺害することなく気絶させるのは確かに骨の折れる作業だった。が、これで監視の目はほぼ無くなったことだろう。


 フォード将軍という強敵も倒したことだし、ここから先は真っ直ぐホルス様のいるであろう王室へと向かうことができる。


「マルク君、誰も殺していないだろうな」


「だーもう、うっせぇな殺してねえよ」


 俺は今一度、マルク君に確認を取る。彼は有能な戦士だが、人命を奪うことに関して全く躊躇いがない。彼の心は制御しないと、取り返しのつかない過ちを犯すこととなる。


「なら良い」


「チッ、加減するのが大変だったぜ畜生」


  マルク君には苦労をかけるが、彼自身の命が失われそうになる事態にでもならない限り、誰かを殺めるわけにはいかない。殺人は禁忌の罪だ。


「……ところでマルク君、さっきこの鉱石のことを"デスタメタル"と言ったが」


 と、まあ確認もその辺にしておいて、俺はまた別の疑問をマルク君に投げかける。フォード将軍との戦いの最中に彼が口にしていたことについてだ。


 俺が咄嗟に持ち出したこの魔石のことを、マルク君はデスタメタルだと言った。デスタメタルはオーブの原料になる特殊な鉱石。実に興味深い発言なので、俺は彼に真偽を問う。


「ああ。それは間違いなくデスタメタルだぜ」


 彼は首を縦に振った。これはデスタメタルだと。ならばと、俺は更にこの鉱石の謎を追究する。


「これをオーブに加工する方法は知っているか?」


 もしこれが本当にデスタメタルなら、これを使ってオーブが作成できるハズだ。俺はオーブが欲しい。オーブを使いこなして、もっと強くなりたい。俺はマルク君に、オーブの作成方法を聞いた。


「俺は知らねえな」


 しかしこれについては彼はNOと答える。しかしその彼の否定の言葉に俺は引っ掛かった。"俺は"という語句だ。わざわざこの語句をつけて答えたということは、つまり……。


「そうか」


「なら、君の仲間の中には?」


 ……彼自身が知らなくとも、彼の知り合いに作成方法を教えてくれそうな人物がいるということ。俺はそう睨み、彼に聞いた。


「一人、熱心なオタクがいてな。そいつなら知ってるだろうさ」


 すると思った通りだった。わざわざヒントをくれる辺り、マルク君はやさしい。


「この件が終わったら、その子と会わせてくれないか?」


「ふゥん、まあ良いけどよ。アイツに加工を依頼するならその分の料金はしっかり払えよな」


「勿論」


 成る程、彼もまた、俺に金を払わせようと目論んでいたわけか。ならばその誘いに乗ることにしよう。


 原石の地点で俺に力をくれるこのデスタメタル……もしもオーブになったら、どんなに心強い武器になるのだろうか。想像しただけでもワクワクする。


「アイザック様もオーブが欲しいのですか?」


「ああ。聖剣とオーブの二刀流で戦えるようになれば、俺自身の戦力アップになる」


 イリアが聞いてきたので俺は答えた。あくまで聖剣を使うスタンスは崩さず、聖剣とオーブの両方を使っていくつもりである。


「どうせオーブを作らせるなら、今後はオーブ一筋にしていけば良いじゃないか」


「それはできない。この聖剣を使うことは、俺が成すべき贖いでもある」


 イクシスの指摘、しかしそれでも俺は、自らの掲げるポリシーを貫く。例えオーブを手にすることになっても、だからといって聖剣を捨てることは絶対にしない。


 少なくとも、以前まで使っていた愛用の剣・グランを使っても勝てなかった強敵・ファランクスを倒せたのは紛れもなくこの聖剣のお陰だ。この武器は確かに諸刃だが、その分役に立ってる。


「私には、意地を張っているだけにしか見えんがな」


「それについては俺も同意見だね」


「ぐ……」


 だがその実用性を説いても、イクシスと並びにマルク君から理解を得ることはできなかった。普段は仲悪いのにこういう時は見事に結託する。


「わ、私はアイザック様の味方ですよ!」


「イリア……ありがとう」


 しかしそんな時でも、イリアだけは俺の意見に頷いてくれる。彼女は本当に良い側近だ。優しいし料理は美味いし、隊の中で圧倒的な人気を得ていることに心から納得できる。


「やれやれ。イリアはアイザックに甘いな」


 *


「――この先に、ホルス様がいる」


 こうして俺達はついに、ホルス様のいる王室前の扉へと辿り着いた。最上階にもなると、回廊の窓から吹き抜ける風が中々強い。


 あそこからここまでの地点までの道のりに、敵との遭遇は一切無かった。お陰で万全な状態でこの先に進めるわけだが、これを嵐の前の静けさと解釈してしまうと得たいの知れない恐怖が込み上げてくる。


「彼女に真意を聞き出すことしか、今回の一件の真相を知る手段はない」


「場合によっては……戦闘になるかも知れんな」


「っ……!」


 ホルス様との戦闘の可能性を俺が挙げるや否や、イクシスは真っ先に表情を険しくさせる。やはり、自らが従いし君主との戦いは、彼女にとって絶対に避けなければならない最悪の事態のようだ。

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