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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第五章 「地獄にも勝る悪夢に終止符を」
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「新たな仲間」

「お、おいアイザック!大丈夫かこんなに!?」


「前に稼いだ分がまだまだ残っている。これぐらいは必要経費だ」


 あの洞窟で得た巨万の富はまだ尽きていない。少なくともあの袋に入ってるぐらいの量なら渡せる。これからマルク君には、その幼い命を俺に預けてもらうのだ。寧ろこれでもまだ足りないぐらいだろう。命は金には変えられない。


 俺は惜しむことなく彼に金を渡した。マルク君はそれを受け取り、紐をほどいて中に入っている額を確認する。すると彼はニヤリと笑みを浮かべた。どうやらお気に召したようだ。


「ほー……気に入ったぜアンタ」


「良いぜ。ついてってやるよ」


 交渉は、彼の快諾によって成立した。手にした金を握り締め、俺の要求を飲む意思を示す。しかし、子供達の中には、彼の決断に不安の声を漏らす子もいた。


「でもマルク。君が居ないと僕たちはどうしたら……」


 男の子がマルク君に喋りかける。リーダーがいないというのは確かに、団全体としては絶対的な不安要素だ。取り仕切る者が居なければ、団の秩序が乱れる原因になるからだ。


 仲間から半ば引き止めのような言葉をかけられたマルク君。しかし彼は次の瞬間、男の子に金の入った袋を投げて渡すとこう言った。


「心配すんな。この金は一旦お前達に預けておく。好きに使え。俺は必ず生きて帰ってくるからな」


 仲間を信頼し金を託したと同時に、生還の約束をする。その時の彼の表情は、俺達に見せていたモノとはうってかわって、何の邪気もない、まさに普通の少年のそれだった。


 彼は、大人に対してはかなり警戒心を強めるが、逆に仲間の子供達には優しく接している。表裏のハッキリした子だ。憎む心と信じる心を併せ持っている。これがマルク君という人物か。


「仲間想いなんだな」


 俺は彼に、とりあえずの感想を述べてみる。


「そうじゃなきゃ、この路地裏ではやってけねえもんでね」


 親に捨てられた者同士で集まって、助け合って生きている。素晴らしいことだ。孤児は国の抱える負の財産というイメージもあるが、彼らは彼らで彼らなりに懸命に生きている。この、格差の広がりがちな世界で。


「俺も君のことが気に入ったよ。短い間だがよろしくな。マルク君」


 俺はそんな孤児の精神的な強さを知っている。だから俺はマルク君を雇った。彼なら、この命がけの戦いでも生き抜くことができる。そして、俺達の力になってくれる。俺はそう信じている。


「こちらこそ。アイザックさん……だったか」


「で、我が国が誇るイクシス将軍様に、……そっちの人は?」


「あ、私はイリアと申します!よろしくね、マルク君」


 というわけで、マルク君が俺達の仲間に加わった。彼が俺達3人の名前を覚えたところで、改めて俺達は城への進行を再開する。子供達が見送るのを俺達は手を振って返し、先を急いだ。


 しばらく歩くとイクシスが、俺に突然小声で話しかけてきた。


「……なあ、アイザック。コイツを信用して本当に大丈夫か?」


「……」


「……まあ、それがお前の判断だと言うのなら従う。私はそう決めたのだからな」


「だがこれだけは忠告しておく。……コイツの行動には常に目を光らせておけ」


「……分かってるさ」


 危惧と忠告を同時に行ったイクシス。その表情は若干険しかった。確かにマルク君はイマイチ捉えどころのない子ではある。だが俺はとある確信をしていた。断言できる。彼は絶対に俺達を裏切らない。


 これは敢えてイクシスには言わないが、俺には彼を信用できる根拠がある。少なくとも今回の敵が……"王政"である限り。


 *


「さて、城に侵入するにあたってだが……流石に正面は避けた方が良いな」


 俺達はある程度安全な場所を確保したので、ここで一旦輪を作り各々の楽な格好で座って、中心に紙を敷いてそこに俺が絵を描き始めた。ここから城までの経路を考えるための簡易的な国の見取り図である。


「イクシス将軍、城の人しか知らない隠し通路みたいなモノは無いのですか?」


「あるにはある。が……この路地裏に罠が仕掛けられていたように、その通路にも同様の罠がある可能性が高い」


「ふむ……」


 敵が通りそうな所にこそ罠を。策略家としては当然の考えだ。正面から通るのも、裏口を使うのも、どちらも奴らの思う壺というわけである。ではどうするか。俺達は思考を巡らせる。するとここでマルク君が口を開いた。


「城に上手く侵入することのできる道か?だったら俺達が前に開けた抜け穴があるぜ」


 さらっと今彼は言ったが、彼らが城に作った抜け穴の存在を初めて知ったイクシスは彼の言葉に驚愕し、そして憤慨した。


「な……抜け穴だと!?貴様!」


 その抜け穴をどのようなことに使われたのか、想像すればするほど悪用しか思いつかない。だが今はそんなことどうだって良い。それが城に入るのに有効な道なのなら、俺達はそれを使えば良いだけだ。


「落ち着けイクシス」


「マルク君、それを使って何をしようとしていたのかは聞かん。その抜け穴がどこにあるのか教えてくれ」


 イクシスの気持ちも分かるが、今は流すべきだ。俺はマルク君にその抜け道の在処を問う。


「ああ、良いぜ」


「最近、城の財が微量ながら賊に盗まれることが多かった。まさかその犯人がコイツらだったとはな……」


「それでどうする?俺をこの場で逮捕でもする気か?そんなことしても抜け穴の場所が分からずじまいになるだけだぜ?」


「くそ……!」


 彼の口ぶりから察するに、今は自分を咎めることができない状況なのを見越して彼はこの告白をしてきたのだろう。自らの罪をうやむやにした上で、作戦を滑らかに進める。巧みなコミュニケーションだ。生き延びるための術を練磨させている。

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