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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第五章 「地獄にも勝る悪夢に終止符を」
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「聖剣と鎖鎌」

「くっ……今助けるぞ、イクシス!」


「させないぜ!」


「ぐうっ……!?」


 伏兵の魔法に襲われたイクシスを助けるべく俺は駆けようとした。だがその行く手をこの少年は阻む。進みたくても進めない、子供の仕掛ける罠地獄。それにはまってしまったのが運のツキか。


「アイザック様!」


「アイ……ザック……!」


 二人が俺の名を呼ぶ。特にイクシスの掠れた声を聞くと早く彼女を助けなければと焦燥感に駆られるが、まずこの白髪の少年を倒さないことにはイクシスを救出することは不可能だ。


「はっ。自分の武器に翻弄されているような間抜けな奴が、この地獄を生き抜いてきた俺に敵うと思うのか?」


「くそ、調子に乗るなよ……!」


 少年に煽られたことで、怒りが高まっていく。もはや俺には手加減ができるだけの心の余裕がない。多少本気を出しても構わないと、俺は思った。この子が相手なら大丈夫だろう。というか、本気を出さないと俺が殺される。


「うぉぉぉっ!」


 俺はこの子が卓越した実力の持ち主だと信じて、思いきった攻めに出た。足をしっかりと踏み込み、十分に腕を加速させて剣を力強く横に薙ぐ。だが。


「遅い!」


 少年はこれすらもかわした。子供ならではの軽量な体を存分に利用して軽やかなステップを踏み、華麗に回避を決めてみせる。


「アイザック様っ!」


「イリア!今は俺の援護は良い!それよりも早くイクシスを!」


「でも……ううんっ、分かりました!すぐにイクシス将軍を助け――」


 俺を心配するイリアに指示を出す。今は俺の援護をするよりもイクシスの救出を優先したい。イリアは一瞬躊躇ったが、何とか俺の命令を聞き入れてくれた。しかし……。


「やぁ!」


「ひゃっ!?ちょ、邪魔しないでください!」


「全ては、ホルス様の……ために……!」


 そこへ、他の子供達による妨害が入る。子供達は武器を振りかざし、イリアの進行に割って入ってきた。イリアは思わず立ち止まってしまい、足止めを食らう。


「だ、ダメです……こちらもまず他の子を気絶させない限りはどうにも動けません!」


「くそ……!」


 思ったよりもずっと戦況は困難なものになっていた。絶望的というわけでもないが、それとはまた違った嫌らしい感覚がある。苛つき、だろうか。


 焦るあまり余計に行動に滞りが発生している気がする。だが、そうと分かってはいても焦らずにはいられない。仲間が危機に瀕しているのだ。冷静な戦闘などできるか。


「ほら、よそ見ばっかしてるなよ!」


「くっ!」


 まるで、沼地の中を何の装具もなく歩いているかのような感覚だ。急ぐために走ろうとすると逆にどんどん沼の底へと引きずり込まれるような。下手したら、パワーが高いだけの魔物を相手にするよりずっと厄介である。


「ッ!?ぐぉぉぁぁぁ!!?」


 クソ……ッ!ここにきて聖剣の呪いも発動し始めてきた。イリアに回復を任せっきりだった分、反動のように一斉に痛みが襲いかかってくる。


「アイザック様っ!?」


「ダメだ……奴はイリアのサポートを失ったことによって今、直に聖剣のダメージを受けている」


 二人の心配する声が聞こえる。腕にまとわりつく破邪の光。だがこの痛みはエリス様の無念を晴らすために俺が背負うと決めた宿命。俺はこの宿命に抗いはするが、逃れるようなことはしない。立ち向かうのだ。そう、全てに。


 俺が自らに課したこの試練を、絶対に果たしてみせる。確固たる決意と共に俺は命の灯火を燃やし続ける。例えあの時のように皮膚が剥がれ落ちようとも、俺はもう止まらない。この火が俺の息と共にある限り。


 何度でも、限界を越えて。


「はぁ……はぁ……おのれ……ッ!」


「ははは!!これで……終わりだァ!」


 少年は、高らかに笑いながら鎖鎌を振り下ろす。


「ま……まだまだッ!」


 俺はその一撃を、力と精神を振り絞って防いだ。


「ちィ!まだ耐えるか」


「俺はここで朽ち果てるわけには……いかないッ!」


「うぉぉぉっ!」


 鎖鎌と剣が織り成す凄絶な戦い。散った火花にその身を焦がしながら俺と少年は互いの力をぶつけ合う。俺は少年の巧みな武器さばきを、信念ともいえる剣で貫こうとした。


 そして、あと一歩で突き出した剣が彼に届きそうだった、その時。俺は咄嗟の判断で剣の軌道をズラす。危ないところだった。あのまま行ってたら間違いなく彼を刺していた。


 一方で少年も自らの危険を察知し、遅ればせながらも俺との距離を一旦取る。俺も少年も息切れを禁じ得なかった。滝のような汗が止まらない。


「なんて奴だ……くそ!」


「はぁ……はぁ……」


 俺はふとここで、あの魔石の存在を思い出した。ポーチから紫色に光る魔石を取り出す。そしてそれを緩やかな手付きで撫でた。段々、俺の精神が安定していく。聖剣によって神経が疲弊した時にこの魔石は本当に役立ってくれる。あの時質屋に売らなくて良かった。


 魔族としての性質に頼るようで、この治療の仕方には若干の背徳感が伴うが、使える物は使った方が今は良い。


「!……あの石は、まさか……」


 ふとこの石を見てイクシスが何か言いかけた。が、今はそれを気にしている暇はない。


「ふぅ……ふぅ……そうだ」


「俺にはまだ……この魔石が……ある……!」


「これを握ってれば、まだ何とか……戦える……!」

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