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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第五章 「地獄にも勝る悪夢に終止符を」
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「サンメラ再び」

 *


 馬の足が砂漠の大地を踏み鳴らしながら猛進する。砂を巻き上げ、陽炎をかき分け、俺達は急いでサンメラ王国まで戻ってきた。その頃には既に日が地平線に差し掛かっていて、もう少しで夜が訪れそうになっていた。


 入り口の門の前で俺達は馬から降り、壁を見上げる。外界と隔絶されたサンメラ王国領地。あの壁の向こうに、フォード将軍と今回の一件を仕組んだ真犯人がいる。


「さて、戻ってきたわけだが……」


「ここからどうするか、ですよね」


「恐らく一番手っ取り早いのは、城に行って直接フォードに会うことだろう」


 到着後、俺が口火を切り、イリアが話を差し込んで、イクシスが結論を導き出す。流れるように進んだ会話は至ってシンプル。そして出した結論もまた至極単純だ。城に行って、そこにいるであろうフォード将軍に会って彼と話をする。


「そうだな。よし、そうと決まれば乗り込むぞ」


 特に異存もなかったので俺は彼女に同意し、早速門を通り抜けてサンメラ領内に入ろうとした。だが足を一歩踏み出そうとしたその矢先に何故かイクシスに突然左肩を捕まれた。


「いや、ちょっと待て」


「何やら様子が変だぞ」


「何?」


 神妙な面持ちでイクシスは言う。様子が変って、何の様子がおかしいというのか?俺はふと彼女の目線の先を見てみる。するとそこで、門番を任されている二人の兵士が立っているのが確認できた。


 銀色の鉄製の甲冑に、特に特筆すべき点の無い普通の槍。どちらも王宮から支給された装具だろう。敵と戦うための最低限の装備といった感じだ。


 イクシスはそんな彼らの様子が変だと言うのか?だが、変な所など一つも――


 ――いや、待て。あった。たった今気づいた。


「門を見張っている兵士さん達……黒い煙に覆われていて、目も何だか怖い感じです」


 そう。イリアがまさに今言った通りだ。彼らの身に起こっているこれらの異常……ふむ、ますますグラファの怪しさが増すばかりだ。もうここまで来ると逆に奴が犯人じゃなくて誰が犯人なんだよと言えるレベルである。


 しかも例によって彼らからは敵意がプンプン漂っている。既に槍の刃先をこちらに向け始めている。その鋭い瞳で見据えるは俺達の首だろうか。あの槍自体は大した武器ではないとはいえ、刃を向けられるというのはやはりどうしても冷や汗が出るものである。


「これは……」


「ああ。いよいよ怪しくなってきたな」


 俺達は一触即発の雰囲気を察してそれぞれの武器に手を添えた。まだ引き抜きはしないが。特に俺なんかはこの地点で引き抜いても体力を無駄に消耗するだけである。相手が襲いかかってこない限りは、まだ、剣は納刀したままの方がいい。


「止まれ。これより先は通すわけにはいかない」


 と、右の兵士がここでようやく口を開く。その言葉にはやはり強い敵意が込められていた。話し合う気など毛頭無いというのが一瞬で聞いてとれる。


「ほう?この私、サンメラ王国の将軍・イクシスであってもか?」


 一方でイクシスも負けじと、彼らの上司にあたる身として相応に高圧的な態度で対抗した。冷ややかな目付きと言葉遣いはまさに氷河が如く。聞いていてコチラまでもがヒヤヒヤする程である。


「誰であっても、通すわけにはいかない」


「消え失せろ」


 しかしそれでも、二人が退くことは一切無かった。寧ろ言葉を交わす毎に攻撃的な姿勢は強くなる一方で、まるで物怖じする様子を見せない。人は操られているとこうも果敢になれるのか。彼らの目が覚めた後のことを考えてみると何とも恐ろしい。なぜなら。


「チッ……!」


 イクシスのその舌打ちが、俺に底無しの恐怖を覚えさせたからだ。あれは結構本気で起こったときにするヤツである。そして次の瞬間イクシスはオーブをポーチから取り出し、詠唱を始めた。


「≪星の魔玉よ 薙刀になれ≫!」


 星の力を司りし魔法の玉は、彼女が織り成す言葉によってその姿を自在に変える。まるで主に従う獣のように。そして今回彼女が選んだのは薙刀の姿。


 細長い柄に対して短い刀身。複数の敵を"薙"ぎ倒すのに適した"刀"。それが薙刀だ。何でもこの武器は、彼女が東洋の地に赴いた際にその形状を伝授されて修得したモノだという。


「はぁぁぁぁっ!!」


 イクシスはそれを魔力全開で振るった。怒りに身を任せたかのような怒濤の一閃。斬撃は彼らの鎧を切り裂いた。


「ぐっ……!?」


「がぁ……!?」


 彼らは短い悲鳴をあげて地面に倒れこむ。血が出なかったあたり、刃は彼らの肉には直接触れなかったのだろう。恐らく、鎧が破壊された時の衝撃によって気絶したモノと思われる。が、イクシスは結構全力だったために俺は彼らの安否がどうしても心配だった。


「フン、兵士の貴様らが私に挑もうなど百年早いわ」


「お、おいイクシス……まさか殺したんじゃないだろうな?」


 俺は一応、イクシスにその辺りの配慮があったかどうかを聞いてみる。もし彼らを殺してしまうようなことがあったら、それはあまりにも罪深き所業だ。


「まさか。こいつらもどうせ操られているだけに過ぎないだろう。断罪すべきは元凶であるグラファ、その者だけだ」


 イクシスのその解答を聞く限り、彼女はとりあえず峰打ちだけはしておいてくれたらしいことが窺える。それを聞いて俺はホッとひと安心した。


「良かった……それにしても、城内の兵士さん達は皆こんな感じなのでしょうか?」


「あまり考えたくはないが、まあそうだろうな」


「うぅ……次からは私達も戦わなくちゃ、なんですよね」


 門の地点でこうだと、街中や城内ではさらなる足止めを食らうこと必至だ。また、こんな言い方をしては何だが、討伐することができない以上、手加減をする器量も必要になってくる。

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