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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第四章 「星々が如く煌めきの少女」
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「仲間の契り」

「……本当に、すまなかった」


 イクシスは改めてそう謝罪した後、ナイフを受け取った。ナイフを元のオーブの形に戻し、腰に下げたポーチの中に収納する。


「ならせめて、誓わせてくれ」


「?……何をだ?」


 そう言うとイクシスは右手の手のひらを握り、それを胸に添えて真剣な表情で俺を見上げた。俺は彼女の迫力ある面持ちに少し驚く。


「私はもう、お前を見下すような真似をしない」


「お前の命令ならば、何でも聞こう」


 ……俺は、彼女のその"誓い"を聞いて目を丸くしてしまった。あのイクシスが、俺の言うことを何でも聞くと言ったのか。夢じゃないだろうか。もしかしてイクシスは、俺のことを認めてくれたのか。


「イクシス……どうしてだ……?」


 俺は信じられない。いや、仲間として彼女のことを信じるべきなのだろうが、どういう風の吹き回しでそんな誓いを立てたのか気になって仕方がなかった。俺は別に彼女を負かしたわけでもなく、単純に薬を飲ませて彼女を正気に戻しただけだが……。


「決まっているだろう。私はお前達に危害を加えたにも関わらず、そんな私を助け、許してくれた」


「そして、仲間だと言ってくれた」


「昨日仲間になったばかりの私をそこまで想ってくれていたお前達の言葉に耳を傾けないわけにはいかない。命令とあらば何でも従おう」


 ……なるほど、そういうことか。だがそれは当然のことなんだがな。仲間とはそういうものだ。しかし彼女がこうして申し出てくれているからには俺としても水を差すつもりはない。


 だが、何でもというのは言い過ぎだ。俺は彼女に右手を差しのべ、言葉を付け加えておく。


「……何でもじゃなくて良い。お前にはお前の考え方があるだろうからな」


「確かに言うことを聞いて欲しい場面もあるにはあるが、まず前提に尊重されるべきはお前達の意見だからな」


「……アイザック」


 俺達は主従ではなく、仲間だ。勿論このパーティのリーダーを執るのは俺だから、俺が決めた方針にはある程度従って貰わなくちゃ困るが、だからといって何でもかんでもメイドのようにハイハイ言うことを聞く必要もない。


 俺が間違えることだってあるんだ。そういう時は逆に反論して貰わなくちゃパーティは変な方向に進んでしまう。イクシスはそういう意義のある反論が出来る子だと思っている。 モノをハッキリ言う人もパーティには必要なのだ。


「そうですよイクシス将軍!もっと貴女らしくて良いんです!」


 イリアの言うとおりだ。そう。俺達はイクシスのそういう所も含めて受け入れるつもりだったからな。彼女は彼女らしくてこそ素晴らしい。


「二人とも……」


「……私は、良い仲間を持ったのだな」


 俺は少なくともそうでありたい。魔王を倒すまで、"絆"の力は絶対に欠かしてはならない。絆の繋がりは、魔物にさえ絶対に切り離せない武器だから。


「……改めてよろしく頼む。アイザック、イリア」


「ああ」


「はい!」


 イクシスは俺の差し出した手を力強く握る。俺達はこうして、もう一度仲間の契りと握手をかわしたのだった。


 *


「……フォード将軍が、私を闇に陥れた張本人だったというのか」


「俺もそう思いたくはないがな……状況見る限りだとそんな感じだった」


「くそ、私としたことが奴の真意を読み取ることができなかった……」


 俺達は今、緊急の作戦会議を開いている。主な議題は、フォード将軍の常軌を逸した行動についてだ。彼は俺達が魔物を掃討した途端に突然姿を現し、イクシスに怪しげな電流を流し込んだ後、異次元の扉を通って去ってしまった。


 今のところ彼の真意についての手がかりは一つ。彼が口にしていた"全てはホルス様のために"という謎めいた言葉だけ。


「ホルス様のためにと言っていたようだが……奴は何を血迷ってそんなことをほざいていたのだ?」


「分かりません……ですが、彼がもしもホルス様の命令で動いていたとすれば、元凶はホルス様ということになります」


「バカなことをッ……いや、すまん。ここで声を荒げるのは間違っているな」


 イクシスはイリアの推測に憤慨しそうだったところを何とか感情を抑えて冷静になる。彼女のホルス様を信じたい気持ちは最もだ。俺達だってできればホルス様を疑いたくない。だが現状として手がかりがそれしか無い以上、彼女に悪意があるかどうかを確かめる必要はあるだろう。


 ……いや、待て。俺はここでもう一つ気づいた。フォード将軍と操られていた時のイクシス……この二人には共通して発生していたとある身体的な異常がある。それは、見覚えのあるあの黒い煙のような気体だ。あの気体は、二人の体から漏れるように立ち込めていた。そしてあの気体……あれは、グラファが纏っていたそれと酷似していた。


 俺はそのことを二人に伝えた。するとイリアは"ええっ"と驚き、イクシスは"グラファだと?"と首を傾げる。俺はグラファについてイクシスに教えた。


「……なるほど。とするとアレか。今回の一件にはソイツが一枚噛んでいる可能性があると」


「すまない。俺があの時奴を仕留め損なったせいだ。逆に首を切らなくちゃいけないのは俺の方かも知れない」


「バカなことを言うな。悪いのは全てそのグラファとかいう卑劣な魔物だ。断じて許しておけん」


 別に奴の仕業だと確定したわけでもないのだが、可能性としてはかなり高い。だが、もしそうだとすれば逆に解決策もある。


「もしあのグラファの仕業なら、フォード将軍も奴に操られてあのような行動に移ったのかもしれません」


「ならこの薬で彼の目を覚ませれば、彼から詳しい話を聞くことも可能かと」


「なるほど」


 イリアの提案に俺達は頷く。フォード将軍に例の薬を投与すれば、恐らくイクシスと同様彼も正気を取り戻すだろう。ひとまずの目標はそれに決定だ。その後でホルス様のことも考えれば良い。

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