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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第四章 「星々が如く煌めきの少女」
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「謎を残す槍使い」

 刹那、フォード将軍の腕から赤黒い電流が流れる。電流はイクシスの全身に伝い、彼女を電撃の縛によって閉じ込めた。


「ぐぁぁぁぁっ!?」


「イクシス!!」


 いきなり現れたフォード将軍がイクシスに何をしようとしているのかは分からないが、少なくとも彼女に危害を加えようとしていることは間違いない。


 俺はフォード将軍と危険な人物と判断し、イクシスを守るため再度剣を鞘から引き抜いた。


「ぐっ……やめろ!フォード将軍!」


 まずはフォード将軍とイクシスを引き離さなければならない。俺は二人の間に割って入り、剣を振るった。だがフォード将軍は俺の動きを瞬時に捉え、瞬間、黒い煙のような気体を腕に纏いながら背に携えし一本の槍を左手で取り出すとそれで俺の剣撃をガードした。


「なっ!?」


「お前がホルス様のおっしゃっていた魔族の聖剣使いか……お前の相手は俺ではない。どけ」


 そう吐き捨てるとフォード将軍はその怪力によって槍を豪快に振り抜き、鍔迫り合っていた俺を弾き飛ばした。まるで人形のように自分の体が吹っ飛んでいくのが分かる。


「ぐわぁぁっ!?」


「アイザック様!?」


 回りくねる視界。地面に転がり落ち、あちこちに擦り傷を作る。震えながら立ち上がろうとする俺のもとへイリアがすぐに駆けつけた。例によって回復魔法で俺の傷を癒してくれる。


 なんてパワーだ……あの力、並みの魔獣より断然強い。本当に彼は人間なのか。彼女からの治癒を受けて何とか立ち上がった俺だが、衝撃による目眩が未だに若干残っている。しかし今は立ち眩みなどで立ち止まっている余裕はない。


 なんとしてでもイクシスを助けなければならない。彼女はまだ電流の檻に囚われたまま苦悶の表情を浮かべている。


「くそっ……うぉぉぉぉぉっ!!」


 俺は諦めずにフォード将軍に立ち向かっていく。彼が力で強引に敵を捩じ伏せるというのなら、俺は速度で翻弄する。フェイントを混ぜた俊敏な動きで俺は、フォード将軍の背後に回り込み一閃を叩き込んだ。


 だがフォード将軍はそれすらも見切った。槍を後方に振るうだけという最低最小限の動きで彼は俺の太刀筋をいとも容易く遮る。彼の槍に剣を弾かれた時、俺は岩でも叩き斬ろうとしているかのような無謀さを覚えた。


「バカな……!?」


 まるで隙がない。完璧かつ堅牢な守りだ。盾で身を守るランサーや、咄嗟の場面のみ槍を盾代わりにするランサーはザラに居るが、常時槍で身を守るランサーは滅多にいない。何より効率が悪いし、槍の強度を落とすこともあるからだろう。


 だがフォード将軍はそんなこと一切お構いなしに槍による防御を平然と披露する。まるで、それが本来の使い方であるかのように。当然のごとく無表情でやってのける。俺は一瞬思ってしまった。彼は化け物かと。


「そろそろか……」


 と、フォード将軍は何かの頃合いを見計らってか、突然電流を流すのを止めた。そして呪文を唱え、目の前に異次元の扉を開く。彼はその中に入っていった。彼は逃げるつもりだ。


「ま、待て!」


 俺は彼を追おうとする。しかし異次元の扉はフォード将軍が入るとすぐに閉じてしまった。俺は虚空に突入しようとして、勢い余って転びそうになる。


「くそ……!」


 彼が一体何を目的にしてこんな真似をしたのか、結局その疑問は謎のまま彼と共に異次元の彼方へと去っていってしまった。


 まるで成す術が無かった自分に対し心底怒りを感じる。拳を血が出そうなくらい握り締め、自分の無力さを悔やんだ。だが、異次元の扉が俺が入る前に閉じたのは、今になって考えてみると幸運だったかもしれない。もしあのまま何の勝算もなくあそこに入ってしまっていたら、イクシスをここに置き去りにしてしまっていたのだから。


 感情に身を任せそうになっていたところを、時の運によって助けられた。俺達は一旦フォード将軍を放っておいて倒れているイクシスのところへすぐに向かう。彼女に目立った外傷はなかったが、目を閉じたままピクリとも動かない。


「大丈夫か!?目を覚ませ!イクシス!!」


「イクシス将軍!!」


 俺達の必死の呼び掛け。するとイクシス将軍は徐々に微動していった。命に別状がないことを確認した俺達はひとまずホッとする。


 だが、もしかしたら後遺症があるかもしれない。すぐに街に戻って医者に見せなくてはならない。俺はイクシスを担ごうとする。だが、次の瞬間……。


「……っ!?」


 ……イクシスが、目を突然大きく開いた。その瞳は、赤く染まっていた。そして。


「……全ては、ホルス様のために……」


 あの時のフォード将軍と同じことを言った後、徐に自力で立ち上がり、オーブに呪文を唱え始める。オーブは斧の形を形成した。俺達は彼女の意味不明な行動に戸惑い、ただ眺めることしかできない。


「イクシス……?」


 イクシスの様子がおかしいということだけは分かる。見ると彼女もまたフォードと同じように黒い煙のような気体を腕に纏わせてあた。あの煙……見覚えがある。あれはまさか……。


 ……と、俺が嫌な記憶を回想しようとした、その時。


「はぁッ!」


 イクシスが、突如として俺に斧を振るってきた。

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