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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第四章 「星々が如く煌めきの少女」
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「もう一人の将軍」

「アイザック様!今度は後ろです!」


 ハッとなった俺はすぐさま後方に振り向き、咄嗟に剣を構えて防御の姿勢を取る。すると爆弾がすぐそこまで迫っていた。俺がそれを認知してから間もなく爆発。風圧が押し寄せ飛ばされそうになるも、剣を盾にしてしっかり踏み込むことで何とか踏ん張った。


「危ないな……」


 動体視力が上がっているとはいえ油断は禁物。イクシスがその圧倒的な力で敵を次々となぎ倒しているから混戦は避けられているが、1体のモンスターだけに気をとられていると別の方向から奇襲を受ける。


 今はボマー・ドラゴンを倒すことが最優先だ。だが、周りの風景にも気を配らなければならない。俺は視野を広くすることを意識しつつ、再び進み始めた。


「ゴポッ!」


 ボマー・ドラゴンは俺が接近するや否や、口から爆弾を吐き出して俺を迎え撃つ。俺は爆弾の落下地点を進みながら瞬時に予測して回避していった。イリアも俺の後を追う。ボマー・ドラゴンの爆弾は威力は高いが、動きは読みやすい。ある程度リズムを掴めれば攻略するのは簡単だ。


 そして十分に距離を詰めたところで、俺は剣を奴のはらわたに刺し込んだ。ボマー・ドラゴンが悲鳴をあげる。俺はそのまま柄を捻ってまるでドリルのように刀身を回転させた。傷の穴を抉じ開け、奴の腹を深く抉っていく。やがてある地点まで到達すると、俺はそこで剣に魔力を込めた。


「はぁぁぁぁ……ッ!!」


 暗黒の魔力をたぎらせ、聖剣に伝える。すると聖剣はその魔力に反発して、聖なる光の力を解放した。闇によって光を覚醒させる。俺にしかできない必殺コンボ。ファランクス戦でも見せたその奥義を、今ここで解き放つ。今回はイリアのサポートがあるから、途中で力尽きる心配は無い。


「うぉぉぉぉぉッ!!」


 高出力で放たれた魔力は、奴の腹の中で暴発した。溢れんばかりの光が、そして闇が、入り交じって混沌の呪文を完成させる。奴は内部にエネルギーを叩き込まれたことで破裂し、散り散りに消し飛んだ。死体も残らず木っ端微塵である。


「ぐっ……はぁ……はぁ……」


 反動で俺は吹き飛ばされ、しりもちをついた。これでボマー・ドラゴンも撃破完了である。ふと辺りを見渡してみると、既に魔物は皆倒れていた。魔物達の死屍累々の中心で、軍服の少女……イクシスが煢然と立ち尽くしている。


「どうした?アイザック。随分疲れているようだが」


「そういうお前は余裕そうだな……」


「当然だ」


 流石といったところか。イクシスにかかればあんな敵でも一網打尽。俺の数倍の速度で殲滅してしまう。俺はひとまず立ち上がり、彼女のところへと駆け寄った。イリアもテクテクとついてくる。


「流石はイクシス将軍ですね!」


「あっ……で、でも!アイザック様も凄かったですよ!」


 と、優しいイリアは俺に対してもこういったフォローを入れてくれる。ただ、イクシスと比べると明らかに霞んでいることは自分でも分かっているので何とも喜べない。まさかイリアの補助があってもイクシスの次元に追い付けないなんて。


 俺に力が無さすぎるのか、あるいはイクシスが強すぎるのか、またはその両方か。少し考えてみたがものの数秒で嫌になった。何にしてもこうも実力の差を見せつけられると流石に面白くない。いや、敵を撃退できたことはまた別に素直に喜ばしいのだが。


 とにかく、嘆いているだけで守れる命など一つも無い。俺はもっと修行を積むべきだと改めて実感させられた。というか今度からイクシスに稽古をつけてもらおうかなと本気で考えている。彼女が引き受けてくれるかどうかは置いておいて。


「やれやれ。そんなことじゃ先が思いやられるな」


「まあ良い。ホルス様に報告するため、一旦城に戻るぞ」


 と、イクシスが踵を返してサンメラに戻ろうとしたその時であった。俺達の進もうとしている方向に、一人の男が立っているのが見えた。彼は金髪と褐色の肌を併せ持ったガタイの良い男で、あの武器……あれは、二つの槍だろうか。とても重そうであるが彼はその筋肉質な体で平然と背負っている。


 彼は無表情でこちらをじっと見つめていた。敵意は感じられないが、何となく不気味な雰囲気を放っている。彼は一体何者だろうか。少し警戒していた俺達。しかしイクシスは、彼を知っていたようだ。


「"フォード"!」


 "フォード"。イクシスは彼をそう呼んだ。フォード……その名を聞いて俺も思い出した。イクシスと並ぶサンメラ王国の将軍・"フォード"。比類なき怪力の持ち主として名高い歴戦の戦士だ。


「フォード将軍!?あの方がですか!?」


「そのようだな……」


 そうだ。あの二つの槍はフォード将軍の最大の特徴。あれらを両手に持ち、同時に扱いながら戦うという特異すぎる戦法の使い手なのだ。あれ一本持つだけで普通なら両手を要するところ、彼は片手で軽々と使いこなすのだという。


 あの武勇は本当だったのか。全くサンメラという国はつくづく敵に回したくない国である。イクシスとフォード、この双璧がサンメラの守りを絶対的なモノにしているのだ。それにしてもフォード将軍は、援軍に来てくれたのだろうか。だとしたら無駄足をさせてしまって申し訳無いところだが……ならなぜ彼は、一人で来たのだろう。


「お前も来ていたのか。だがすまないな。魔物達はもう――」


 ……この時俺は、フォード将軍から不穏な気配を感じ取った。フォード将軍に近づくイクシス。彼は彼女に対し何かをするつもりである。その何かが何なのかはこの地点では分からなかったが、俺は嫌な予感しかしなかった。


 突発的に逃げろと言おうとしたが、その前にフォード将軍はニヤリと笑って先手を撃つ。彼は右腕をイクシスの方へと向けると何らかの魔力を込め始めた。


「え……」


 フォード将軍を信頼していたばかりに、彼の穏やかじゃない突然の行動に困惑するイクシス。しかし彼から逃げるには反応が遅かった。


「フォ、フォード……?」


「……全ては、ホルス様の為に……」

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