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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第四章 「星々が如く煌めきの少女」
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「連戦」

 グレイト・タイガーの胴体に斬り傷をつけた。無数の血管を引き裂き、傷口から夥しい量の血が噴出する。返り血を浴び、俺の視界は赤色に染まった。


「グルルッ!!」


 だが、グレイト・タイガーもやられっぱなしではない。自らの命の危機を察するや否や、その切れ味鋭そうな爪を思いっきり振るってきた。


「がはっ!?」


 直撃を受ける。素早く、かつ広範囲にわたる攻撃。俺は全身を深く抉られ、裂傷の痛みに激しく悶える。するとイリアがすぐさま俺に回復の呪文を唱えてくれた。おかげで俺の体力がみるみる内に回復していき、血も一瞬にして引いた。


「はぁ……はぁ……」


 ただ、引き裂かれた時のショックだけが根深く残っている。そのせいで回復後も思うように行動できない。その隙を突いてタイガーが更なる攻撃を仕掛ける。


「グルッ!」


「くっ!」


 爪と剣が激突した。グレイト・タイガーが生まれながらに持つこの爪は、成長を重ねるごとに強靭になっていく。特にコイツの爪は他の固体よりも断然強く、金属と錯覚するくらい頑丈。剣で断ち斬り破壊しようとしても中々できない。


 俺は剣を斬り返し、一旦鍔迫り合いから脱出した。そして距離を取り、心拍と精神を安定させる。戦いの最中に焦りに囚われるとそこを掬われる。相手の思う壺にならない内に間合いを取っておけば、そうなる心配は無い。


 そして気持ちを落ち着かせたところで再び進撃。俺は聖剣の炎に耐えつつ剣を振りかざし、タイガーに向かって一気に振り下ろす。刃は、タイガーの頭に触れた。


「グギャァァッ!!?」


 すると、タイガーの顔は真っ二つに裂けた。刀身は見事タイガーの肉を通過し、断ち斬る。振り抜き、地面に刃が衝突した頃、血が一気にドバッと奴の顔面から噴射された。


「っ……」


 自分でやっておきながら惨い有り様だと思う。しかしこれは人間と魔物の殺し合いだ。イチイチ気にかけている余裕はない。地面にひれ伏すタイガーの死体を見下ろした後、俺は次なる敵のところへと向かっていく。


「ギャォォォッ!!」


 ヒートフル・ワイバーンが俺の前に立ちはだかった。俺は右腕をイリアに癒してもらいながら奴と相対する。俺は走る足を止まらせることなくそのまま突き進んだ。剣の切っ先をワイバーンに向けて、突進攻撃を仕掛ける。


 グサリと、剣はワイバーンの腹に突き刺さった。短い悲鳴をあげるワイバーン。俺はその状態で力強く回転し、一気にワイバーンの肉を斬り裂く。血塗られた刀身がまた赤く染まった。


「グギャアア……!?」


 痛みに苦しむワイバーン。しかし俺は奴のその哀れでもある姿を前にしても一切の躊躇いを捨てて追撃を加える。ここでコイツを殺しておかなければ、今度危険に晒されるのはサンメラの人々だ。


「うぉぉぉぉぉっ!!」


 全身全霊、渾身の力を込めて放った斬撃は莫大なる聖剣の炎を纏った。するとワイバーンは自らを防衛するため、力を振り絞って口から火炎放射を吹き放つ。しかし、常日頃から聖剣の炎を耐え抜いている俺にはその程度の炎など通用しない。培われた耐性は竜の炎をも弾き返す。


 だが、ここは混戦の戦場。ここまでワイバーンを追い詰めたと思ったら次の瞬間、邪魔立てが入った。トドメを刺そうとする俺の右方で、突如として爆発が起こる。俺はその爆風に巻き込まれた。


「ぐはっ!?」


 新手による奇襲だった。これによって俺の攻撃は中断され、ヒートフル・ワイバーンを仕留め損ねる。俺はワイバーンに反撃されないように、冷静に奴との間合いを一旦取った。


「くっ……!?」


 そして、先程の爆発を起こした犯人を、首を振って探していく。目を細め、時に砂煙をかき分け、俺は爆弾と思しきモノが飛んできた方向に歩いていった。そしてその先に、ソイツはいた。


「こいつは……!!」


 ソイツは竜の一種だが、ウイング・ドラゴンなどと違い翼は生えていない。そして腹が丸々と膨れており、肥満体型である。表情もその体型から察せる通りふてぶてしく、下卑た笑いが何とも憎らしい。


 奴は"ボマー・ドラゴン"という魔物。あの膨張した腹の中で爆弾を生成し、それを口から吐き出すという変わった攻撃方法を用いる。その爆弾が持つ火力は中々のモノで、一般的な大砲の兵器に匹敵する。そんなものを生身の人間が直撃を受けたら一発で爆発四散だ。


「グポポ……」


「アイザック様。あの魔物を侮ってはいけません。すぐに私が補助魔法をかけます」


「頼む」


「≪その人に捧げよ、精霊よ≫」


「≪敵と闘う力と、何者も追い付かせない程の速さを≫!」


 攻撃力上昇と、速度上昇の二つの効果を付与する補助魔法が詠唱される。魔法陣が俺を囲い、力を与えた。筋肉が引き締まっていくのを感じる。これなら爆弾を回避しつつ、確実に奴を仕留めることができるだろう。


「グォォッ!!」


 と、そこへ体勢を立て直したヒートフル・ワイバーンが俺の背後を急襲した。しかし一時的に俊敏になっているおかげで俺はその突然の攻撃にも対応できる。奴の引っ掻く攻撃の動きを捉え、俺は軽やかなステップでかわした。そして聖剣の炎を迸らせ、ワイバーンに向けて射出する。


「グオッ……!?」


 ヒートフル・ワイバーンは耐熱性の高い鱗を纏っているため、基本的に炎による攻撃には強い。だが聖剣の炎は光の属性も持ち併せているため、ワイバーンに対しても遺憾なく火力を発揮することができる。


 そして奴が怯んだところへ最後の一撃を振り払った。剣を振り上げ、下から上へと軌道を描く。会心の斬撃は見事、ワイバーンの致命傷となった。


「グォォォ……」


 腹部に強烈に亀裂を入れられたワイバーンは地面に倒れ、死体をその場に残して息を引き取った。強力な魔物を二体ほど倒したところで、段々俺の集中力も上がってきた。これなら、長丁場となっても戦い続けられるだろう。

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