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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第四章 「星々が如く煌めきの少女」
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「主君との別れ」

「魔力の……塊……?」


「そう」


  俺は一旦頭の中でオーブについて整理する。まず、あの球体の製造には"デスタメタル"という鉱石が必要。そして、オーブに呪文を唱えることで新たに作られるあの武器は、魔力の塊。


「魔力故に、空気抵抗などといった一般的な物理現象には従わないことがある」


「それでいて、オーブの持つ魔力の破壊力は顕在。だからあの斧は非常に軽量にも関わらずあの威力の一撃を叩き出すことができる」


  成る程。段々話は掴めてきた……が、強すぎやしないか?と俺は思った。ハッキリ言って反則といちゃもんをつけたいくらいだ。


  軽量にして重い一撃……武器が目指すべき理想像に、あのオーブは到達してしまっている。俺もイリアも、その圧倒的な性能に息を飲むばかりであった。


「このオーブの名は、≪星の魔玉―ギャラクシーオーブ≫という」


「星々の力を借りて戦う、私の最強の武器だ」


  ギャラクシーオーブ……それが、イクシスの扱う武器。星々の力を借りるなんて、なんと壮大な響きだろうか。


  これが、サンメラ王国最強の魔導士・イクシス……その名に恥じない無類の強さ。俺は心から彼女に尊敬の意を抱く。それこそ、こちらの方が従いたくなってしまう程に。だが俺はこの旅を続ける以上、彼女すら越えて従えなくてはならない。


  この上なく大きな壁だ。ザザンヒルに到着するまでに越えられるだろうか。自信は皆無に等しい。少なくとも、聖剣に未だに殺されかけるような現状では。


「……素晴らしい力だ。イクシス」


「俺はお前を仲間に迎えられて、本当に嬉しく思う」


  俺は、嘘偽りない、お世辞など一滴も含まれていない率直な言葉で彼女を歓迎した。今はまだ言うことを聞いてくれないにしても、彼女が俺たちのバックについてくれればそれだけでありとあらゆる敵を一網打尽にできる。


  彼女は――イクシスは、まさに。


「お前はまさに、一騎当千の魔導士だ」


  一人で千の敵をなぎ倒す、孤高にして最強の戦士。それが一騎当千の戦士。彼女こそ、その名に相応しい実力者。


  攻撃力のイクシスと、補助のイリア……この二人が味方ならば、例え聖剣の呪いに蝕まれようともどこまでだって行けるだろう。魔王なんて敵じゃない。


「そ……そうか?照れるな……」


  ……と、俺があまりにも褒めちぎったモノだからか、彼女は赤面して目を逸らし、右手の人差し指で赤くなっている頬をさする。あれ、意外と照れ屋なのだろうか。これまでの厳格なイメージが崩れ落ちている。


  まあ、イクシスも冷静に考えてみればまだ少女だ。立派な立ち居振舞いをしていても時にはこのように歳相応な部分を見せてしまうこともあるだろう。寧ろ、その方が親しみがあっていい。


「ゴ、ゴホン!まあそれはさておいてだ!」


「これからよろしく頼むぞ、アイザック、イリア」


  イクシスの照れる仕草に和やかなムードが流れつつも、彼女はその言葉で場をしっかり引き締める。俺とイリアの答えは勿論。


「ああ!」


「はいっ!」


  大歓迎。その一択だ。こうして新たに、サンメラ王国将軍・イクシスが俺達の仲間になった。……とはいえ、彼女にはまだ俺の力を認めてもらえていないが。


  しかしながら、イクシスの加入によって大幅な戦力アップが見込める。魔王討伐に向けて大きな前進と言えるだろう。


  俺達は早速、イクシスと合流した旨をホルス様に報告するべく、彼女と共に休憩室を後にする。明日からは、イクシスもまじえた旅が始まるのだ。期待しかない。


 *


「そうですか、一戦交えましたか……それもまた一つの交流の形」


「武人同士、相手のことを深く知るにはやはり手合わせなのですね」


  俺達は事の顛末をホルス様に伝える。ホルス様は寛大な言葉でそれを聞き入れてくれた。するとイクシスは、彼女の御前で跪ずきながら次のように述べる。


「この度は、魔王討伐という重大な任を賜り、誠に光栄でございます」


「ホルス様のご期待に添えられるよう、全力を尽くして参ります」


  ホルス様に対する忠誠心に満ちた彼女の言葉の数々。一語一句、その全てに彼女への敬愛の念が詰まっているのが聞いてとれる。目を瞑り、凛とした表情はホルス様には見せず、ただひたすら床に顔を向けたまま辞を低くして振る舞っている。


  俺達も彼女に倣い、跪ずいて、この度の計らいについて改めて礼を述べた。イクシスを俺達の仲間として託してくれたホルス様は、俺達にとって恩人だ。


「……皆さん、顔をおあげになってください」


  ホルス様の許しを得て、俺とイリア、そして初めてイクシスは顔をホルス様の方へと向ける。


「イクシス将軍、貴女はアイザック殿の仲間として尽力するように」


「はっ!」


「そしてアイザック殿、並びに、イリア殿」


  ホルス様に呼ばれた俺達は、呼応した後、息を飲んで彼女の言葉に耳を傾けた。


「イクシス将軍は、良く言えば誇り高く、悪く言えば傲慢な所があります」


「それでも、この国が誇る最高の魔導士です。……どうか、お役に立ててください」


  ……俺達が敢えて役に立てようとするまでもなく、彼女は恐らく勝手に大活躍してくれることだろう。イクシスは俺の指図には耳を貸さないだろうが、協力は惜しまない所存ではいるようだからな。


  良く言えば誇り高く、悪く言えば傲慢。全然結構だ。イクシスは態度と実力が釣り合っている。気を悪くすることは一切ない。


  俺の、イクシスを歓迎する心は已然として変わっていない。


「イクシス将軍は、我々にとって大きな戦力であります」


「魔王を討伐するまで、絶対に手放しません」


「……安心しました。貴方が仲間を大切にしてくれるお方で」


  ホルス様からお褒めの言葉を預かり、その後も少しだけ話が続いた。そして……。


「では明日以降、準備ができ次第出発してください」


「その際、私への報告は必要ありません」


「承知しました」


  ホルス様のまとめの一言を了承し、俺達は床に着いていた足を立ち上がらせて、改めて別れの挨拶を述べた後、王室を後にした。ホルス様の俺たちを見送る目は已然として優しく、暖かかった。だが、なぜだろう。


「……ふふふっ」


 ……この時、ほんの少しだけ、俺は背筋に違和感を感じた。

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