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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第四章 「星々が如く煌めきの少女」
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「力及ばず」

「いけない……!」


「≪精霊よ 彼の者に癒しの恵みを≫!」


  すると次の瞬間、イリアが俺に回復の呪文を唱えてきた。俺はこの時彼女を止めようとしたが……その意思とは裏腹に、俺は彼女を止めることはできなかった。


  本能が邪魔をした。彼女の回復魔法を欲する自分自身の本能が、俺の意地をかき消した。腕から吹き上がる鮮血を見るともはや剣さえ持っていられなくなる。


  剣を手放し、ガクッと跪ずいて俺は戦闘を放棄した。心配したイリアが駆け寄ってくる。


「む……?」


  イリアが水を差したのを察したイクシス将軍は、後退して俺との距離をとった。


「かっ……はぁ……はぁ……」


  イリアの回復魔法が俺の腕に染み渡っていく。痛みはあっという間に引き、噴出していた血も次の瞬間には止まった。流石に破けた皮膚まではすぐには元通りにならないが、彼女の魔法にかかれば数日で治るだろう。


  だが、体力が回復していく代わりに俺は自らの不甲斐なさに憤りを感じている。イリアの回復魔法なしでは満足に剣を振るうことさえままならないなんて、と。これではイクシス将軍に認めて貰うなど夢のまた夢。


「申し訳ありませんアイザック様!でも……!」


「良いんだイリア。ありがとう……恩に着る」


  俺に禁じられていたのにも関わらず回復魔法を唱えてしまったイリアは俺に謝ったが、寧ろ謝らなければならないのはこちらの方だろう。結局俺は、イリアの力を借りてしまったのだから。だから俺はイリアに礼を述べた。そして次に、このようなことになってしまったことに対してイクシス将軍にら詫びなければならない。


  「……すまない、イクシス将軍」


「俺はこの通り、イリアの補助なしでは剣を振るっている時間に限界がある」


  聖剣の猛威は気まぐれのように緩急をつけてくる。時としてこのように俺を本当に殺しかねない威力の炎を吹き上がらせてくるから油断なんてできたものではない。以前、夢の中でエリス様は俺に"聖剣が俺を生かす"と言っていたが、やはりそれは俺の見ていた空虚な幻想なのだ。


  現実として俺は、自らの得物にさえその力を認められていない。こんな俺がイクシス将軍を従えるなんて何年早いことだろうか。身の程知らずにも程がある。


  案の定イクシス将軍は冷ややかな目線を送っており、床に這いつくばる俺をじっと見下ろしている。俺は、自らの無力さを嘆き、恥じ、詫びることしかできなかった。


「失望したぞ。まさかこの程度だったとはな」


  言い返す言葉も見当たらない。いくら探しても見つからない。そこにあるのはただ一つの敗北という二文字。


  俺は負けてしまった。イクシス将軍は勿論、自分が使いこなすべき剣にも。


 *


  場所は変わって、今俺達は地下一階にある休憩室に来ている。広いとは言い難い空間で、一つの長方形のテーブルを囲って俺達は体を休めながら反省会じみた会話を行っていた。


  テーブルの上に置いてある淹れたてのコーヒーをイクシス将軍は啜る。俺はそんな彼女にここに至るまでの経緯を一通り話していた。ホルス様に伝えた話と内容は同じである。エリス様が戦死してしまったことや、それに伴って俺がこの聖剣を受け継いだこと。そして、その聖剣は魔族の血を引く俺に牙をむいてくること。


  イクシス将軍はコーヒーのカップをコトッと置く。そして色々と合点がいったのか数回頷いて、次にこう言った。


「なるほどな。道理で様子がおかしいと思った」


「だが、どんな理由であれお前は私との勝負を放棄した。私が従うには足りない男だ」


「仲間にはなるが、私はお前を認めるまでは独断で行動させて貰う」


「……分かった」


  仕方のないことだ。事実として俺は彼女ほどの実力者にとやかく指図できるだけの力量を持ち合わせていないのだから。寧ろ次の機会をくれている分、寧ろリーダーシップは彼女の方にあるだろう。流石、イリアが憧れを抱くだけのことはある。歳不相当に立派な少女だ。


  だが、それは置いておくとして俺には一つ気になることがあった。あの斧のことだ。彼女が戦闘に使っていた、オーブと呼ばれる武装が変形して形を成した星の模様の巨大な斧。あの斧は一体何を素材として出来ているのか。


「……イクシス将軍」


「イクシスで良い」


「……イクシス」


  俺はイクシス将軍……いや、イクシスに問う。あの武器の主な素材を。


「あのオーブという武器は、具体的に何から出来ているんだ?」


「変幻自在に形を変えたり、振った時に風の抵抗が無かったり……分からないことが多すぎる」


  オーブは謎に満ちた武装だ。特に不思議だったのはあの物理法則を覆しているかのような挙動である。風の抵抗を殆ど受けていない割には鉛玉が落ちたかのような衝撃を叩き出してきて、最初あの斧の一撃を受けた時はかなり動揺した。


  鉄でもなければ木でもない。あんな動きができる物質は今までで見たことがない。分かっているのは、あの武器の刀身の表面が夜空に浮かぶ星々のような模様をしていたということだけ。俺はあんなに複雑な色をした鉱石は知らない。


「……良いだろう。教えてやる」


「あの武器……オーブには、最近発見された"デスタメタル"という鉱石が使われている」


「――が、そこから派生して創造されたあの斧には、自然や鉱石由来の素材は一切使われていない」


  オーブには新種の鉱石が使われているが、斧にはそういった素材が使われていない?どういうことだ?あの斧は、オーブの一部ではないのか?


「あの斧は、オーブの持つ魔力が顕現したモノだ」


「いわばアレは、魔力の塊なんだよ」

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