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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第三章 「砂漠に潜みし煙の悪魔」
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「破られた沈黙」

 以前までアレックとグラファは、鎖という名の黒い煙によって繋がれていた。が、今はそれが消えている。これが意味するのは、奴の言う鎖が外された……ということだろうか。


 アレックも正気に戻っているようなので、そうと見て恐らく間違いは無いだろう。イリアは、成功したのだ。アレックを縛っていた忌まわしき呪いの解除に。


「やった……!」


 そう確信した瞬間、イリアは歓喜に心が躍って、手のひらをグッと握り喜びを噛みしめる。


「そうだ……なら、アイザック様の悪夢も同じ要領で元に戻せるかも!」


 アイザックを今苦しめている悪夢も、同じようにルスワールの薬によって治るのではと考えたイリアは、早速試そうとする。が……。


「ウォォォォォッ!!」


「!!」


 そうしようとした直後、グラファの凄烈な叫び声がここまで聞こえてきた。声をあげたということはつまり、奴の沈黙の状態が解けたということ。


「よくも今までコケにしてくれたな小娘がァァッ!!」


 しかも、グラファはかなり憤慨している様子。


「こんな氷の壁、魔法さえ使えるようになれば……ッ!!」


「≪暗黒の焔よ 今ここに凄絶なる爆風を巻き起こせ≫!!」


 沈黙を解かれし煙の魔物は、怒りを魔の力に変えて己を阻みし壁を木っ端微塵に粉砕するべく、詠唱を始めた。回転する魔法陣、そこに蓄積されていく魔のエネルギーが一定の量まで満ちたとき。


 極大暗黒呪文が、紫色の閃光と化して周囲を闇にて焼き払う。燃え盛る煉獄。そして氷の壁はあっという間に溶けて無くなってしまった。


「いけない……!」


 このままだと、グラファは間もなくここまでやって来る。そうなったら、状態異常薬をアイザックに飲ませてくれる程の暇を奴がイリアに与えることは無いだろう。今のグラファには、これまで持っていた余裕といったモノがまるで無い。


 恨めしい者全てを破壊しようとしているのが、あの怒り狂っている姿から容易に想像できる。急いで、アイザックに薬を飲ませなければならない。イリアはすぐさまもう一本の状態異常薬を取り出し、アイザックに飲ませようとした――だが。


「きゃっ……!?」


 その時、イリアが手に持っていた薬は何らかの攻撃によって弾かれてしまった。ふとグラファの方を見やると、グラファがこちらに向かって魔法弾を撃ったのが伺えた。


「その薬か……俺とアレックを結んでいた鎖を断ったのは……!」


「俺の放った呪術を解除できる薬など、この世界には数えるほどしか無いハズなのだがな……どうやら、相当の腕利き薬剤師がお前らのバックに居ると見える」


 グラファは語る。グラファが唱えた呪文によって引き起こされる状態異常は、並大抵の薬や回復呪文では到底解けるものではなく。これを解除できるとすれば、それこそ……。


「……それこそ、魔王様かあるいは、古の時代に勇者の仲間であったとされる"賢者"の類いで無ければ」


「まさか、な」


(……"賢者"?)


 ……グラファは、"賢者"という、イリアにとっては聞き慣れない単語をボソッと口にした後。


「まぁ良い……呪いが解けたところで、お前の運命は変わらない」


「今度こそ闇に葬ってくれる……覚悟しろ!」


 "葬る"と、明確な殺意を宣言し、次の瞬間猛スピードでイリア達のいる所まで距離を狭めてきた。


「私一人でやるしか無いのね……アレックさん!下がっていてください!」


「は、はい!!」


 アレックを安全な場所まで避難させた後、イリアもまた再び臨戦体勢へと入っていく。今度は攻撃をグラファに与えてもアレックに影響を及ぼさないため、遠慮なく戦える。


 *


「……エリス様……俺は……!」


 粉々に砕かれた心の破片が、俺を更に痛め付けていく。終わり無き悪夢に囚われてしまった俺は一人、どこまでも続いているかのような暗闇をさ迷っていた。


 さっきまでは城内の中庭の景色だったのが一転、今度は何もない無限の暗黒空間。しかし、あの声だけはあれから変わらず聞こえてくる。何度も何度も。エリス様の声が。俺を恨み殺さんばかりの、憤怒の声が。


「君のせいで」


「君のせいで私は死んだ」


「君のせいで!!私は!!」


 やめてください、エリス様。俺はもう、耐えられません。罪は償います。俺の命を以てして。だから、もう――


「ふざけるな!!」


 ――!?


「そんなこと、私が本気で思っていると思うのか!?」


「目を覚ませアイザック!」


「君の守るべき者は今……窮地に立たされているんだぞ!!」


 その声は……紛れもない、エリス様の声だ。先程までは俺を心の底から憎んでいた様子だったのに……何故か今はそうではなく、寧ろ逆に俺を激励しているかのように感じられる。一体、どうして……?


「君の心には今、"勇気"が無い」


「敵に立ち向かおうとする"勇気"が」


「だけど、それをアポロは許さない」


「アポロの所有者である君に勇気が無いのなら、アポロは必ず君に勇気の火をつける」


「何がなんでも、それこそ力ずくでね」


 アポロが、俺に勇気の火を……?


「君は今、敵の呪いにかかっているようだが……直に解けるだろう」


「アポロは、二度も所有者を死なす真似はしないだろうからね」


「聖剣の名に賭けて、必ず君を生かすだろうさ」


 聖剣が、俺を生かす……?それってどういう……?

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