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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第三章 「砂漠に潜みし煙の悪魔」
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「少女達の戯れ」


……アイザック達が草むらで夕食を食べていたその頃。


一人湖に向かい、水浴びをしていたイリアはふとあることに気がついた。


ちなみに、イリアが纏っていた神官の制服や下着は、今は湖の傍らに全て綺麗に畳んで置いてある。


「あっ……しまった、シャンプーとか持ってくるの忘れちゃった」


「どうしよう……これじゃ体を洗えないよ」


彼女の美しい水色の髪は、オアシスの澄んだ水によって瑞々しく滴っている。


ハリのある白い肌を伝う透き通った泉の水滴。


艶やかな雰囲気を放って湖に浸かるイリアは既に十分清潔に見えるが、砂漠を歩いて溜まってしまった汚れを全て落とすには水を浴びるだけでは足りない。


そう、石鹸の類いが必要なのだ。


「どうしよう……」


このままでは納得のいかないイリア。


人知れず魅惑の肌を晒し続けながら悩みに悩み抜いた末。


「そうだ!」


彼女は、あたかも電流が走ったかのように唐突に妙案を閃いた。


頭上に豆電球が見えそうな程ピンときた表情を浮かべるイリア。


すると彼女は、突然何やら呪文を唱え始めた。


「"開け、異次元の扉よ"」


「"天才薬剤師・ルスワールちゃんを呼び寄せたまえ"!」


それは、ドラドカでルスワールに教えてもらった、ルスワールを呼び出すための呪文。


異次元の扉を開く呪文を基にして作られた、所謂召喚呪文だ。


イリアが詠唱を終えると、彼女の目の前に異次元への扉となる穴が出現した。


ルスワールのツインテールを彷彿とさせる、淡い赤色の穴である。


そして……。


「お呼びだしありがとうございますー!このアタシ、ルスワールがやって参りました!」


「こんばんはルスワールちゃん!」


「あっ!イリアさんだ!こんばんはー!」


扉から、ドラドカきっての自他共に認める天才薬剤師……赤いツインテールとフリフリワンピースがトレードマークの少女・ルスワールが現れたのだった。



「良かった~、ルスワールちゃんが石鹸も作ってくれてて」


「薬屋として、薬用石鹸の需要は見逃せないからねぇ」


「それに、アタシ自身にも必要なものだし♪」


イリアがルスワールを呼び出した理由、それは石鹸の調達のためだった。


薬屋を営む彼女だったら、もしかしたら石鹸やシャンプーも売っているかもしれない。


そう思ってイリアは、あの時ルスワールに教えてもらった呪文を役立てたというわけだ。


そして今は成り行きで、ルスワールもイリアと一緒に砂漠のオアシスで一緒に水浴びを楽しんでいた。


イリアの制服の横に、ルスワールのワンピースが追加で置かれている。


ツインテールだった彼女の髪は、リボンを外したことによって水浴びの間だけ下ろされている。


髪を下ろした状態のルスワールは、結んだ状態とはまた違った可愛らしさがあり、美少女と呼んで全く差し支えがない。


「……ところで、イリアさんって」


「はい?」


「結構胸デカいんだね!」


「ぶっ!?」


突拍子も無く突然乳房の話をし始めてしまったルスワールに、イリアは動揺のあまり吹き出した。


「る、ルスワールちゃん、あまりそういう話は」


「あ、そっかイリアさん聖職者だからそういうのご法度だもんね。それにしてもデカいねー!」


「言ったそばからまた!もうやめてくださいよぉ!」


ばっと胸を手で隠し、ルスワールからの熱烈な視線を遮ったイリア。


「あうぅ……ごめんなさい、ちょっと言い過ぎちゃった」


「アタシには無いものを持っていたから、つい」


「もー……」


ルスワールは、自分の無い胸を撫で下ろしながら名残惜しそうに謝罪する。


「ルスワールちゃんも、大人になればちゃんと大きくなるから大丈夫ですよ?」


「そうかなぁ~?」


……結局、二人が交わした会話は最後まで胸の大きさのことばかりなのであった。



石鹸の代金をイリアから受け取ったルスワールはその後、再び異次元の扉を作り出して薬屋へと帰っていった。


そして数時間後。


訪れし夜は、荒涼たる砂漠を暗闇に塗り潰していた。


夜の砂漠は昼とは真逆でかなり寒い。


月明かりの下でアイザック達は、寒さに凍えてしまわないよう十分な厚着をしてそれぞれ眠りに就いていた。


「……っ」


アイザックは今、夢を見ている。


それは、今は亡きバレア王女・エリスとの思い出の夢だった……。



……ここは、王宮の中庭か?


そうだ……俺はここで剣の素振りをしていたんだったな。


「アイザック、鍛練の調子はどうだい?」


「エリス様……!」


エリス様が、俺の様子を見にやって来てくださった。


美しき純正の金髪……ああ、なんと懐かしい。


「あまり無理はいけないよ、体に障るからね」


「お気遣い、痛み入ります」


そう……エリス様はこんな風にいつだって優しかった。


いつも"強くなりたい"と焦っていた俺の心に優しく寄り添ってくれた在りし日のエリス様がいま、こうして俺のそばにいてくれている。


俺は、こんな日々が何よりの幸せだった。


あんなことさえ無ければ、今頃も――


「……無駄なのにさ、そんな鍛練したって」


「ッ!!」


……無駄。


エリス様からそう告げられた時、俺が見ていた幻想にヒビが入った。


そうだ。


もうこの世にエリス様は居ないのに、俺は何を見ているんだ。


「君は私を守ってくれなかった」


「だからそんな鍛練、何の意味もない」


そうだ。


何の意味も、ない。


何の意味も……。


「う――」


「うぉぉぉぉぉぁぁぁッ!!」

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