「魔物の根源」
そして俺たちはこの領域に満を持して足を踏み入れ、玉座のゴライアス様のもとへと向かった。
「ここもここで、無駄に金かけてるよなぁ~」
しかしエリス様は、これ程の王室を目の当たりにしてもその一言で一蹴してしまう。
「……」
さすがに今はゴライアス様の御前である故、これに対する返答は差し控えた。無言を選択した俺を見てエリス様は若干ムッとしてしまったが、仕方のないことである。
歩くこと数十秒、俺たちはついにゴライアス様の眼下までたどり着いた。
ゴライアス様は、立派な髭をたくわえた老練の人格者。最高級の毛皮で作られた真紅のコートを纏っており、風格全てを≪王≫の唯一無二たる覇気にて染めている。その寛大かつ澄んだ瞳で、俺とエリス様を見下ろしている。
「よくぞ参られた、姫騎士エリスと将軍アイザックよ」
と、国王ゴライアス様がここで話を切り出し、まずは俺たちを迎えてくださった。俺たちは呼応し、膝をついて顔を下げる。面をあげよ、というゴライアス様のお言葉で再び立ち上がった。
さて……エリス様の肩書きが≪我が娘≫ではなく≪姫騎士≫であることを考えると、今回は戦事に関わるご用件でお呼び出しなされたのだろう。そのことを察した俺とエリス様は表情を引き締めて、ゴライアス様のお言葉に静かに耳を傾ける。
「さて、今回私が貴殿らを呼び出したのは他でもない……」
ゴライアス様もまた真剣な表情……しかしどこか晴れ晴れとした雰囲気もあった。
「最近、異常なまでの凶暴化を続けている≪魔物≫共……」
「……その住処が、かねてより派遣していた我が軍の捜索隊の活躍により判明したのだ!」
――≪魔物≫。ゴライアス様の口から放たれたその言葉は、この世界に蔓延る異形の生命体のことを指している。魔物は他の動物に非常に攻撃的である性質があり、その目に映ったもの全てを、捕食の目的でなく単なる殺戮の為に殺そうとする。
簡単に言ってしまえば害獣なのだが、イノシシのような一般的なそれとは凶暴性も生命力も段違いに違う。非常に厄介な存在であり、俺も将軍として隊を編成しては何度も討伐に出向いてきた。
だが、連中は斬っても斬っても一定時間ごとに無限に湧いて出てくる。正直言ってキリがない、と頭を悩ませていたところだったのだが……。
「奴らの住処が……ならば!」
そう。魔物共の居所さえ分かれば、後は根源を叩くのみ。見事に根元を絶つことができれば、もう魔物の毒牙に脅かされることはないだろう。
これは朗報といえる。とすれば、今回ゴライアス様が俺たちを呼んでくださったのは――。
「うむ」
「暴かれた魔物の住処に進撃し、魔物の徹底的な殲滅をする……」
「……このきわめて重要かつ危険な任務を、貴殿らの隊に任せたい」
――やはり。
魔物共の断絶……それを、俺たちの剣に委ねるためだった。




