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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第三章 「砂漠に潜みし煙の悪魔」
29/141

「放浪者との出逢い」

 *


「ふう、とりあえず落ち着いたな」


「ですね」


「ブルルッ」


 ひとまず巨大な岩陰に身を潜め、一時の休息に入った俺達。肩の力を抜き、水を飲んで心拍を安定させる。この陰から一歩でも出ようものなら地獄だが、陰の範囲内であれば好きなだけくつろげる。


 とは言え早いところ進まなければ備蓄の方が先に尽きてしまうので、あまりゆっくりしすぎるというのも良くない。休憩も良いところで切り上げ、いつかは出発しなければな。


「ふぅ……」


 ふと俺は、何となしに例の魔石を取り出して握ってみる。ふむ、相変わらず妙に心地の良い感覚だ。この石は、握っているだけで俺に活力と癒しを与えてくれる。


 が、一方でイリアが持っても特に何ともならなかったので、この石は恐らく魔族にのみ効果を発するモノなのだろう。まあ、邪悪な物質ということでも無さそうなのでこうしてお世話になっているわけなのだが。


「……さて、そろそろ出発――」


 と、俺が頃合いを見計らい魔石をしまって岩陰から出るよう皆に促そうとした……その時だった。


「――!」


「あれは……人か!?」


 *


 なんということだ……砂漠で遭難している人を発見した。かなり弱りながらヨタヨタと辺りを歩いていたため、とりあえず急いでこの岩陰まで運んできたが、酷く衰弱している。


 性別は男、体はかなり痩せ細っているが、身長が高い。失礼ながら髪の毛は若干ハゲ散らかしており、不健康そうな表情を浮かべながら俺達があげた水を精一杯飲んでいる。


「ぶはっ……ああ、あ、ありがとうございました」


「お陰で命拾いしました……私の名前は"アレック"。貴方達の名前は?」


 アレックと名乗ったこの人は、次に俺達の名を尋ねてきた。


「俺は"アイザック"だ」


「私は"イリア"と申します!よろしくお願い致しますねっ」


 俺とイリアはそれぞれ名乗り、彼に"よろしく"と返す。


「そうですか、アイザックさん……に、イリアさんですね」


「貴殿方は私の命の恩人です」


 俺の名を口にした時だけ、アレックさんは妙に嬉しそうにしていた。……自意識過剰だろうか。まあ、そんなことはどうでも良い。それよりも優先すべきことがある。


「アレックさん、良ければ俺達に着いてきてください」


「俺達は今サンメラという国に向かっている最中ですから、俺達と一緒に来れば貴方も助かるかもしれません」


 一国を代表する誇り高き将軍として、今にも死んでしまいそうな遭難者を見捨てるわけにはいかない。俺はアレックさんに俺達との同行を提案し、彼の救助を試みた。


「おお……それは有難い!是非ともお供させてください」


 アレックさんは、まあ勿論と言うべきか、俺の提案を躊躇うことなく快諾。俺達と一緒に行くことに決めたのだった。


「アイザック様、アレックさんを連れていくのは良いんですけれど、彼が乗る馬がいませんよ?」


「アレックさんには俺の後ろに乗って貰う。行けるな?ジョー」


「ヒヒン!」


 "任せろ!"とばかりにジョーが嘶く。流石、バレアの名に恥じぬ名馬中の名馬・ジョーだ。二人乗りさせることぐらい、造作もないらしい。全く頼もしい限りだ。


「よし、では日が暮れるまでは出来る限り進行するとしよう」


「出発だ!」


 *


 晴れの砂漠を、馬と徒歩を交互に用いながら進むこと数時間。夕刻が迫りつつある中、ようやくオアシスを見つけた俺達はそこで宿をとることにした。見渡す限り砂だらけの地に、ポツンと存在している緑地帯。湖を中心に辺りに草木が生い茂っており、木の陰で太陽の光を遮っている箇所もいくつかあるようだ。


 日が落ちる前に良い休息のポイントを見つけられて良かった。勿論、夜になれば砂地でも寝ることは可能なのだが……それだと如何せん朝が悲惨である。後それに、水浴びして体を洗うことが出来るのもまたオアシスの利点の一つだろう。


「私は向こうで夕御飯を作ってきますので、アイザック様はお先に水浴びをどうぞ!」


「いや、俺は聖剣を研いでから水浴びするから、イリアの方が早ければイリアから入ってくれ」


「え、大丈夫なんですか!?そんなことしてまた燃えたりしたら大変ですよ!」


「出来る限り手で持たないようにすれば問題ない、案ずるな」


「とは言っても……うーん、なら任せますね」


「ああ」


 剣士たる者、己が愛用する剣の手入れは毎日欠かさず徹底しなければならない。そして、絶対にその作業を怠ってはならない。それは、俺の騎士としてのポリシーの一つでもある。


 自らの身を清める前に、まずは共に戦ってくれたこのアポロの鉄を清めてやらねば、な。

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