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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第二章 「聖剣を振るう魔族の旅路」
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「死闘の果て」

「ッ!?じゅ、呪術が……!?」


 激しい怒りによって目覚めた今のウイング・ドラゴンは、イリアの呪術を以てしても御することはできない。


「グォォォォォッ!!」


 ドラゴンの拳は彗星の如く降りかかる。憤怒に任せた出鱈目な一撃。


「う――」


「うわぁぁぁぁぁぁッ!!?」


 直撃。瞬間、凄絶なる衝撃が俺の体を襲った。辺りに巻き起こる衝撃波、一陣の風。この地点で骨が数本イカれたような音がしたが、身体の崩落はこれだけでは終わらない。


 殴られた反動によって俺は、直線を描いて馬車よりも速い速度で吹っ飛ばされ。その先にあった壁に激突。再び凄まじい衝撃が襲い、俺の骨はまた折れた。


「がはっ……!?」


 木っ端微塵になった骨格、吹き上がる深紅の鮮血。壁に打ち付けられた後、そのままバタリと地面に落ちた俺。満身創痍のこの体では、立ち上がることすらままならず。


「アイザック様!今助けに行きます!」


 イリアの救助を待たねばもう、闘うことは不可能。朦朧とする意識の中、俺はふとあの瞬間のことを思い出していた。


(あの時、奴を仕留め損なっていなければ……)


 ……それは、後悔に近い回想。


(やはり魔族であるこの俺が聖剣を手にするなんて、間違っていたのだろうか……)


 もしあの時、手にしていた武器が聖剣ではなく、その辺に売っている普通に上等な剣だったら。剣撃の軌道はブレることなく、ドラゴンの首をそのまま持っていったことだろう。


 確かに聖剣の攻撃力は、他の剣とは比較にならないほど強力無比だ。だが、あのような決定的な場面で足を引っ張るようなら正直、使いこなしたとは到底言い難い。


 くそ……これじゃ単なる格好つけじゃないか。何が宿命だ。満足にこの剣を操ることもできない癖に。


 ……このドラゴンを倒さねば。


「……ッ!!」


「うぉぉぉぉッ!!」


「アイザック様……!?」


 ……その時だった。俺の身体は、いつの間にか立ち上がっていた。イリアの回復魔法をまだ受けていないのにだ。


「……はぁ……はぁ……ッ!」


 骨も肉もボロボロで、もうとっくに動けるような体では無いハズなのに。なぜ俺は今、動ける?そう自問すると、何となく沸き上がってきた答えがあった。


 ――剣だ。聖剣が、俺に人智を越えた力によって活力を与えている気がする。


 "ドラゴンを倒さねば"。俺がそう思ったその時に。この剣は俺のその意志に反応したのだろうか。聖剣は、俺の"勇気"の力を後押ししているように感じられる。魔族であるこの俺にも、分け隔てなく。


「……ふぅ……」


 ……色々考えてみたが、結局この沸き上がる力の謎を解明する手立ては現状としてない。ならば今は、この力を存分に利用するべきだろう。


「行くぞォォォッ!」


 イリアの回復を待たず俺は、灼炎盛りし聖剣を掲げて進撃を始めた。足踏みの度、洞窟内に音が響く。どんどん加速していく足音。やがて俺が跳び立った時、その音は俺の雄叫びへと変わっていった。


「ハァァァァァァッ!!」


 今度は、俺の腕に一点の揺らぎもない。淀みなき剣さばきで、真っ直ぐドラゴンの方へと向かっていく。聖なる封魔の炎を宿して。己の腕を焦がしながら。


 これで……終わりだッ!!


「グ――」


「グォォォォォッ!!?」


 竜の肉が裂け、その傷口に爆炎が注ぎ込まれる。血をも炭にする程の高温。竜をどんどん侵食していくその炎は、やがて爆弾と化し。


 ――炸裂。


「グゴォォォオアアアアアッ!?」


 盛大な爆音を轟かせ、焦熱と共に灰塵へと帰していった。一頻り炎が吹き上がった後、そこに残っていたのは灰色の粉となった竜の成れの果てと。


「……ぐっ」


 力を使い果たし、倒れこんでしまった……自分。


「――!!」


 イリアが急いで駆けつけてくるのが分かる。


「……ううっ」


 彼女の回復の魔法を受けて、俺はようやく目を覚ますことができた。


「アイザック様……なんであんな無茶を……!」


 ……無茶、か。イリアは心配のあまりか、もう今にも泣きそうな瞳で俺に語りかけてきた。


「……すまない」


「でもなイリア、聞いてくれ」


 そんなイリアに俺は、あの瞬間に感じ取ったことをそのまま、ありのまま率直に伝えた。


「あの時……あの瞬間だけは」


「聖剣アポロが……俺の味方をしてくれた気がしたんだ」


 ……勿論そんなの、俺の妄想なのかもしれない。だが、そうとでも考えなければ説明がつかないのだ。あの時、物理的に動かないハズだった俺の体を突き動かした不思議な力……。


 あの時俺は、沸き上がる感情だけを原動力にして動いている気分だった。そしてその感覚を確かな力へと変えてくれたのが……この聖剣だったのではないのだろうか。俺は少なくともそう考える。


「……そう、ですか」


 イリアは、まだどこか納得のいかない様子ではあったものの、一先ずのところ頷いてくれた。


「そういえば、財宝がまだでしたね」


「更に奥に進んでみましょう」


 そうだった。あまりに死闘だったため忘れかけていたが、この洞窟の中に隠されているといわれる財宝もこの手で回収しなければならない。まあ、あくまで噂なので、無ければ無いでそれはそれで仕方がないことなのだが……。


「そうだな、行こうか」


 取り合えず、やらない後悔よりはやる後悔。ここまで来ておいて何だが、ダメ元で探してみよう。

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