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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第二章 「聖剣を振るう魔族の旅路」
23/141

「洞窟へ」

 *


 日が暮れ、空は一面真っ黒に覆われた。今日は雲が一つもなく、満天の星々を余すことなく見上げることができる。星と月の煌めきに照らされながら馬を走らせる俺達の行く先に、一つの街が現れた。


 徐々に近づいていくその場所は、実に多くの明かりが灯っている。また、人々の喧騒のような音も聞こえ始めてきた。


「あそこは、この辺りで一番活発な街・"ドラドカ"ですね」


「今晩はあそこで宿を取るか」


 日没の直後にちょうど良い宿を見つけた。それにあの人通りの多さなら、色々な品や情報も手に入りそうだ。俺たちは嬉々として、本日の宿場町……ドラドカへと入っていったのだった。


 *


「本日も夜分遅くまでお疲れ様です」


「一晩泊めてくれ」


「かしこまりました、これが部屋の鍵になります」


「ありがとう」


 金を払い、宿屋の店主から部屋の合鍵を貰い受ける。


「アイザック様!少しだけ外を見て回りませんか!?」


「はしゃぐなイリア……でもまあ、良いだろう」


「やった!」


 イリアは無邪気に喜び、早速宿屋の入り口のドアまで一直線に駆け抜ける。


「早く早く!」と促すイリア。


 俺はやれやれとため息をつきながら、彼女のお供をしに行った。彼女は俺の騎士団の参謀である前に、一人の少女。


 それも年ごろゆえ、こういうお祭りのような雰囲気には心躍るのだろう。とりあえず外に出た俺たちは、手当たり次第に店を見て回ることにした。


 *


「アイザック様~、これも美味しいですよ!」


「……太るぞ」


「ひぇ!?……い、いや、まだこれくらいじゃ……あぁでも」


 太るか太らないかの狭間で動揺するイリア。彼女の両手には今、二つの食べ物が握られている。一つは、まあまあな大きさのポークフランク。もう一つは、結構な重さのイカの串焼き。


 彼女は騎士団きっての大食いであるが半面、太ってしまうという危険性を常に恐れている。なので普段は腹四分目にしているらしいが……果たして今日は耐えきれるのだろうか。まあ、戦闘に差し支えさえしなければ俺にとってはどうでも良いことなのだが……。


 ……そんなことより、屋台の飯を楽しむばかりでもいられない。こんな時でも情報収集は欠かしてはならないのだからな。というわけで、俺は一人悩むイリアを放っといて単身聞き込み調査に臨む。


「すまない、少し聞きたいことがあるのだが……」


 俺は無差別に、道行く人に声をかけていき、ひたすら情報を集めていった。この辺りで腕利きの薬の調合士はいるか?とか。ここ最近、凶悪な魔物が出現したという情報は入ってきているか?とか。珍しい、高値で売れそうな財宝の在処はあるか?とか。


 体力を激しく消耗する長旅には、良質な薬が必需品だし。凶暴な魔物を倒せば、魔王に挑む前に良い経験ができるだろうし。高価な宝を見つければ、それを売って旅の資金にできるし。とにかく聞きたいことは山積みなわけだ。旅を無事生き抜くためには、こういった地道な根回しが必要なのである。


「薬剤師か……街の外れに一軒、高級な薬を扱ってる店があるよ」


「魔物だと?酔狂なことを聞く奴だな……そんなに会いたければ、ここから北に行った先にある洞窟に行ってみたらどうだ?命の保障はしないが」


「ついでに財宝も、その洞窟の奥地にわんさかあるって噂だぜ」


 色々な人に聞いて回り、有力な情報を得ることができた。よし……なら明日は、この街の北にあるという洞窟に向かってみよう。屈強な魔物を倒し、財宝を手にいれそれを売り、大金を引っ提げて町外れの高級薬屋に行く。


 明日のスケジュールはそれで決まりだ。そうと決まれば、今日のところはさっさと体を休め……。


「ああ!美味しそうなドーナッツ……!でもこれを食べたら絶対太る……でもでも、やめられない!」


「あーもう諦められないよぉ~!」


「……イリア」


 ……休めたいところではあったが、どうやらもう少しだけ彼女の食べ歩きに付き合わなければならないらしい。


 *


 翌日。今朝もまた快晴である。冒険をするにはうってつけの天気の良さだ。さて、今日はいよいよ洞窟に乗り込んで魔物を討伐する。目的は戦闘の経験と、多額の売却金を期待できるほどの財宝。


「出発するぞイリア」


「はいっ!」


 俺たちは街を一旦後にし、馬を再び走らせた。颯爽と草原を駆け抜ける馬の、俊敏なる走り。おかげで、北にありし洞窟への道のりはそう遠くはなかったのだった。


 *


 北の洞窟、上層部。洞窟に入り少し経って、入り口から差し込んでいた光が消えてきた頃。俺は松明に火を灯し、辺りを照らしてイリアが同行していることを確認しながら進んでいく。


「キキーッ!」


 道中、獰猛なコウモリがこのように襲ってくることもある。しかしこんな連中にまで聖剣を振るってたら、ハッキリ言って聖剣の無駄遣いだ。こんな奴等には、予めこさえておいた毒塗りの投げナイフで十分である。


「ふんッ!」


「キギャァ!?」


「ギャキィ!?」


 俺はスナップを効かせ、紫色に染まりし刃をコウモリ達に向かって勢いよく投擲した。刃先はそれぞれ容易く奴等の腸を貫き、斬撃と同時に強烈な毒を流し込む。瞬間、コウモリ達はパタッパタッと地面に落ちていった。ピクピクと痙攣しながら、やがて順番に絶命していく。


「お見事です!」


 イリアから褒められたところで、俺たちはコウモリ達の死屍累々を越え先を急ぐ。必要な寄り道とはいえ、そうのんびりともしていられないからな。


 ……そして、真っ暗な洞窟をひたすら進み、深いところへとどんどん潜っていくと、やがて大きな広間に出た。


「……」


 すると何やら、ただならぬ気配を感じる。こちらをじっと見つめている、何者かの目。殺気立った獣のような、荒い吐息……。気づけば俺の右腕は、既に剣の柄へと伸びていた。


「アイザック様、気を付けてください……ここ、何か居ます」


「ああ、分かってる……」

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