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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第一章 「その魔族が聖剣を手にするまで」
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「将軍と姫騎士」

 ……20時間ほど前に遡る。


 この時俺は、自らが仕える王―≪ゴライアス≫様のお呼び出しを受けて、王室へと続く螺旋階段を上っている最中だった。この俺……アイザックは、ゴライアス様が統治せし≪バレア王国≫に所属する騎士で、その階級はトップクラスに位置する将軍である。ゴライアス様にその力を認められていて、後に旅に出るまでは大軍を率いて出陣するという大任を主に引き受けていた。


 だが、バレア王国はあくまでも人間の国。本来俺のような魔族が、まして将軍などというご立派な役職に就けるような所ではない。なぜなら魔族とは、昔は人間にとって忌むべき存在であり、軽蔑の対象だったからだ。将軍どころか、まともな生活すら保障されるかどうかも怪しいほどであった。


 しかし、その人の世の摂理を覆した御方がいる。ひいては、その御方は、この俺を王国が誇る名うての将軍に仕立て上げた張本人だ。そしてその御方は今、俺と肩を並べ、俺と同じ理由でこの螺旋階段をあがっていた。


「いやぁ、相変わらずココんちの階段は無駄に長いねぇ~」


「上る方の身にもなれってのさ……もうっ」


 彼女は、軽い口調で俺に語りかけてくる。


「君もそう思うだろ?アイザック」


 彼女……≪エリス≫様は、この国のただ一人の王女にして、≪姫騎士≫の異名を持つ剣の使い手。王家に代々伝わる伝説の聖剣――≪アポロ≫を振るい、これまで国に仇なす数々の敵を葬ってきた。


 橙のショートヘアで、女性用に細身に設計された白銀の鎧を着こんでおり、そのシルエットはまさに騎士そのもの。またエリス様は、王国を守る武人であると同時に、一国の華たる美貌の持ち主。エリス様がひとたび王国の渡り廊下を歩き去れば、男女問わず誰もが彼女の可憐な歩みに振り向き、見惚れる。


 彼女は幼い頃、同じく幼少期を過ごしていた俺を気まぐれで拾ってくださり、そして俺と主従の関係をお作りになられた。拾われるまで俺は、魔族だという理由で生まれながらに人々から酷い迫害を受けてきたのだが、彼女のもとで武勲を積み上げてからはそれも一切なくなり。今はこうして、こんな俺でも人間の一員としてやっていけてる。


 今の俺があるのは、何よりエリス様のおかげだ。無論、彼女には絶対の忠誠を誓っている。


「確かに……いささか、長すぎますね」


「敵の王室への侵入を遅らせるための設計とは聞いていますが……」


 故に俺は、彼女の他愛のない愚痴にも同調する。


「それで私たちが疲れちゃうんじゃ元も子もないよなぁ」


「今度父上に文句言ってやるっ」


 エリス様は天真爛漫な御方だ。少々お転婆な所もあるが、その明るい立ち振る舞いに励まされる者は多い。勿論、俺もその内の一人だ。


 ……と、エリス様とこうして談笑している内に、どうやら到着したようだ。悠久と錯覚するような長い長い階段の終着点、そこにあったのは一つの大きな扉。王室と直通する重要な扉ということで、扉全体の装飾には惜しげもない量の純金が使用されている。そしてその金は、雄々しく翼をはためかせる巨竜の姿を形成していた。


 竜は人々にとっては脅威的な存在だが、一方で、勇ましさや賢さの象徴として扱われることもある。このように、あらゆる家具や建造物のモチーフになることは珍しくない。俺たちはその竜の扉の前で一旦立ち止まり、一息ついた。


「ようやく上ってこれたねぇ……」


「お疲れ様です。エリス様」


「ま、これから父上と顔を突き合わせるわけだから、その言葉はちょっと早すぎるけどね」


「この扉の向こうで、ゴライアス様がお待ちになられているハズです」


 参りましょう、と俺が促すと、エリス様は渋々といった表情をしつつコクリと頷き、合意する。俺は扉の前に立って、黄金に輝く取っ手をしっかりと掴み、腰に力を入れてゆっくり扉を押し開けた。鈍重な開閉音が城内に響き渡る。瞬間、眼前に現れたのは……きわめて荘厳な一室だった。


 今俺たちが立っている位置から部屋の最奥にある玉座にかけて、高級生地の赤いカーペットが真っ直ぐ敷かれており。その真紅のロードの両脇には、王族の護衛を任されている屈強な一等兵士がズラリと並んでいて、果てしなき壁にはこれ以上なく煌びやかなステンドグラス、空の如く高い天井にはこれ以上なく豪華なシャンデリア。


 まさにそこは王室の中の王室。此処こそが、我が主・ゴライアス様の君臨される場所にして、バレア王国の頂である。

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