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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第一章 「その魔族が聖剣を手にするまで」
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「烈火と化して」

「これで――」


「――終わりだぁぁぁぁぁッ!!」


 最後は、鋭い突きの一撃で決めにかかる。剣を一度後ろに引いて、まずは狙いを定める。俺が照準を定めたのは……既に何度も抉っている奴の腹。あそこなら、刃先が肉によく通ることだろう。


「うぉぉぉぉぁぁぁーーーッ!!」


 枯れた声、なおもあげる叫び。腕いっぱいに力を込め、引いた剣を一気に加速させる。前方へ走らせ、閃光の如く穿刺。グチャッ……血が滴っている奴の腹に、剣が今一度刺し込まれた。


「グォォォッ……!?」


 まだだ。これだけでは奴は死なない。今こそ、この剣の炎を最大限に解放する時。


「はぁ……はぁ……」


 呼吸を入れて、再度力を溜める。剣の炎を引き出すためには、俺自身の闇を剣に憑依させる必要がある。故に、ここからは自分自身の感情との戦い。


 奮い立たせるのだ、激情を。思い出せ。王室を襲われ、数多の兵士を殺された恨みを。そして……この世で最も愛しい者を亡き者にされた悲痛を。その全てを、この剣に乗せるのだ。さずれば、火は灯る。


「……グァァ……!!」


 そのまま奴の内部から、この炎で焼き尽くしてくれる。聖剣の炎は魔を穿つ。敵味方関係なしに、ただひたすらに悪を討つ。


 それは、聖剣の使い手である俺とて例外ではない。俺は魔の血を引いた魔族であり、そして愛する主君を守れなかった愚かな騎士。聖剣が牙を向くには十分な理由を持った人間だ。


 だからこそ俺は、この剣に全てを委ねる。この聖剣アポロが、奴を葬る代償に俺を道連れにしようと言うのなら……大人しく従おう。とにかく、今はただ。


「ファランクスゥーーーーーッ!!」


 眼前の敵を殺すことだけに意識を向ける。炎はついに最高潮へと達した。煉獄が渦巻き、悪しき魔を祓っていく。


「貴様は……俺と共に死にゆく運命ッ!!」


「覚悟するんだなァッ!!」


「お……おのれぇぇぇッ!!」


 屈辱の表情を浮かべるファランクスと、意を決して心中する覚悟を示した俺。一対の魔族は、やがて炎に導かれ天へと還る。


「死んでしまえェェーーッ!!」


 俺は怒り、憎しみ、全ての感情を爆発させ、闇の爆炎を巻き起こした。


「ウォォォァーーーッ!!?」


 そしてファランクスは、ついにその身を炎によって完全に包みこまれる。死にゆく魔族の将軍は、辛苦の悲鳴をあげながら最後まで俺を見つめていた。……だが、何故だろう。


 その時の奴の瞳からは、既に『悔い』が消えていた気がした。……いや、そんなわけないか。奴は自らの油断、傲りによって愚かにも己を滅ぼしたのだ。相当悔しかったハズである。


「…………」


 やがてファランクスは業火に焼き尽くされ、灰となって宙に散る。


「勝った――」


「――――っ」


 そして、俺の意識もここで飛んでしまった。床に倒れこみ、他の兵士達の屍の中に紛れる。俺もついにここまでか。エリス様を死なせてしまった……その失態は今でも心に焼き付いている。


 だが……最期に彼女の仇を討つことができた。天で待っているエリス様は、きっとこれから向かう俺を暖かく出迎えてくださることだろう。……良い人生だった。心からそう思えた瞬間だった。


 ――尤も。


 ここから俺の苦難は、更に深まることとなるのだが……。

これで第一章は終わりです。

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