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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
最終章 「聖剣の魔族」
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「希望」

「皆! 俺のもとに集まってくれ!」


 俺はここで、イリア、イクシス、マルク君……三人の仲間達を全員招集した。三人は、この戦いを目の当たりにしてなのか、やや呆気にとられていた様子であったが、程なくしてすぐに俺の周りに集まってくれた。そして俺は三人に、それぞれ、次のように願う。


「イリア、お前は俺に出来る限り補助呪文をかけてくれ」


「マルク君、可能ならで良いんだが……君は《オーガズ・アルマ》をこの宝剣に付与してみて欲しい。それが補助魔法の一種なら、恐らく出来るハズだ」


「そしてイクシス。お前は俺の合図と同時に、最大出力の《星の魔砲》をモルドに向かってぶちかますんだ」


 時は一刻を争う。そのことは三人も十分に理解してくれていて、俺のこの若干唐突な指令にもすぐに頷いてくれた。


 まずイリアは、俺に可能な限りの補助魔法を俺にかける。バレア王国きっての大神官たる彼女のそれは、いつ受けても格別だ。全身のありとあらゆる力がみなぎっていくのをこれでもかというくらいに肌で感じることができる。


 次にマルク君。彼はそれまで自分の鎖鎌にしか《オーガズ・アルマ》を使ってこなかったが、ここで初めてマルク君は、他者の武器にその呪文を唱えた。すると彼の鎖鎌と同様、俺の宝剣にも鬼神の加護が見事に宿る。赤黒色をした、禍々しくも頼もしい力がこれで味方についた。


 そして最後はイクシス。彼女は俺の指示通り、まずは《星の魔玉》を《星の魔砲》へと変形。構え、砲口をモルドに向け、エネルギー装填を開始した。


 仲間達がそれぞれの役割を果たしてくれたおかげで、俺も至高の一撃が放てそうだ。


「……今だ、撃ってくれ! イクシス!」


「ああ!」


 時は来たれり。星の魔砲に注がれし魔力に輝きが灯る。イクシスの呼応と同時に、その大砲は唸りをあげた。


「いけぇぇぇぇッ!!」


 刹那、砲身の周りで波紋が銀河の如く壮大に広がり、そしてその中心を魔弾が穿つ。満を持して解き放たれたイクシス渾身の一撃。


 しかし対するモルドは、未だに片目の痛みに苦しみながらも、これに対応してみせた。


「ハァ……ハァ……舐めるなッ!」


「たとえこの鎧が砕け散ろうとも、その程度の攻撃……戦慄大剣エンド・オブ・エクスカリバーの前では無力よッ!」


 そう。モルドにはまだあの厄介な大剣がある。全ての技を無力化する無の秘宝――《エンド・オブ・エクスカリバー》が。彼は迫りくる流星に大剣を盾にして対抗する。


 そして衝突した《星の魔砲》の一撃は、やはり大剣の前に敗れ去ってしまった。全ての衝撃と魔力を剣が吸収し、イクシス渾身の一撃を虚無へと葬り去る。


「ハハハァ!! 残念だったなアイザック!」


「君か何をしようとしていたのかは知らんが、君以外の仲間の攻撃は、私の前では無力なんだよッ!」


 ……いや、無力などではない。


 少なくとも《星の魔砲》は、彼に守らざるをえない状況(・・・・・・・・・・)に追いやるだけの脅威的な威力があった。それだけで、十分だ。


 俺は、イクシスの魔砲が放たれた時には既に、モルドに向かって走っていた。そしてその弾丸が大剣の能力によって跡形もなく消えた時、俺の剣は、もう……モルドの懐に飛び込んでいた。


 閃影宝剣アポカリプス・ノクターンそのものは戦慄大剣エンド・オブ・エクスカリバーの無効化能力を受けない。しかし、今宝剣に付与されているイリアの補助魔法とマルク君の《オーガズ・アルマ》は、宝剣が大剣に触れた瞬間、恐らくかき消されてしまうだろう。


 それを避けるため、俺は大剣の守備範囲を絞った(・・・)。星の魔砲を防御したことで、今、大剣は正面に構えられている。モルドはこの体勢からすぐには剣を動かせないハズだ。何故ならモルドは、この一瞬で急激に接敵してきた俺の存在にまだ気づいていないだろうから。まして片目では、俺の姿をそうすぐには捉えることができまい。


 そして今、俺とモルドの距離はこれ以上ないくらい近い。大剣が守っている範囲も、そうでない範囲も、俺には明瞭に見えた。その瞬間、俺は眼で射抜く。宝剣が不可避の一撃となって突き刺さるであろう軌道を。これこそが、勝利に直結する栄光の線。俺はこれを……。



「……うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおッ!!」



 ……貫くッ!!



「……アイザック……ッ!?」


 宝剣が天へ昇る。突き上げられた俺の腕を纏うは、かつて聖剣と魔剣がそれぞれその刀身に宿していた二つの炎――その融合体。モルドが俺の存在にようやく気がついた時には、とっくに“希望”は……掲げられていた。


「……ぬぅぉぉぉぁぁぁぁああッ!!?」



 聖魔(せいま)の鋼が、彼の胸のど真ん中に突き刺さった。瞬間、言語に絶する程に夥しい量の光と闇が、その魔王の全てを覆い尽くす。串刺しにされたモルドは、掲げられた宝剣にそのまま持ち上げられ、もはやもがくことしかできなくなってしまった。


 大剣を持つ彼の右腕は荒波の如く震動し、やがてその得物を堪らず手放してしまうまでに至る。これでついに、モルドは一欠片の対抗策すら失い、完全に“詰み”となった。


「ぐっ……こんな子供騙しに、私がァッ!! ガハッ……ひっかかッ! たッ! だ……とォォッ!?」


 いや、寧ろ俺には、彼がその“子供騙し”に引っかかる確信があった。


 一つ――絶血装甲サングラント・アムールの殻を正面の部分だけでも剥がされたことで、モルドは、俺以外の仲間の攻撃にも剣を盾にして対応せざるをえなかった。露わになった傷だらけの体にこれ以上攻撃が刺さるようなことがあれば、まさに泣きっ面に蜂、または傷口に塩を塗るようなもの。あの時のモルドにとってそれが何より致命的な損傷になることを、俺は看破していた。


 そして、二つ――片目を抉られ視界が狭まっている彼にとって、星の魔砲を“避ける”という選択肢はかなりリスキーであった。まして片目を失って気が動転している最中にイクシスの攻撃を完全に見切るなど、いくらモルドといえど出来るハズがない。故にモルドは、一番の安全策である“防御”という選択を強いられた。無論、それも俺の計算の中に組み込まれていた訳なのだが。


 ……そう。これは幾多もの条件が織り重なって作り上げられた――必然たる最後の好機。“子供騙し”という名は相応しくない。これは――“魔王騙し”の一撃なのだ。

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