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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
最終章 「聖剣の魔族」
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「極光の爆発」

 その咆哮の刹那、理性の糸が完全に千切れたモルデッドは、全身におぞましい赤黒の闘気を纏わせ、大剣を天井に向かって高く突き上げた。そして……。


「君などに、母の気持ちが分かってたまるかァッ!」


 ……限界を知らぬその瞋恚(しんい)に押し流されるまま、攻撃対象たるアイザックと離れたこの距離から絶望の一振りを振り下ろそうとした(・・・・・)。この時のモルデッドの作戦は、斬撃によって空気中に真空波を作り出し、それを弾丸のようにアイザックに向けて射出することだった。だが……。


「……お前が兄さんから離れるこの時を、待っていたぜッ!」


 ……その直前で、魔王の右腕はとある伏兵が放った鎖鎌によって捕縛された。モルデッドの死角たる影から現れ、彼の攻撃を中断させたその伏兵の名は――《マルク・リオン》。


「し……しまったッ!?」


 戦慄大剣エンド・オブエクスカリバーの無力化効果は、その刃に対象が触れなければ発動はしない。《オーガズ・アルマ》の効果を得ているマルクが今鎖鎌を巻き付けているのは、大剣を握るモルデッドの右腕。故に、鎖鎌の強固な拘束は破壊されないままモルデッドの動きを完全に封じている。


 モルデッドは、アイザックに意識を集中し過ぎた。己の生涯は間違っていると彼に言われ、完全にブチ切れていた。沸点を超えた感情は彼を盲目にさせ、影に息を潜めていたマルクの存在すら忘れさせてしまったのだ。


 そして“この二人”も、今一度戦線復帰を果たす。


「今こそ受けるが良い……モルド!」


「私達二人の“融合呪文”で、貴方を倒しますっ!」


 アイザックとモルデッドが一騎打ちをしている間、イクシスとイリアもまた、アイザックの力になる為に策を講じていた。


 そして導き出した答えは“融合呪文”。複数人の魔力を結束させて放つその大技で、身動きがとれないモルデッドを狙い撃ちする作戦である。


 腕を縛られるモルデッドがもがきながらその詠唱の中断を叫んだが、二人は躊躇うことなく、その魔の言葉を明澄なる声色の調和(ハーモニー)によって奏でる。


「《光と氷の精霊よ 今 星雲に昇りてその魔力を解き放て》」


「《銀河の海にて全てを爆滅させる極光の煌めきを現出させよ》……!」



「《オーロラ・エクスプロージョン》ッ!」



 ――イリアが放つ氷の燦然たる輝きに、イクシスの星々による壮烈な魔力が結合することにより、それはあたかも雪国の宙に浮かぶ極光(オーロラ)の如く奇跡を巻き起こす。


 二人の呪文の相性はまさに抜群。二つは空白一つ残すことなく繋がれ、融け合い、この究極の一撃を創造することに見事に成功する。やがてモルデッドの足元を、出現した銀色の巨大な魔法陣が照らした。


 ここでマルクは巻き添えを喰らわないように、鎖鎌をモルデッドに巻き付けたまま置きざりにして一時撤退する。ようやく捕縛が解けたモルデッドだったが、そこに自由はもうない。動き出した魔法陣――という名の運命の歯車――は止まることなく、一瞬にしてモルデッドをその光によって包み込んだ。そして、ついに……。



 ……炸裂!



「……グォォォォァァァァーーッ!!?」



 ――銀色の煌めきはやがて虹の氷光(ひょうこう)と化して、暗闇を星空の如く絶景で満たす。爆裂した極光は絶対零度。広範囲に巻き起こる爆風は、吹雪のように冷たく吹き荒れた。大気は凍てつき、周辺の石床には霜が張る。そのさなかで絶叫をあげた魔王は、全身を半ば氷漬けにされながら苦しみ悶えていた。


 戦慄大剣エンド・オブ・エクスカリバーの無力化効果は攻撃が刃に触れた地点で発動するが、このように一気に範囲攻撃で攻められた場合は、無効化するよりも先に直撃を受けてしまう。イリアとイクシスはこの弱点を見抜き、《オーロラ・エクスプロージョン》を発現させたのだ。


「がはぁっ……バ、バカな……っ!!?」


 腕、腹、脚、口……体のありとあらゆる場所から流血が止まらない。その量の夥しさのあまり、モルデッドの足元のクレーターには“血のため池”が作られており、その光景は見ているだけで吐き気がしてくる程におぞましい。


 モルデッドが俯きながら出血多量状態に陥るなか、マルクは再び彼のもとへ接近し、手放していた鎖鎌を再度掴み取る。《オーガズ・アルマ》によって強度を増強されたマルクの鎖鎌は、あの爆発を受けてなお無傷であった。


 血まみれかつ満身創痍のモルデッドを、鬼神の縛が再び襲う。誰の目から見ても、今のモルデッドには勝ち目の“か”の字すら無いように思えた(・・・・)。体力的に限界が近く、身動きが取れないともなれば、その者にとっては致命的過ぎる窮地――立たされれば敗色は濃厚である。


 だが、アイザックがモルデッドにトドメを刺そうとした……その刹那。


 彼の脳内に、響き渡りし声があった。


『……モルドはまだ、諦めちゃいない』


『今は彼に近づかない方がいいよ。あれは何かをやろうとしている目だ』


 それはなんと、あの別次元でのやり取りで今度こそ天に還ったかと思われた――エリスの声であった。

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