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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
最終章 「聖剣の魔族」
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「復活の魔族」

 ――圧倒的質量を誇る大剣エンド・オブ・エクスカリバーが、何故、重さの無い武装――《オーブ》の攻撃速度を上回ったのか。


 普通に考えれば、それは本来、物理的にあり得ないことだ。どれだけモルデッドの剣の腕前が優れていようとも、《星の魔斧》の駆動力には敵うハズがない。


 ……と言ってもそれは、“とある可能性”を度外視した場合でのみ有効な理論ではあるのだが。


 そう。唯一、この不可解な現象を説明できる“可能性”が存在する。それは、モルデッドがまだモルドとして戦っていた時に、彼があの巨大な戦槌――《ヘルレッド》を、自在にかつ俊敏に扱っていた時点で、実は気付くべきことではあった。


 あの時は単純に、彼の卓越した怪力がなせる業だと思われていた。事実、彼は力がすこぶる強い。だが、決してそれだけでは無かったのだ。モルデッドがアレを軽々と装備できていたのには、もう一つ理由がある。それは……あの武器の“正体”にあった。


「……モルド」


「貴様のその武器……《オーブ》か!?」


 ……変幻自在にその形態を変えることのできる、最新鋭の武装――《オーブ》。


「やれやれ。ようやく気づいたか」


「そう……私がこよなく愛用しているこの武器の、魔玉としての名前は……《戦慄魔玉――ウン・ドローレ》」


「この世界にたった一つだけしか存在しない、我が至高の“神器”だ」


 戦槌と大剣に変身できる能力を持つオーブは、モルデッド曰く、唯一無二の存在であるらしい。つまり、彼専用の武器という訳だ。


 そして、この二つの形態を比べてみると、大剣の方が戦槌よりも圧倒的に強大な力を有していることは疑いようがない。あれ程呆気なく《星の魔斧》が吹き飛ばされたことなど、今まで無かったハズである。


「戦槌は、敵を試す為にある形態」


「だが大剣は、敵を殺す為にある形態だ」


「この天下無双の剣で、イクシス。君を……屠らせてもらおうっ!」


 モルデッドはその勝利宣言と共に、イクシスに《エンド・オブ・エクスカリバー》の血塗られた閃きをお見舞いする……!


「くっ……!」


 万事休すか。そうイクシスが覚悟を決めた、その時。


「殺らせるかよっ!」


 モルデッドの背後に、突如として、鬼のオーラを己の鎖鎌に宿せし少年――マルクが、モルデッドの背中を狙ってその鎌を投擲した。


 だが。


「無駄だ」


 モルデッドはマルクのその妨害に、隼よりも速く対応する。その巨大な刀身には似合わない速度で、《エンド・オブ・エクスカリバー》は使い手の背後に迫っていた鎖鎌の斬撃に追い付いてみせた。


 そして、丸太のように大きく分厚いその大刀は、恐ろしい鬼気が付与させたこの刃ですらも跳ね返してしまう。


「くっ!?」


 凄まじい衝撃に見舞われたマルクは、モルデッドのガードに身体ごと弾かれる。


 それでも受け身だけは何とか取り、ダメージは殆ど無かったものの……。


 ……更なる想定外の展開が、マルクに戦慄の波動を与える。


「……何!?」


 ……きっかけは、鎖鎌が大剣に触れた瞬間であった。


 鎖鎌にエンチャントされていた鬼神の力――《オーガズ・アルマ》のオーラが、突然……その姿を消してしまったのだ。


「そんな……っ!?」


 失われた呪文効果。途切れた希望の綱。マルクは狼狽するあまり、開いたその口を閉じることもままならなず、精神の震えにただただ苛まれ、立ち尽くす。


 対するモルデッドは、そんなマルクを歪みに歪みきったスマイルで嘲笑うのであった。


「……《エンド・オブ・エクスカリバー》は、全てを終焉においやる“無の神器”」


「その刃に触れたモノが何かしらの力を宿していた場合、その一切を……消し去る!」


 ……それが、《エンド・オブ・エクスカリバー》の恐るべき能力。


 ありとあらゆる付与効果を無に帰す、まさに“無の神器”と呼ばれるに相応しい大いなる力。これこそ、モルデッドが世界を無で満たす為に掌握した唯一無二の武器。


 無念無想こそ至高。無常なる諸行を、一瞬にして等しく消し去る。跡形もなく。


 この、“現在”という名のディストピアを葬り去ることで、モルデッドが目指す“未来”――ユートピアは、誕生する。


 その彼の夢を叶えるのが、この《エンド・オブ・エクスカリバー》。マルクが引き寄せた奇跡でさえ、これの前では文字通り無力なのだ。


「バ……バカ野郎……っ!」


 マルクのその暴言は、モルデッドに向けられたものなのだろうか。いや、もしかしたら彼自身かも知れない。どちらにしても、今、彼はそんな無意味でちっぽけな言葉しか吐けなかった。


 そうするしかなかった。この、圧倒的なまでの絶望感に打ちひしがれ、まともに戦意を絶やさないようにできる方が異常だ。彼からしてみれば寧ろ、ただ項垂れているよりはマシだと褒めてもらいたいぐらいなのである。


「……クソがぁぁぁぁっ!」


 ……兎にも角にも、今は攻めなければ何も始まらない。能力は打ち消されても、再び付与させることは出来る。マルクは再度呪文を詠唱し、鬼の力を復活させた。


「この化物が……っ!」


 そしてイクシスも、魔力の波動を天井に突き刺さっている《星の魔斧》に送り、それを念力で自身の掌に吸い寄せる。今一度彼女の手に戻った斧はしかし、かの戦慄大剣と比べると心許ない気がしてならない。


 だが、打つ手が全くないわけでもないのは二人共悟っている。要はあの大剣のガードさえ潜りくければ、攻撃は通るハズなのだ。


 問題は、それをどうやって可能にするかだが……。


 ……と、二人がモルデッドを取り囲みながら考えていた、その時。


 “新たなる足跡”が……カツ、カツ、と、二つ同時に王室内に反響する。


 イクシスとマルクはその音のした方向に振り向き、モルデッドは正面からその足音の主に直面する。彼らの視線が殺到せし場所には……金髪の青年と、青髪の少女がいた。


「……ここまでよく戦い抜いたな。マルク君、イクシス」


「ここからは……俺達も加わる」


 かつて自らが忠義を尽くしていた姫の為、そして、世界中の人々の尊き日々を守り抜く為、その息を吹き返した、勇者の使命を継ぎし魔族――《アイザック・バレア》。


 そんな彼を支える、氷と光の呪文を極めしバレア王国神官兼将軍補佐――《イリア・リルタクス》。


 復活の魔族は、再び聖剣の刃を魔王に突き立てる……!

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