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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
最終章 「聖剣の魔族」
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「鬼気」

――奪われたくないモノを、意地でも死守する。


そう決心したマルクに、今、生物の叡智が成せる奇跡の御業――“呪文”の力が、授けられる。


「もう、一つだって奪わせやしないッ!」


「こんなちっぽけなガキにだって、大切なモノは確かにここにあるんだッ!」


「それを命に代えても守り抜くことが……」


「……俺がこの世界に生まれた意味なんだァァァァッ!」


自分の存在意義をそう断定した時、マルクの脳裏に突如として“新たなる記憶”が出現する。それは全くの無から生まれた、一つの可能性。


白髪の少年は、その可能性を握り締め、未来を手繰り寄せる。高く飛び上がり、今もイクシスと呪文の鍔迫り合いを行っているモルデッドに、攻撃の狙いを定めた。


そして……紡ぐ!


「――《殺す》」


「《オーガズ・アルマ》……ッ!」


……少年が抱きし感情を、これ以上なくシンプルに表現したその詩は、彼の武器――鎖鎌の周りに魔法陣を展開させた。


赤黒い紋章は、鬼の力を禍々しく放っている。そしてそれは、マルクの鎖鎌に注がれていた。その鉄の刃が、徐々に呪文の魔力を帯びていく……。


「これが……俺の……呪文……!」


……その時、アイザックの弟分が底無しの恍惚感を覚えたのは、彼が自身の頭から引っ張り出したその呪文であった。これはマルクにとって初めての呪文であると同時に、マルクにとっての現地点における“最強”の攻撃手段でもある。


自ら編み出したこの新たな力は、果たして如何なる効果をもたらすのか。マルクは楽しみで仕方がなかった。


そして、その効力がついに明らかとなる……!


「俺の鎖鎌から……あり得ねえまでの力を感じる……!?」


その呪文――《オーガズ・アルマ》。


唱えることによって結実する恩恵は――『術者が手にする武器に、鬼の霊力を宿してその威力を強化する』というもの。


直接的な攻撃手段ではなく、自己強化の類の技である。それも、使用者の肉体ではなく武器の強化である為、呪文を唱えた本人の元々の力量が優れていなければ、これを使いこなすことはできない。


……尤も、そのことについての懸念なら、必要無いだろうが。


「これなら……」



「……殺れる……ッ!」



……孤児だったその少年は、次の瞬間、かの魔王を相手取って、自らの力を誇示する。


今宵、暴れ回るのは――白き魔性の子。


「ウォォォォォォォッ!!」


夜叉が、血塗れの悪魔に急襲を仕掛ける!


「……ほう?」


空中から一気に急降下したマルクは、モルデッドの胸板辺りに狙いを定め、鬼のオーラを纏ったその鎖鎌を存分に振るった。


それは強靭なる凶刃。《オーガズ・アルマ》の加護を受けた武器を手にする時、その戦士は一頭地を抜く。


そしてこの少年――マルク・リオンも、そんな強者共の一員に……なってみせた!


「食らえぇっ!」


「ぐはぁ……っ!?」


上からの接近、からの斬撃。深紅と漆黒が入り交じりしその一閃に、無を求めし魔族は、文字通り断腸の思いを味合わされる。先程まで自分が見下していたハズのちっぽけなガキが、ここまでの力を身に着けるとは、流石の彼も思いも寄らなかったことだろう。


深手を負わされ、大量出血を余儀なくされたモルデッド。彼が体勢を崩したことにより、先程まで行われていた《ブラッディ・グングニル》と《星の魔斧》の鍔迫り合いは中断されたのであった。イクシスの目の前から、あの鮮血の矛が消えてなくなる。


このワンシーンを経て、彼の中に初めて危機感が芽生え始める。だがこの時、それを遥かに凌駕して飛躍的に昂ぶっていたのは……“興奮”であった。


「……ぐはっ! はははっ! 中々君は面白い子だね。マルク」


「咄嗟の感情の高揚によって、全くの“無”からこれ程までに質の高い呪文を生み出すとは……“天才”としか言いようがないっ!」


「君のような子が成長することによって、“英雄の魂”はその片鱗を見せ始める」


「私の狙い通りだっ! 私が君達に“試練”を化すことによって、君達はどんどん“料理”として仕込まれていくっ!」


「香り高く……味わい深く……熟成……されていくんだぁ……っ!」


英雄から搾り取った魂を何よりの好物とするその魔戦士は、“英雄の魂”の味にかけてはとにかくうるさかった。彼にその食材の事を語らせたら、恐らく悠久の時をその談義によって費やすことを強いられるに違いない。


そんな魔王の狂気の拘りに、英雄の素質を持つその少年は底冷えの薄ら寒さを感じて、一歩後ろに下がってしまう。


マルクに鳥肌が立つ中、しかしモルデッドは“自重”というものを知らなかった。


「食わせてくれぇ、マルク……君の魂を! 全部っ! 余すところなくっ!」


彼の食欲に、“しがらみ”は存在しない。ありのままに開放されるその欲望こそが、彼の原動力となりて無限の魔力を与え続ける。


果たしてマルク・リオンは、暴食の魔王を相手にどこまで攻勢を保てるか……!

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