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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第六章 「赤髪の将軍と魔王との邂逅」
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「仲間の怒り」

 刹那、俺の聖剣と彼のレイピアが衝突し、火花が苛烈に飛び散る。聖剣アポロはあくまで魔を滅する宝剣。人間の彼に対してはその効果はあまり発揮されないが……。


 ……魔族を嘲笑った彼には、敢えてこの聖剣で立ち向かって勝利を収めたい。彼も、そして己自身も超える為に。


 ――魔族だろうと何だろうと、主君を愛し守ろうとする心さえあればその魂は美しくあれることを、彼に証明する為に。


 聖剣とレイピアが織り成す交閃が闇夜で神秘の煌めきを見せる。互いに刃を高速で振り抜いているが、その刃は未だ両者の肌にも触れていない。一進一退の攻防が続く。


 しかしその最中、ここで突然ラスロー将軍がバックステップを踏んで俺との距離を取った。そして次の瞬間、彼はこう言った。


「剣の腕は互角のようだな……なら呪文でならどうだッ!」



「――≪黄金の雷よ 愚かな罪人に裁きを与えたまえ≫ッ!」



 剣術は両者とも互角と悟ったラスロー将軍は、ならば呪文の腕ならどうかと、まるで俺を試すかのような口ぶりで俺に呪文の勝負を仕掛けてきた。ラスロー将軍が操る呪文の属性は雷。そこに雨雲がなくとも強烈な電撃を発生させることができる恐るべき攻撃呪文だ。


 呪文を詠唱するラスロー将軍の左の掌に金色の魔法陣が浮かび上がる。その魔法陣は回転し、やがてその速度を極め、電流舞い散る爆雷を呼び寄せた。そして裁きと称され放たれたその一撃は俺のもとへ一直線に駆け抜ける。


 俺はこれに対抗するべく、聖剣を前方に突き出して、呪文の詠唱を始めた。


「≪聖剣の炎よ≫」


「≪我が不浄の魂に抗い――」


「――共鳴し、不朽の輝きとなりて魔を滅せよ≫!!」


 刹那、剣の切っ先に紅蓮の魔法陣が展開され、そこから神聖なる魔滅の業火が猛々しく放射される。


 その猛炎の閃光は、俺に流れる魔の血を糧として、唸る龍の如く目の前の虚空を喰らい尽くしながら迫り来る電光と相見える。瞬間、炎と雷は激突した。


 魔力と魔力の鮮烈なる鍔迫り合い。ここが暗闇の城内であることを忘れさせてくれるくらいに辺りが焔雷によって光り輝いている。やがて二つの魔力は互いに相殺し合って、凄まじい爆風と共に消滅してしまった。


 辺りに吹き荒れる膨大な量の砂煙に俺もラスロー将軍も目を開けていられない。しかし驚いた。まさかあのグラファすら葬ったこの呪文と互角の威力とは……ラスロー将軍は俺の想像を遥かに超えて強い。


 やがて砂煙は消え去った。そして俺の眼前には再びラスロー将軍が現れる。この時俺は確かに疲労感を覚えていたが、対してラスロー将軍はそれ程でもないといった感じであった。


「くく……ははは! その程度でへばるとは、所詮低俗な魔族などそんなものか」


「魔族とはどこまで行っても惨めで哀れな生き物よ」


「生まれながらに不浄の魂をその身に宿し、そのくだらない生涯を人々に嘲笑われながら無気力に、無意味に、無価値に過ごすのだからな」


「だがそれでもなお醜く生に縋り続ける屑には、この私が相応しい末路を用意してやる」


 これ以上無いくらいの陰鬱な侮辱を俺に対しぶつけにぶつけまくるラスロー将軍。どうやら彼は魔族のことが本当に嫌いらしい。魔族のことを語る時、彼はその端正な顔立ちをこれでもかというくらい歪める。本当に醜いのはどちらだと言いたくなる程に。


 やがて彼は両腕を前方に突き出し、掌を広げそこに魔法陣を展開させる。そして詠唱される呪文は虚空に黄金色の稲妻を招来した。降臨した雷電の剣は、その矛先を何の躊躇いもなく俺に向けてしまう。


「ありがたく思えよ……」


「……フハハハハハハハハハハハハッ!」


 ……と、彼のトドメの一撃が炸裂しようとした……その時であった。


「ハ……」



「……な、何ッ!? これは……鎖、だとッ!?」



 振りかざされたラスロー将軍のレイピアを持つ右腕が、いつの間にか鎖によってグルグル巻きにされていた。その鎖を辿って見てみると、そこにいたのは……怒りの表情を浮かべるマルク君だった。


「テメェに兄さんの素晴らしさが分からねえのは結構なことなんだがよ……」


「……さっきからその侮辱聞いてたら殺意湧いたわ。死ねよ、クソ野郎がぁッ……!」


 ……どうやらマルク君は、俺がこっ酷く貶されたことについて心の底から怒ってくれているらしい。マルク君の鎖鎌による束縛がラスロー将軍への怒りによってみるみる内に強まっていく。おかげでラスロー将軍は身動きが全く取れなくなってしまった。


「このクソガキがッ……放せェッ!」


「誰が放すかよッ! ああッ!?」


 マルク君の執念の拘束はラスロー将軍の剣術を完全に封印している。が、しかし……。


「だったらこれでも食らってみるかァッ!」


 彼は、ラスロー将軍の左腕が開いていることを失念していた。ラスロー将軍は呪文詠唱の体勢に入り、魔法陣を展開させる。


「≪黄金の雷よ――」


 ……だが次の瞬間、今度はラスロー将軍の左方から奇襲が入ることとなる。



「――私はアイザックの剣だ」


「故に、アイザックをあそこまで愚弄した貴様を断じて許しておけんッ!」



 マルク君のピンチに彗星の如く駆けつけたのは、なんとイクシスだった。イクシスは星の魔斧を宙から一気にラスロー将軍の左腕へ叩き落とす。するとその魔力の刃は一閃にて煌めいた後、彼の左腕を――



「――ごわぁぁぁぁぁッ!!?」



 ――斬り裂いてしまった。

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