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魔族を蝕む聖剣の光  作者: うさぎボーイ
第六章 「赤髪の将軍と魔王との邂逅」
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「稲妻の将軍」


「ごはぁぁっ!!」


……ザザンガルド城もかなり上層まで登り詰めた。襲来する敵を次々と斬り伏せ、死屍累々――とは言っても全員死んではいないが――の山を築き上げていくこと数分、敵の勢いもようやく無くなったので俺達は一旦一息入れることにした。


「……ふう」


肩をがくりと落とし、力を一気に抜く。深呼吸し、心拍を整える。やがて思考も平静を取り戻してきた。改めて周りの風景を見渡してみると中々壮観だった。気づかない内にこんなに敵を倒していたのか、と、我ながら思わず感心してしまう。


仲間達も今のところは大してへばっていないみたいだし、この調子で行けばこの作戦は成功する確率が高い。まあ、尤もそれはこの先で強敵が一切出てこなければの話だが。


俺はここでふと思い返す。俺がこれまで戦ってきた魔族……ファランクスとグラファ。奴らはどちらも強大過ぎる力を有していた。奴らとの戦いはまさに極限に達した命のやり取りであった。


だが、そんな奴らを束ねていたのが魔王という存在ならば、その強さも当然奴らより上ということになる。つまり何が言いたいかというと、このまますんなり事が順調に運ぶ訳が無いということだ。


魔物を束ねし魔族の王が相手ならば、例え道中が順調だとしてもゆめゆめ油断はしてはならない。


……そういえば、ここは魔王の城なのに魔物が一匹もいないのか……?


「――貴様らが我らがアルハート様の聖域に愚かにも攻め入った反逆者共か」


――この城について疑問を抱えかけたその時、突如として俺の頬を言葉と“電撃”が掠めた。


「何……ッ!?」


新手の兵士だろうか。どこからともなく電流が迸ってきて俺の頬に一文字の薄い切り傷をつける。しかし、じわりと滲み出ているこの血を惜しんでいる暇は今は無い。まずは敵の姿を捕捉しなくては。


俺は勿論のこと、この場にいる俺の仲間全員が辺りを見回し、敵の居場所を探った。すると次の瞬間、マルク君がその場所を突き止める。


「あそこだ!兄さんッ!」


マルク君が指差したその方向に、敵はいた。あの純白の美麗な軍服に身を包んだ緑髪の青年が、先程の雷を起こした張本人か。


彼は、今までの兵士達と比べると一線を画した容姿端麗ぶりであり。その高貴な服装もあいまってか、かなり品格が優れた人物であることが窺える。


もしや彼はこの国の将軍だろうか。彼から湧き出ている気品も、オーラも、そして彼が携えているあの美しきレイピアも……とても普通の兵士のそれとは到底思えない。


「お前は何者だ……!」


俺は彼に問う。その素性を。すると彼は答えた。


「私はザザンガルド王国将軍、≪ラスロー・ゲネビア≫」


「貴様ら反逆者共の首をアルハート様に捧げる為、参上した」


ラスローと名乗った将軍のその碧眼は極めて冷徹なものだった。彼の心の内から俺達を覗いている殺意は、激情というよりは単なる責務のようなものから来ているように思える。


ラスロー将軍の放つ言葉の節々から、彼のアルハート王への忠誠が伝わってくる。彼の主君を守る誓いはそう簡単に崩せるものでは無いだろう。


少なくとも彼は、あのモルドと同じザザンガルド王国の将軍なわけで、モルドと肩を並べているということは、その実力もまたモルドに匹敵するということである。間違いなく彼はこの作戦における最大の障壁の一つだ。


「――協力してやろうか?ラスロー」


……そしてここにもう一人、ザザンガルド王国の将軍が現れる。紅き軍服と眼鏡を装着し、赤髪を戦慄を帯びた風に靡かせる彼は、王国きっての実力者……彼の名は、≪モルド・レアビイルト≫。


後から彼がこちら側に寝返ることは把握しているが、現地点でラスロー将軍にそのことを悟られるわけにはいかないので、ここは初対面の体で話を進める手筈になっている。


「モルド……フン、お前の助けなどいるものか」


「そうか。なら私は好きにやらせてもらおう」


二人のこの刺々しい会話から察するに、二人の仲は相当悪いようだ。何か因縁でもあるのだろうか。


「……それにしても、貴様のその角……貴様はもしや魔族か?」


と、ここでラスロー将軍は突然、俺の頭に生えている魔族の角を確認するや否や、突拍子も無い質問を俺に投げかけてきた。


「……だとしたら?」


俺はその問いに、こんな答えで返してみる。すると彼はその形相を……酷く歪ませ、次の瞬間にはこう言い放った。


「汚らわしい……魔族如きにこのアルハート様の住まわれる崇高な城の床を踏まれたと思うと反吐が出るわッ!」


俺が魔族と分かった直後に、この悪辣極まる言葉の数々。慣れているつもりではあったが、正直言ってやはり気持ちの良いものではない。


俺は微かな怒りをラスロー将軍に覚えつつ、しかしそれでもその滾る激情を表に出すようなことはしなかった。俺はこれでもこの混濁の魂に一握りの誇りを持っている。その誇りを踏みにじられた瞬間だからこそ、その誇りを捨て憤怒に身を任せてはいけないのだ。


本当に怒り狂うのは、仲間の名誉を侵害された時だけで良い。自分のことなど二の次……俺はそういう人間でいたい。だから俺は、怒りを曝け出す代わりにラスローにこう皮肉った。


「俺のことを汚物と呼ぶなら、呼ぶが良い」


「ただし今からお前はその汚物に負けることになる」


「――今の侮辱が己への手向けにならないよう、精々足掻いてみせろ」


――すると、瞬間。


「――ほざくなァ!低俗な魔族風情がァァァァッ!」


今の今まで抑えられていたであろう彼の魔族に対する膨大な憎悪の念が、爆発的な憤激によってついに開放された。そしてラスロー将軍はその怒りの嵐に身を投げ出すが如くの猛突進を見せる。狙いは勿論、俺だ。


「そういえば、俺の名をまだ言っていなかったな」


「俺の名は≪アイザック・バレア≫。 バレア王国の将軍であり、今は亡き姫の剣を継ぎし者だ……ッ!」


俺は迫り来るラスロー将軍に改めて名乗りを上げ、聖剣≪アポロ≫を聖炎と共に引き抜いた。

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